実施例(試作品)のない特許出願依頼と発明コンサルティング
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中小企業や個人の発明者様から特許出願(申請)の依頼を受けるとき、試作や実験をしてなくて、試作品も、実施例(実験結果)も無い場合があります。ジャストアイデアのみで出願を依頼される方もおられます。
もちろん、ジャストアイデアをまとめて記録して証拠とするために、他社との共同開発の会議を始める前にアイデアのみを出願する、というようなケースであれば問題ありません。
他社と共同発明の打ち合わせを始めると、どの部分が元々持っていたアイデアで、どの部分が打ち合わせで出てきたアイデアかわからなくなりますから、それを防止する意味でアイデアのみで出願するのは戦略的にも正しいやり方です。
しかし、そうではなく、本来、完成した発明を出願するべきところをアイデアのみで出願する場合には、いろいろな問題があります。
例えば、頭で考えただけの発明の場合、図面があればまだいいのですが、単なるアイデアで実施例も図面も何もない場合があります。そして、手書きで対面で説明される方もおられます。すると発明が不明確で、どこまでが発明の外延(外側の境界)かわからなくなります。
そういう場合は、弁理士がヒアリングしても、まだ発明が完全に固まってなくて、ディスカッションのようになったりする場合もあります。それ以前に試作もしていないので実際に理論通りに動くかどうかさえ不確かな場合もあります。
また、試作していないので、いろいろな可能性があり、例えば、ここはこうすればいいかも知れませんね、などと発明者の方から言い出すこともあります。この段階でディスカッションしても、実験したらうまく行かなかったらディスカッションが無駄になります。
ですので、そういう場合は、試作品を作って実験で確かめてから再度ご相談下さい、という場合もあります。
なぜなら、実際やってみてうまく行くかどうかわからない場合、話が仮定の上に仮定を積み重ねるような話になってしまって、実験しないとわからないですね、としか言えなくなる場合もあり得ます。
それに加えて、実際に試作してみれば、予想外に難しい部分がわかり、その部分を進歩性の根拠として主張できます。その予想外に難しい部分を解決したのが発明ですから。しかし、実際にやってみなければ、どこが難しいか分かりませんし、予想外の効果や際だって優れた効果もあるかないかもわかりません。
そのような顕著な効果については、実際に実験をしてデータを取って明細書に記載しておく必要があります。または、効果を定性的に書いておいて、定量的な効果を後からデータで示す必要があります。また、効果のある範囲を数値範囲で記載しておく必要もあります。そうしておけば効果のデータの後出しが可能になります。
それでも、ディスカッションを続け、理論的に発明をブラッシュアップしていくと実質的に弁理士が発明を作っているような状態になる場合もあります。
知財部がある企業の場合は、発明者が発明を完成させてから、特許部の担当者のフィルターを通して、特許性、事業性があることを確認してから特許出願を依頼してくるのが普通です。そういう場合は発明は完成しています。
しかし、そうした特許部のような専門部署がなく、専門家もいない場合や、個人発明者によっては発明が完成する前に相談に来ることがよくあります。永久機関の発明などは特にそうした傾向があるように感じます。
発明者本人は、これでできた、ものすごい発明だ、どう売り出して大儲けしてやろう?と本人はすごく興奮して発明を説明してくれる方もおられます。
しかし、実際には、永久機関で、この部分がおそらく無理があって、止まってしまうだろうな、というのが見えてしまうこともあります。
とはいえ、そこをうまく改善できれば発明が完成することもないとは言えません。
そういう場合、私はコーチの資格を持っているので、発明コーチングにより、クライアントの頭の中にあるアイデアを引き出し、発明を完成させるお手伝いをすることができます。
そういう意味では発明コーチングを受けた方がよいと思われるクライアントさんもかなりいるような印象です。これは、発明コーチングに限らず、TRIZとかUSIT、バリューエンジニアリング(VE)等のコンサルティングを受けるのでもよいと思われます。それらも私の事務所では対応可能です。
さらに、私はマーケティングの専門家でもあるので、製品化からマーケティング、販売戦略までもアドバイス可能です。
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とはいえ、ビジネスチャンスをとらえるには、1日も早くアイデア段階で特許出願することが必要なケースもこれからは増えていくと考えられる。そういう意味では弁理士も試作などのない、完全なアイデアのみからでも、十分使える明細書を書けるようにするべきと考えている。私の事務所でも徐々にそうした出願についてノウハウを蓄積できていると思う。