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面白い発明 ゲノム編集用クリスパーキャス9による老化遺伝子切り取り若返り経口不老不死薬

世の中には、非常に面白い発明をする人がいます。何度か紹介している加治佐功氏がまた面白い発明を特許出願していました。

【発明の名称】ゲノム編集用クリスパーキャス9による老化遺伝子切り取り若返り経口不老不死薬
【公開番号】特開2016-11317(P2016-11317A)
【公開日】平成28年1月21日(2016.1.21)

クリスパーキャス9というのは、狙ったDNAを切断できるもので、以前はよくて1万分の1程度の確率でしかターゲッティングできなかったのが、この方法によると極めて効率よく狙ったDNAを切断できる、というものです。

加治佐氏は、この狙ったところを切るDNAのハサミ(実際にはガイドするのはRNAですが)を使って、老化遺伝子をカットすることで、不老不死薬を作れると考えているようです。

請求項は1のみで、以下のとおりです。

【請求項1】
(a)主として高齢老人のヒトiPS6因子である初期化するのに必要なOct3/4、Sox2、Klf4、L-Myc、Lin28、Nanogを用意し経口し初期化しておき、
(b)clk-1、elt-5、elt-6等の老化遺伝子を見つけ切り取るガイドRNAを含む、(c)クリスパーキャス9をカプセルに入れて胃酸や熱で壊れないようにするか、コーティングするかして、たんぱく質のクリスパーキャス9「酵素たんぱく質ハサミ」で、
(d)従来、これを血液中に入れていたが、これを経口式にすることで口から飲むという単純化とし、
(e)このようにして高齢老人でも全細胞が初期化しテロメアも若返ったように元の長さに戻り、経口不老不死薬となるが脳細胞の初期化で記憶も甦るか、脳の中の海馬と大脳を光刺激か電極刺激して全記憶が甦り老人脳も若くなるし、老化遺伝子すべてが切り取られ望むならば若さを保つ遺伝子導入で若返りも可能なゲノム編集を施した、
以上のような特徴を持つゲノム編集用クリスパーキャス9による老化遺伝子切り取り若返り経口不老不死薬7

というなかなかユニークな発明です。これで老人が記憶がよみがえり、若さを保てるならノーベル賞ものですが、残念ながら、いろいろ問題があります。

例えば、最初の初期化遺伝子を経口し、とありますが、経口投与ではDNAやタンパク質は分解されてしまうでしょう。また、腸からDNAが吸収されるかは微妙ですが、ウイルスは吸収されるので、分解されなければもしかしたら少しは吸収され、血流に乗るとしても、全細胞を初期化することは難しいでしょう。

そして、仮に全細胞を初期化できたとしたら、ガン化するおそれが出てきます。

次に、老化遺伝子のどの部分を切るのかが特定されていません。クリスパーキャスでカットしてもその後修復されるわけですが、そこでエラーが出ればいいですが正しく修復されるケースもあるので、全ての老化遺伝子が破壊されるとは限りません。

また、例えば、clk-1遺伝子はコエンザイムQを作る役割があると言われており、これがないとマウスでは胎児の段階で死んでしまいます。そういう意味で、老化遺伝子も発生の時期によっては別の重要な機能を果たしている可能性もあるので、単純に壊せば老化が遅延する、とも言い切れません。

結局、この発明の問題は、実際に投与試験をして効果を確認していないところにあります。アイデアのみで実施例の記載は以下のみです。

【実施例】
【0008】
上記の形態や非特許文献の如く実施される。

実施形態の記載も請求項の引き写し程度でほとんど実質的な記載はありません。

アイデアのみは面白いのですが、発明は実施可能なものである必要があります。ですから、実際に薬を作って、ご自分でもいいので飲んで、きちんと老化防止効果があることを確かめてから特許出願するのがよいと思われます。

大平国際特許事務所では、クリスパーキャスやゲノム編集の出願も得意としております。ご興味のある方は以下からお気軽にお問い合わせ下さい。

大平国際特許事務所お問い合わせフォーム

 

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弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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