日本製鉄がトヨタ、三井物産、宝山鋼鉄を提訴と新年のご挨拶
新年明けましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりありがとうございました。
本年もよろしくお願い申し上げます。
今年も日本から素晴らしい発明がどんどん出て、日本経済の復興につながり、国民の給料も増えてくれることを願っています。
昨年は、日本製鉄がトヨタ、三井物産、宝山鋼鉄を訴えました。これについて、トヨタ社長は、材料メーカーが購入先のメーカーを訴えるのはありえない、宝山鋼鉄から問題無いと聞いている、と話したそうです。
確かに通常購買契約では、特許保証条項があり、他社の特許には抵触していないことを保証する、もし抵触して損害賠償請求されるような事態になれば、材料メーカーが責任を持って対応する、というような条項があるものです。
つまり、今回の場合、トヨタとしては、そうした特許保証付の購買契約を締結しているので、宝山鋼鉄が対応するもの、と解釈しているのかも知れません。法律的には宝山鋼鉄にトヨタが訴えられたことに対する対処義務があると思われます。
そういう意味ではトヨタ社長の言っていることもわかるのですが、法律的には、特許権の侵害は、特許権の実施に及ぶので、製造、使用、譲渡(販売)行為にそれぞれ独立に及びます。
つまり、製造するか、使用するか、販売などをすればそれぞれの行為が全部侵害になります。
宝山鉄鋼は製造したので侵害、トヨタは使用して販売しているので侵害、三井物産は販売しているので侵害にあたります。ですから、日本製鉄が、トヨタ、三井物産、宝山鋼鉄の3社を訴えたとしても法律的には当然のことです。
この場合、宝山鋼鉄が特許保証をしてトヨタに販売したとすれば、宝山鋼鉄が日本製鉄と交渉して解決するのが筋ですが、中国企業にそういう感覚があるかは不明です。
もし、トヨタが日本の訴訟で日本製鉄に負けて損害賠償金を支払った場合、特許保証条項付の購買契約を締結していれば、トヨタは宝山鋼鐵に損害賠償金の支払いを求めることができます。
しかしながら、実際には、中国での訴訟で日本での損害賠償額全額が認められる可能性は低いのではないかと個人的には思います。
中国国内でさえ、他の裁判所で起こった事件はその裁判所の判決とは関係ない、という感じの実務ですから、日本の裁判所の判決は関係ない、と言われるおそれもあります。
逆にみれば、中国の宝山鋼鉄だけに侵害訴訟をしても、中国の裁判所で裁判するとあまり高額の損害賠償金が取れない可能性があるので、日本製鉄が日本企業のトヨタと三井物産を訴えたのは訴訟戦略としては正しいと思います。
他にも昨年は、免役チェックポイント剤(オブジーボ)でノーベル賞を取った本庶佑京大教授が小野薬品から280億円のライセンス料を得た事件がありました。和解となり、本庶教授に50億円、京大に230億円寄付することになりました。
オブジーボは世界で数千億円~1兆円以上売れているので、そのくらい払ってもおかしくないと思います。
日本企業も以前は訴訟をしたら負け、早めに和解で落ち着かせるのがいい戦略と言っていましたが、今はいうべきことはしっかり主張して、裁判所の判断を仰ぐという戦略を取る会社が増えてきたように感じています。
訴訟社会は日本の和をもって尊しとなす、という聖徳太子の教えにそむく面もあるかも知れませんが、言うべきことは言わないと、相手によっては通用しない場合もあると思います。相手が悪意を持って侵害行為をしているのであれば毅然とした態度で筋を通すのが本来の姿だと思います。