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知的財産経営センター 弁理士会の新組織と弁理士の将来

大阪に来てからしばらく遠ざかっていましたが、東京の弁理士会の委員会に久しぶりに参加することにして、先週第1回目の会合に行って来ました。

私が最初に希望したのは、知財コンサルティング委員会、第2志望は、知財活用委員会だったのですが、それらはすでに満員で、知財価値評価の委員会というか、事業部に配属されました。これは今年新たに設立された知財経営センターの一事業部という位置づけになり、従来の価値評価センターなどが合併してできた巨大な組織です。

価値評価の手法自体は、コストアプローチ、インカムアプローチ、ディスカウントキャッシュフロー法など、ある程度確立されている分野ですが、評価項目の検討や、ノウハウの価値評価など、まだまだ検討すべき課題がたくさんあることがわかりました。

弁理士会の会長も挨拶され、弁理士を取り巻く環境はかなり厳しい、というような話をされていました。というのも、昔は弁理士1人あたり年間150件の特許出願件数があったものが、今では、1人あたり30件まで減少しているそうです。ということは当然、収入も減る、というようなことを会長は話していたと思います。

私も弁理士の未来は決して楽観できる状況ではないと思いますし、実際、廃業したり、事務所をたたんで大手事務所に吸収された弁理士事務所の話も聞いたことがあります。

さらに、今後はAIによる翻訳技術が進んで、翻訳料が取りにくくなったり、AI自身が明細書の下書きをしたり、チェックをするようになる可能性も考えられます。最終的に、AIが最先端技術を理解して全く新しい技術の明細書を完全に書けるようになるかには、疑問もあります。が、ある程度定型的な型のある発明の明細書(例えば、医薬化合物の発明など)であればAIでも書けるようになる可能性はあると思われます。

そういうこともあってか、弁理士の志願者数も減り、弁理士試験の受験者数も減少の一途を辿り、合格者数も昨年では350人程度と、多いときから3分の1近くまで減少しています。

最近では、合格する人のほとんどが会社員のようで、そういう人は合格してもそのまま会社にいることが多く、特許事務所に転職する人は少ないようです。事務所にいる技術者で弁理士試験に合格する人は年間100人もいないのではないか?との噂も聞きました。

そのわずか100人足らずの新人弁理士を全国の3000以上ある事務所が奪い合うので、新人弁理士を採用するのも難しくなっているようです。つまり、弁理士業界も人手不足になっています。

加えて、以前はバイオ分野のポストドクトラルフェロー(博士研究員)が大勢いて行くところがなくて困っていたので、優秀な人材を容易に採用できていたのですが、最近では企業の景気も回復してきてポストドク問題も改善に向かっているようで、バイオの優秀な人材も特許事務所は採用しにくくなっているようです。

まぁ、閉塞感があって、どこの事務所も同じように苦しいのであれば仕方ありませんが、閉塞感のある時代でも、廃業する事務所や買収される事務所がある一方で成長している事務所もあるわけです。そういう成長中の事務所にとっては、新規採用が難しくなると、拡大戦略が取りにくい、という面はあります。

近頃の士業の大増員により、一時的には厳しい状況になるでしょうが、一巡すれば、米国の弁護士業界のように、ものすごく高額のところから、格安で案件を受ける、あるいは、廃業して別の仕事をする、というように弁理士も能力(営業力も含む)により淘汰されるのかも知れません。

そして、米国では、交通事故が起これば弁護士が救急車に群がる、というように、少ない案件に弁理士が群がるような状況になったり、自ら事件を起こしたりするパテントマフィアのような弁理士も出てくるかも知れません。

実際、ピコ太郎の商標を出願した元弁理士はそれに近いことをやろうとしています。

そうしたパテント・マフィアやトロールのようなことが起きないように、弁理士業界の健全な発展のために、弁理士も知恵を絞って、業務(市場)を拡大する必要があると思います。

それには、発明者を増やすのも一つの方法でしょう。また、発明者1人あたりの発明数を増やすのも有効でしょう。

大平国際特許事務所では、発明コーチングも承っております。この発明コーチングを受ければ、発明を全くしたことのない人でも発明をして特許を取得できるようになる、というのを目指しています。また、発明が得意な人はさらに発明が加速し、どんどん特許を書けるようになるようになってもらうようにしています。

実際、発明は小学生でもできますから、ちょっとしたコツをつかめば可能です。発明コーチングにご興味のある方は以下からご登録下されば、発明のやり方などを随時配信するメールマガジンに登録できます。

発明コーチング

発明者を増やすもう1つの方法は、弁理士が企業研修をして、発明アイデアの発想法、例えば、TRIZやUSITを教えることではないかと思います。これをやれば、企業の研究開発部員も発明をやりやすくなると思われます。一般の発明家への啓蒙も有効と思われます。

これらの方法により、発明して特許を書く人が増え、発明の質も向上すれば、世の中がより便利になり、より住みやすい世の中になると思われます。また、日本経済の復興にも寄与すると考えられ、発明できる人を増やすことは、日本の将来にとって重要な課題と思われます。

さらに、元発明者で研究者あがりの私としては、弁理士の市場を広げるもう一つの方法は、弁理士自身が発明者と一緒になって発明を生み出すことではないかと思います。これも、発明者の増加や発明の質の向上につながるはずです。

最近では博士号を持つ弁理士も相当数いて、大学の助教、准教授、教授の弁理士もいたり、海外でのポストドクトラルフェローの経験を持つ弁理士もいますから、元発明者で、発明能力を持っている弁理士も相当数存在するはずです。

あるいは、弁理士が自らプログラムの発明をする、というのは、実験設備も不要で、パソコンさえあれば十分可能なので、そういう発明をして自ら事業化し、成功する弁理士が出てくれば弁理士の未来も希望が持てるようになるかも知れません。

弁理士が発明をするということは、特許戦略、特許保護、特許取得の専門家である弁理士が、その法律的な戦略も考慮して発明をするわけですから、非常に強い特許発明ができる可能性があり得ます。ある意味、お父さんが高名な弁護士だったビル・ゲイツのようなビジネスモデルができる可能性もあり得ます。

もっとも、そうなると、弁理士資格は、放射線取扱主任者の資格のようになってしまい、優秀な発明者はみんな弁理士資格を持つような時代が来るかも知れません。それはそれでまた、弁理士業界にとって大きな問題になりそうですが。

また、弁理士がライセンスを支援をすることで、特許の活用を図る、というのも新しいビジネスとして考えられます。以前は特許流通アドバイザーという制度があり、無料でライセンス活動をしてくれていたのですが、民主党の事業仕分けでなくなりましたから、事業機会はあるとも言えます。

海外では実際にこのライセンス請負業をしている特許弁護士事務所もあり、AUTM(全米大学技術移転マネージャーズ)に行くと、法律事務所が成功報酬制ライセンスを展示していたりします。

そういう特許弁護士は、成功報酬制で成約した場合に、ライセンス収入や売却収入の30~50%を取るようです。こうした成功報酬制のライセンス弁護士事務所は、かなりいい特許でないと成功報酬制でライセンス交渉を請け負ってくれないという問題もありますが。

実際、こういう海外のライセンスを成功報酬制で請け負う法律特許事務所を活用して、自社特許を1億円で販売した会社も知っています。その場合は3000万円を仲介事務所に支払ったと聞いています。

弁理士は通常は、10万円~30万円程度の単価の仕事をたくさんやってコツコツ稼ぐので、いつも忙しいですが、1回で3000万円とか入る仕事があればかなり楽になるので、こうした高額の収入が入るビジネスは魅力的です。

高額報酬という意味では、訴訟でも同じで、訴訟代理をすれば、明細書を書いたり、拒絶理由に対応するよりもはるかに効率よく稼げます。クライアントによっては、タイムチャージで1時間3万円以上もらえることもあるので、1日相手の話を聞いてアドバイスするだけで30万円になったりすることもあるようです。

そうした仕事が増えれば、弁理士業界も潤い、優秀な人材も参入しやすくなると思われます。

というわけで、現状、全体的には苦しい弁理士業界ですが、おかげさまでうちの事務所(大平国際特許事務所)は仕事が急増していて嬉しい悲鳴を上げています。そんな状況ですので、現在出願のご依頼をされてもある程度お時間を頂戴する可能性がございます。それでも、ご相談には応じておりますので、何かあれば、お気軽に下記からご相談下さい。

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大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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