国内優先権主張を伴う特許出願
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最初の出願日から1年以内であれば、その間に得られたデータやアイデアを追加して国内優先権主張出願をすることができます。
その際に、パリ優先権を主張して国際特許出願つまりPCT出願とすることも可能です。また、パリ優先権を主張して直接各国特許庁に出願することも可能です。その場合は、通常はその国の言語に翻訳する必要があります。
国際特許出願をする際には、日本を指定国に含めるかどうか選択することができます。
日本を指定国から除外すれば、先の国内出願が生き残って(取り下げ擬制されないので)、国内出願としてその後の処理がされます。
この場合には、国内優先権主張出願の追加データ等は含まれないので、データを追加する必要があれば、日本も指定国に含めるのが一般的な実務です。追加が無ければ日本を指定国に含めなくてもよいですが、後で書く存続期間の延長効果は得られなくなります。
指定国に日本を含めた場合には、日本に国内移行手続きをする必要があるので、その分費用がかかります。特許庁費用が1万4千円に、特許事務所の手数料がかかります。
事務所手数料は大体10万円~15万円程度が多いと思われます。
ただ、PCTで全指定で日本も含めておけば以下のメリットがあります。
特許の存続期間が最長で1年延びます。これは、日本を指定から外し、別途日本特許庁に国内優先権主張出願しても同じ効果が得られます。
これは国内優先権主張して日本国内出願する場合も同じですが、要は、国内優先権主張出願は新たな出願ですので、存続期間が国内優先権主張出願日(後の出願日)から20年間になるということです。医薬品の場合は最長5年の存続期間延長が認められますが、その場合は最長最初の出願日から26年間特許が存続します。
医薬品の場合は、年間売上げが数百億円~数千億円になることもあるので、1年でも長く独占販売できれば莫大な利益が得られますから、必ず優先権主張出願すると思われます。
国内優先権主張をすることで、先の出願に記載してあった事項については、先の出願日(優先日)を基準として新規性、進歩性が判断されます。
ただ注意が必要なのは、請求項にかかる発明に関係する実施例のデータを追加した場合、その請求項については、後の出願日が基準となり審査される、ということです。
また、請求項に新たな要素を追加した場合にもその部分については、追加した出願の出願日が基準になります。
そういう意味では広い請求項については、後の出願日が基準とされる可能性があるので、出願後であっても1年間はできるだけ学会発表、新聞発表は控える方がよいでしょう。
大学等では学生の修士論文、博士論文の都合で発表せざるを得ない場合もあるかも知れませんが、企業では出願公開されてから学会発表や論文投稿するのが当たり前になっています。
国内優先権主張出願をする場合、1年3ヶ月後に先の出願が取り下げられますから、代理人は、出願人の不利益行為に当たるため、特別委任の委任状の提出が必要です。これは、特許法第41条第1項または実用新案法第8条第1項の規定に基づく優先権の主張またはその取下ができる代理権を得ておけばよいです。具体的には、それを記載した委任状をもらい、出願から3日以内に手続補足書で特許庁に提出します。
この委任状を出さないと、1月位してから補正命令が来るので、それから指定された期間(おそらく60日間)以内に国内優先権主張ができる旨の委任状を提出すればよいです。
これは、国際出願の日本移行の場合も同じで、優先権主張している場合は委任状を提出する必要があります。
また、優先権主張の基礎となった出願については、国際出願の場合、証明願と送付請求が必要でしたが、2017年10月からは米国ではDASに一本化されるようです。この番号は、出願の受領書に記載されているので、それを記載すればよいです。
大平国際特許事務所では、優先権主張して国内、外国への出願も得意です。お問い合わせは以下のフォームからお願いします。