1. TOP
  2. バイオ・テクノロジーが得意な弁理士
  3. 生物多様性条約と特許出願

生物多様性条約と特許出願

生物多様性条約(Convention on Biological Diversity)については、2010年10月の名古屋でほぼ決着が着いたと思われる。

名古屋では名古屋議定書が採択された。正式名称は、生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書(Nagoya protocol on Access to Genetic Resources and the Fair and Equitable Sharing of Benefits Arising from their Utilization to the Convention on Biological Diversity)。

名古屋議定書については、50の批准国等が集まればそれから90日後に発効することになっているが、今のところ、署名は92集まっているものの、批准は5か国に留まっており、発効の見通しは立っていない。

http://www.cbd.int/abs/nagoya-protocol/signatories/

遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS:Access and Benefit Sharing)の問題は、元々は無断で欧米の製薬企業が開発途上国から遺伝資源を持ち出し、医薬品を開発して巨額の利益を得ていたことがわかり途上国がその利益配分を求めたことから始まった。

しかし、途上国側もロイヤリティを50%以上要求するなど、到底企業としては飲めない条件を突き付けており、かなりの対立があったが、企業側もその国に研究所を立てて技術・ノウハウを移転してその国の産業振興を支援するなどして、いい関係の事例も出て来ていた。

そういう意味では企業側が勝手に解決していたようなもので、バイオパイラシー(遺伝資源海賊)行為を行う企業は途上国の反発を受けて研究の存続が難しくなるだろうと思われた。

しかしながら、医薬品であれば10%近いロイヤリティを支払っても何とか成り立つが、酵素産業等では利益率が低いことから、1%でも厳しいのが現状である。

そういう意味で、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS:Access and Benefit Sharing)については、個別に契約で妥当な利益配分を決めるのが筋だと思われる。

途上国側もあまりに厳しい基準を課して先進国の企業がその国に来なくなれば逆に損失になるわけでそのあたりのバランスも微妙で、最強硬国のインドやブラジルに同調する国とそうでない国とに分かれていた。

フィリピンは非常に厳しい基準を設けたため、外国企業がほとんど来なくなったようだ。これではウィンウィンの関係になりお互いが発展するのではなく、お互いlose loseの関係になってしまう。

やはり会社が十分存続できるだけのロイヤリティや技術支援、人材育成等国家戦略的に途上国が満足するような形で先進国企業もやっていくのがよいと思われる。それで満足している事例もある。

それはともかく、特許出願時に国内法で出所表示を求めている国がある。これらの国に出願する場合には、資源の出所を記載する必要がある。記載が必要な国は以下の通り。

中国,フィリピン,デンマーク,ドイツ,ベルギー,スイス,ノルウェー,スウェーデン,イタリア,エジプト,南アフリカ共和国,ブラジルの12 カ国(2010年現在)

 

\ SNSでシェアしよう! /

特許出願依頼(特許申請の依頼)の注目記事を受け取ろう

NO IMAGE

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

特許出願依頼(特許申請の依頼)の人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

ライター紹介 ライター一覧

大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

この人が書いた記事  記事一覧

  • バイオ・ベンチャー・セラノス創業者エリザベス・ホームズに有罪評決

  • 日本製鉄がトヨタ、三井物産、宝山鋼鉄を提訴と新年のご挨拶

  • 発明・アイデア発想法

  • 日本製鉄が無方向性電磁鋼板に関する特許侵害でトヨタ提訴

関連記事

  • iPS細胞で血小板が少ない難病を再現

  • 日本のバイオベンチャー

  • ノバルティス社がグリベック特許出願についてインド最高裁で争い

  • 製薬企業のデータ保護期間と特許 TPP

  • 興和株式会社と日産化学工業株式会社は共同でピタバスタチンカルシウムについての特許権侵害を警告

  • 農林水産省種苗1900種持ち出し禁止イチゴの「あまおう」等