手術、治療、診断方法など医療方法特許
人間を手術、治療、診断する方法、いわゆるヒトの医療方法に関する特許は日本では産業上利用できない発明であるとして、特許の対象から外されてきました。最近では、ベンチャー保護等のために、一部の治療方法、用法容量特許などが認められるようになりましたが、原則としては認めない、というのが特許庁のスタンスです。
欧州でも、医療方法は、以前は産業上利用できない発明、ということで特許保護の対象ではありませんでした。その後、産業上利用という文言はなくなりましたが、扱いは特許対象でないことに変わりはありません。
ですから、日本、欧州とも、人間の手術、治療方法などは特許になりません。
ただ、米国では、人間の手術方法、治療方法、診断方法も特許になります。ただし、米国には、医師の免責規定が設けられていますから、医師が特許を侵害する行為をしても、特許権の効力は及ばず、差止や損害賠償はできません。訴えることができるのは、その方法に使用する器具などを販売するベンチャー企業などです。
そういう意味では、米国で医療方法特許を取ったとしても、メリットは限られたものとなります。
もちろん、ベンチャー企業がその治療方法の適したメス等を開発して販売するような場合は、間接侵害で訴えることもできますが。
また、日本と欧州での大きな違いには、動物の扱いがあります。日本では動物の治療方法は認められるのに対し、欧州では動物の医療方法は人と同じ扱いになっていて、動物の治療方法も特許対象にはなっていません。これは欧州特許条約に明確に記載されています。
第 53 条 特許性の例外 欧州特許は,次のものについては,付与されない。
(a) その商業的利用が公の秩序又は善良の風俗に反する虞のある発明。その利用が,一部又 は全部の締約国において法律又は規則によって禁止されているという理由のみでは公の秩序 又は善良の風俗に反しているとはみなされない。
(b) 植物及び動物の品種又は植物又は動物の生産の本質的に生物学的な方法。ただし,この 規定は,微生物学的方法又は微生物学的方法による生産物については,適用しない。
(c) 手術又は治療による人体又は動物の体の処置方法及び人体又は動物の体の診断方法 この規定は,これらの方法の何れかで使用するための生産物,特に物質又は組成物には適用 しない。
(c)に規定されているように、動物の治療方法を特許で保護することは直接にはできないので、その治療方法に使用する器具を特許で守ることになります。
しかしながら、欧州でも、機器の用途発明は認められないので、類似の器具があれば用途が異なっていても特許にはなりません。そういう意味では、欧州で動物の医療方法を保護するのは、かなり智恵を出す必要があります。
大平国際特許事務所では、そうした動物の治療方法をどう守るか、についても智恵を絞っています。特許化は不可能、と諦めずに以下のフォームからお気軽にご相談下さい。何らかの智恵がある可能性もありますから。