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進歩性が認められる実験データの取り方と明細書の書き方

審査基準が昨年改訂され、進歩性で効果の参酌がかなり弱い書き方になっているように感じました。

異質な効果や同質であっても際立って優れた効果があれば、進歩性の主張に有効なのは変わらないのですが、どうも、改訂により、構成の容易想到性、つまり、発明の構成を当業者が容易に思いつくかどうかの方がより重視されるような印象を持っています。

実際、最近の審査では、予想外の効果を主張する場合、その効果を発揮することが証明されている範囲でなければ進歩性を認めない、という感じの審査官もいます。

確かに、予想外の効果の無い範囲まで進歩性を認めるのは、厳密に言えばおかしいのですが、昔はそこまで厳しくなかったように思います。単に予想外の効果がある、と主張すれば、実施例に限定されずに特許になっていたことがありました。

中国でも同じようなことを言われることがあり、実施例に記載の範囲までしか進歩性(中国では創造性といいます)を認めない、という審判官もいたりします。

このことから言えることとしては、予想外の効果、あるいは、際立って優れた効果を主張して進歩性を認めさせることができるのは、原則、実施例で効果が証明されている範囲である、と考え、実施例の記載を充実させるとともに、実施形態の中でも効果のある範囲をしっかり段階的に書いておくことでしょう。

後から実験データを出して補正するにしても、実施形態に範囲を書いていなければ新規事項の追加として補正が認められないおそれがありますから。

そして、進歩性の拒絶理由はほとんどの場合に来ると考えられることから、この効果の主張を考慮して実験データを取っておくことが非常に重要になります。

それには実験計画法に従って実験を組むのは当然として、効果が出る範囲の境界(臨界点)とその少し外側までしっかりデータを取っておくことでしょう。

ときどきあるのは、右肩上がりのデータで、上がっている途中までしかデータを取っていない場合です。その場合に顕著な効果を主張すると、上昇途中の範囲までしか権利化できませんから、その後のさらに効果の高い部分が権利範囲から外れます。そうすると、簡単にエスケープできる使えない特許権になってしまいます。

そうならないように、データは必ずピークの両側を取り、片方だけをとらないこと、2次元ならマトリックスでデータを取っておくことです。

研究者は、1つのテーマがうまく行くと、その実験は終わったと思って次のテーマを始める傾向があります。しかし、国内優先権主張出願を使えば、最初の出願から1年以内であればデータを追加して出願できます。それまでに、できるだけ、特許化に必要なデータを揃え、強くて広い特許請求の範囲を取れるように明細書を補強すべきです。

このデータさえあれば、事業を守る強い特許権が取れたのに、と後悔しないように、研究者は特許に必要なデータをきちんと取る必要があります。一方で知財部員もそのような教育をしっかりやるべき、と思います。それが知財部員の一つの役割ではないかと思います。

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ライター紹介 ライター一覧

大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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