外国出願するかどうかの要否判断
この記事は約 4 分で読めます。 3,985 Views
最近は、日本国内だけに出願するのではなく、外国出願もされるクライアント様が増えています。
日本の企業や発明家が世界市場に製品を上梓するのは、非常に素晴らしいことだと思います。日本市場のみですと、今後人口も減り、購買力も減っていくと考えられますから、人口が伸びている国や巨大な市場のある国に外国出願するのは自然の流れでしょう。
それに加えて、日本国内のみの出願ですと、中国、韓国、台湾などはその特許公開公報を読んで、マネすることが自由にできてしまいます。そうなると、製造コストでも負けますし、大きな市場を逃すことになります。
そうならないためにも外国出願(国際特許出願、PCT出願も含む)されることをお勧めします。
と言っても、外国に特許出願する場合、現地語への翻訳に数十万円(長さによっては100万円以上もあり得ます)、現地代理人費用も数万円~20万円程度、日本代理人費用も同じくらいかかりますから、出願するだけで最低でも50万円位は必要です。
さらに、その後の審査請求、拒絶理由対応、登録料納付まで合わせると、100万程度はかかると考えておいた方がよいです。難しい案件ですと1ヵ国で権利化するのに200万円以上かかることもあります。もっとも、簡単な案件ですと、翻訳、出願、拒絶理由対応、登録まで全部で60万円程度で済む場合も現実にありましたが。
ですので、外国出願は通常、1ヵ国100~200万円程度かかると考えておいた方がよいでしょう。
外国出願の要否は、その費用に対してコストパフォーマンスが合うかどうか、が基本になると思われます。これは日本出願するかどうかの判断でも同じことですが。そういう意味では、製品を販売するのであれば、まずコストパフォーマンスは合うので出願するべきとも言えます(もっとも、発売後予想外に売れなくて、商品として大赤字になって、特許も無駄になる、ということも普通にありますが)。
つまり、100~200万円のコストをかけて、どれだけの市場を守れるか、という判断になると思われます。市場を守ることには、輸出のための製造も含まれ、製造国にも出願することが望ましいです。
ですから原則、市場がない国に出願するのはよほど戦略的な理由が無い限りあり得ません。コストパフォーマンスが悪く単なるコストになってしまいます。逆に市場があれば、どんなに小さく、貧しい国であっても出願する場合もあり得ます。
巨大な市場があり、特許制度がうまく機能していて、他者に対する抑制効果が高く、損害賠償も高く取れる国には出願すべきです。そういう意味では、米国は、世界中で一番出願すべき国とも言えます。
逆に市場は巨大でも、特許権があまり意味がない場合もある、インドや中国に出願するかどうかは慎重に考える必要があります。中国では特許権侵害訴訟で日本企業が勝訴できるケースは増えていますが、賠償額は訴訟コストに見合うほどにはもらえず、単に名誉が得られただけ、という人もいました。
ですので、外国出願するかどうか、する場合に、どの国に出願すべきか?については、その製品の性質、各国の市場、法律や規制の有無などを総合的に判断して採算が合うと考えられる国に出願すべきと思います。
ただし、その前に国際特許出願(PCT出願)をしておいて、最初の出願日(優先日)から30ヶ月以内に各国に移行するかどうかを判断する、というやり方をお勧めします。これなら、PCT出願後に試験販売してみて、売れ行きを見てその国に移行手続きするかどうかを判断できますから。
どの国に出願すべきか迷ったらお気軽に下記からご相談下さい。