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大発明は、地味な実験の積み重ねから生まれる

発明者や研究者の中には、最初から画期的なテーマに挑戦する人も多いです。若くて自分に自信のある人ほど誰もできなかったことに挑戦したくなると思います。

例えば、私が研究者だった1980年代は、ガンやエイズの研究をする人が多く、そうした分野では、なかなか教授や準教授になれず、ずっと博士研究員(ポストドクトラルフェロー)を続けている人が米国でも何百人といたようです。

最近でいえば、不老長寿、若返り、幹細胞やiPS細胞からの臓器作成、痴呆防止、自然エネルギー、温暖化防止、宇宙開発あたりが人気かも知れません。

しかしながら、研究経験の少ない初心者クラスの学生や町の発明家などがそうした壮大なテーマに取り組んでもどこから研究したらいいかわかりません。指導教授などがいれば、先生のカンで、この論文を読んで追試してみればいい、などとアドバイスをくれる場合もありますが、いい指導教官に恵まれなければ、それも無理です。

どこから手をつけたらいいかわからない場合は、まずは、地道なところから始める必要があります。

例えば、iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥先生は、まずは、細胞初期化をモニターする系を作っていました。その遺伝子が発現すれば初期化しているとわかる遺伝子のプロモーターの下流にGFPかGUSなどのレポーター遺伝子を付けておいて、外部から遺伝子を入れて、そのレポーターが発色や発光すれば初期化されたとわかるシステムです。

これがあれば、どの遺伝子を導入したら初期化するかわかりますから、iPS細胞の研究には協力な武器になります。

つまり、まずは、細胞が初期化したかどうかを測定する道具の作成から始めたわけです。

これは老化防止の研究でも、老化特異的な遺伝子の発現をモニターする測定系を作って老化防止効果のある遺伝子や、化合物をスクリーニングするのに使えると思います。

壮大なテーマに挑むにしても、こうした地道な準備が最後に大きな差となります。

このあたりは、元東北大学長の西澤潤一さんも言っていて、大発見でも最初は小さな(泥臭い)成果から始まる、とのことです。最初から大発見と気づかなかったが、その後大発見であることがわかったということです。

日本でも、ビタミンを発見していたのに、それが大発見であることに気づかず、ノーベル賞を逃した鈴木梅太郎氏の例もあります。鈴木梅太郎は東京帝国大学教授で、勲一等、学士院賞、文化勲章などを受章しましたが、ノーベル賞は受賞できませんでした。これは論文を出すときに翻訳ミスがあったという説もあります。

ビタミンCの発見で、セント ジェルジ アルベルトがノーベル賞を受賞しました。このあたり、日本人は、新しい世界を拓く概念を作るのがあまり得意ではないのかな、という気もします。

これも、世紀の大発見が一見小さな発見に見えた例とも言えるでしょう。

そういう意味で、発明や研究では、小さな発見に見えるものが、実は大発見だったということはかなり多いと思います。

私も植物の遺伝子操作をしていたとき、ある遺伝子を導入した場合に、どうしても植物がきちんと育ちませんでした。そのときは、培養条件が悪いのではないか、培地がよくないのではないか?などと実験技術上の問題だからしかたない、と思って、その遺伝子導入植物(形質転換植物)を作ることを諦めてしまいました。

しかしながら、その後の研究によって、それはRNAiという現象で、RNAが切断されることにより、成長がストップしていたのだとわかりました。これを発見した研究は大発見になり、NatureやCellといった海外の一流の論文誌にも多数の論文が載りました。

つまり、小さな問題に遭遇しただけ、ちょっとした技術状のミス、と思っていたら、実はそれを追求していれば大発見につながっていたのです。

そういう経験をした研究者も多いのではないでしょうか?

ですから、壮大なテーマに挑むにしても、小さな発見が実は大発見、大発明につながる可能性があることも頭に入れたうえで研究開発をすれば、一見うまく行かない研究結果の中にとんでもない大発見のタネが潜んでいることに気づけるかも知れません。

優れた発明者の条件の一つに、熱心に現象を観察する、というのがあります。予想外の実験結果が、単なる操作ミスか、大発見の糸口かは、結果を十分注意深く観察することでわかるのではないかと思います。

壮大な研究開発テーマほど、なかなか進まずに、煮詰まってしまうこともあるかも知れません。しかし、ピンチはチャンス、そういうときほど、うまく行かない現象をしっかり注視していけば、解決の糸口が見つかるかも知れません。それが、大発見、大発明、巨額の利益を生む特許につながるかも知れません。

そういえば、オブジーボでノーベル賞を取った本庶佑先生の最初の発見も、単なるディファレンシャルスクリーニングで見つけた遺伝子でした。それが免疫チェックポイント剤であることがわかり、特許でも巨額の収入を生み出しました。

本庶佑先生は、小野薬品との特許訴訟で、個人に50億円、京大に230億円の寄付をする、と言う条件で和解しました。日本でも、特許で数百億円を得る発明家が出現しうることが証明されました。

こういう発明家が出てくれれば、日本経済も活性化し、人類の悩みも少しづつでも解消していくと思います。発明は、人類の富を増やし、人々を幸せにするものなので、1人でも多くの人が発明をするようになって欲しいと考えています。主婦でも、小学生でも発明できますから。

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ライター紹介 ライター一覧

大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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