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マルチマルチクレームが禁止 特許請求の範囲の記載要件が変更されました

2022年4月1日の特許出願から、特許請求の範囲(請求項)に、マルチマルチクレームの記載ができなくなりました。

マルチマルチクレームとは、特許庁のHPによると、「他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項(マルチクレーム)を引用する、他の二以上の請求項の記載を択一的に引用する請求項」とのことです。

例えば、以下のようなものです。
複数の請求項を引用している請求項、例えば、

請求項1 化学式○○である医薬
請求項2 前記化学式のうち、Nが○○または○○である請求項1の医薬
請求項3 前記化学式のうち、Xが▲である、請求項1または2の医薬
請求項4 前記化学式のうち、Yが■である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬

ここで、請求項4は、マルチに引用している請求項3を択一的(マルチ)に引用しています。

つまり、複数(マルチ)の請求項に従属したクレームを、複数(マルチ)引用してはいけない、というのが、マルチマルチクレームの禁止規定です。

米国ではこのような実務がずっと行われてきました。ですので、米国の請求項は、1に従属した2、2に従属した3、のように、1つだけ従属させることが多かったです。理論的には、マルチ引用クレームを引用も可能なのですが、代理人に依頼しても、そういうクレームは作らない印象でした。

そのため、マルチマルチクレームを避けるために、請求項の数が増えることもありました。

米国の場合、請求項数20までは定額ですが、20を超える数の請求項には別途費用がかかります。費用の額は大企業やsmall entity、micro entitiyなどによって異なりますが、大企業では、580$の追加になるので結構な負担です。small entityやmicro entityは大した額ではありませんが。

日本の場合は、審査請求料が請求項数によって変わってくるので、クレームツリーをもう1組作ると、審査請求料が高くなってしまうおそれもあります。

しかし、マルチのマルチクレームを認めてしまうと、組み合わせが膨大になる場合があり、審査が複雑になる、という面はあると思われます。それが無くなれば、審査がより早く進むメリットがあるかも知れません。

今回の法改正は、国際調和並びに審査処理負担及び第三者の監視負担の軽減の観点からなされたそうです。そのために、特許請求の範囲の記載形式を規定する特許法第36条第6項第4号に基づき、同号が委任する特許法施行規則第24条の3に新たに以下のとおり第5項が追加されています。

五 他の二以上の請求項の記載を択一的に引用して請求項を記載するときは、引用する請求項は、他の二以上の請求項の記載を択一的に引用してはならない

この規定は、改正以前の特許出願や実用新案出願に基づいて優先権を主張して国内優先権主張出願する場合でも、後の出願の出願日が2022年4月1日以降の場合は適用されるそうです。ですので、マルチマルチクレームを残したい場合は、国内優先権主張出願をしない方がいい場合もあるかも知れません。

 

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大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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