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日本製鉄が無方向性電磁鋼板に関する特許侵害でトヨタ提訴

日本製鉄が、その大口顧客であるトヨタを特許侵害で訴えました。

常識的に言って、販売先の顧客を訴える場合、その後買ってくれなくなるリスクがあるので、かなり慎重になります。

多少の特許侵害があっても、全体的に利益があるなら見逃すケースも現実にあります。

しかしながら、今回は、販売元である日本製鉄が、販売先、つまり顧客であるトヨタを訴えたわけですから、よほどの事情があると見るのが普通だと思います。しかも、社長同士のトップ会談もなく、おそらく知財部同士で交渉して交渉が決裂したのでしょう。

日本製鉄の知財部は、特許侵害との立場で、それには十分な理由があると思います。

トヨタの言い分は、材料メーカーである中国鉄鋼メーカーの宝山鋼鉄に特許保証してもらっている、というものですが、これは抗弁にはなりません。宝山製鉄が、特許侵害に該当しているのに、特許侵害はない、と保証するケースもあるからです。

あるいは、中国特許法の解釈では特許侵害ではなくても、日本の特許実務では侵害に該当する、という場合はあり得ます。中国での日本企業の特許訴訟は勝訴になっても十分な賠償金が取れないケースが多いですし。

日本製鉄では、最近でも50件以上も、無方向性電磁鋼板に関する特許を出願しています。この関連特許は1970年代から出願していますが、最近また出願数が激増しています。ということは、日本製鉄が特許に力を入れており、知財戦略で中国に勝つ作戦である可能性が高いです。

だとすれば、今回のトヨタの件でも従来の日本企業の慣習に則って訴訟に持ち込まず、話し合いで和解で解決するのではなく、訴訟で白黒をはっきりさせることにしたのでしょう。

交渉では、買ってもらう立場なので、買い手の方が立場が上ですから。

一般に何かを購入する場合、契約で特許保証を付けるのが普通です。これは、この製品(材料、部品など)は、他社特許を侵害していないことを保証する、というものです。

この条項があれば、もし、特許訴訟で敗訴して賠償金を支払うハメになっても、その賠償金を保証した会社に求償できます。

今回の場合で言えば、トヨタが日本製鉄に200億円の賠償金を支払った場合、中国の宝山製鉄にその賠償金を支払え、という訴訟ができます。

ところが、ここで中国の法制度と日本の法制度が違っていると、日本では日本製鉄の侵害の主張が認められトヨタが賠償金を支払ったとしても、中国でトヨタが宝山製鉄を訴えた場合に、日本で宝山製鉄を訴えるのと同じ判決が出るとは限りません。中国では人権波弁護士が多数投獄されるなど法的正義が勝つとは限らないからです。

そして、トヨタが宝山製鉄を訴えることで、宝山製鉄との関係も悪化する可能性もあります。

これは、全くのウワサですが、中国では、ハニートラップや賄賂が横行しています。トヨタの上層部がハニトラなどで脅迫されて、中国企業に強いことを言えない可能性もないとは言えません。

もし、トヨタが宝山製鉄に求償訴訟をしないとすれば、そのような可能性も疑われるでしょう。

ただ、トヨタの知財部門は非常に優秀で、以前、中村修二さんの青色発光ダイオードでトヨタの子会社が訴えられたとき、動画などを駆使して勝訴していました。さらに、その知財部の方は、その気になれば、青色発光ダイオードの特許を全部潰せる、とまで言っていました。

だとすると、日本製鉄の特許が現状では有効でも、今後無効審判をおこされたり、訴訟の中で無効の抗弁をされ、トヨタ側が勝訴する可能性もないとは言えません。

今回の訴訟は、日本を代表する大企業同士の戦いで、ゴジラ対キングギドラクラスの戦いみたいなすごい戦いだと思います。そういう意味では、お互いの知財部も強力でしょうから、すごい戦いが見られるかも知れません。

 

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ライター紹介 ライター一覧

大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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