1. TOP
  2. バイオ・テクノロジーが得意な弁理士
  3. 医薬品の特許戦略

医薬品の特許戦略

医薬品は、特許制度が最も機能しているジャンルである、と言われます。

それは、数件から20件程度の特許で年間数千億円の売上をあげるブロックバスター医薬を保護できるからでしょう。

電気分野では、1つの製品に数千の特許が貼りついており、1つの特許で数千億円の売上を保護することはできませんが、医薬特許の場合は1つの特許で数千億円、数兆円、ときには、10兆円以上の売上を保護することができます。

例えば、高脂血症治療剤のリピトールは全世界での売上は一時1兆円を超えていましたから、10年間独占できたとすれば、10兆円、実際にはもっと長い期間保護できていたと思います。それが1つの特許で独占できるのですからすごい世界です。

とはいえ、医薬特許戦略も複雑で、疾患の種類や、薬が効くメカニズム等によって、特許戦略が変わってきます。

例えば、同じ受容体(レセプター)を標的にする医薬の場合は、用途特許が出やすいので、1つの製品を上梓後に、第二用途、第三用途発明について特許申請することも多いです。

逆にあまり、用途発明の出ないジャンルもあります。

例えば、抗ガン剤の場合は、別のガンに効くとかいうケースもありますが、それほど多くありません。抗がん剤の場合はむしろ、配合剤(合剤)の特許や、併用療法で保護する、という手もあると思われます。あるいは、用法・用量特許で保護する、というやり方もあるでしょう。さらにバイオマーカーとセットで販売する、ということも欧米では普通に行われています。

これは、バイオマーカーの試験に保険の点数が付く等により、保護する意味がありますが、日本では、あまりそういう例は無いようです(1件だけあるという話ですが)。

実際、バイオマーカーを調べ、特定の条件を満たす患者だけに投与するとなると、当然、その薬の売上は下がります。そういう意味で、製薬企業もわざわざバイオマーカーとセットにして医薬品を販売するモチベーションが湧かないのでしょう。

とはいえ、イマニチブ(グリーベック)が効かない場合のみ投与するというダサニチブという抗がん剤もありますが。

また、製剤特許については、多くの国に出願するという実務が行われているようです。それは、製剤については、多くの国で特許が成立しやすいからです。また、製剤がある意味製薬企業にとって収益の源泉、という意味もあるのでしょう。

国によっては用途発明が認められない国もあるので、そういう国に対して用途発明の出願をするのは無駄なコストになる可能性が高いです。とはいえ、そうした国も10年もすれば法改正により医薬第二用途発明が認められるようになる可能性もゼロではありませんから、それを期待して特許出願する、という特許戦略もあるでしょう。

そういう意味では、医薬用途発明が今は認められないけど、将来認められる可能性があると思う国については特許出願する手もあると思われます。

そうした意味で、現在の状況のみで判断するのではなく、知財戦略は将来の見通しも含めて総合的に判断する必要があるでしょう

いわゆる知財の先読みというやり方ですが、知財部員には知財の将来を先読みする能力が求められると思います。それは弁理士にも言えると思われます。

\ SNSでシェアしよう! /

特許出願依頼(特許申請の依頼)の注目記事を受け取ろう

NO IMAGE

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

特許出願依頼(特許申請の依頼)の人気記事をお届けします。

  • 気に入ったらブックマーク! このエントリーをはてなブックマークに追加
  • フォローしよう!

ライター紹介 ライター一覧

大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

この人が書いた記事  記事一覧

  • 特許収入だけで生活できる人

  • 使用許諾(ライセンス)交渉、契約書作成の得意な特許事務所

  • 特許性(進歩性)を出すための発明者へのヒアリング

  • マルチマルチクレームが禁止 特許請求の範囲の記載要件が変更されました

関連記事

  • 日本知財学会第10回年次学術研究発表会

  • 農学分野の特許出願が得意な弁理士、特許事務所

  • 山中伸弥iPS細胞研究所長のノーベル賞受賞と欧州特許異議申立

  • 日米欧のパイオニア発明の特許出願と弁理士会研修

  • iPS細胞特許(出願)の日米欧での権利範囲

  • 食品製造に関する特許出願