利益を生む特許と休眠特許 知財部をプロフィットセンターにするには?
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会社の売上を上げ、利益を向上させる特許の代表的な例としては、自社のヒット商品に貼りついた特許です。数億円~数兆円の売上を上げる商品であれば他社が参入して来ますから特許で守る必要があります。
特許で自社の優位性を確保することで、競争優位性を構築することが可能です。
逆に製品に貼りついた特許でも、その製品にしか使えない特許の場合は、その製品が売れずに製造中止になったり、そもそも商品化しなかったりすればその特許は単なるコストになります。
とはいえ、そういう特許であっても、中小企業で実用化できる場合もあり、そういう場合はライセンスか売却すれば利益を生み出すこともあります。
また、ある会社にとってどうしてもその特許が無ければ事業ができない、という特許であれば、その会社にとっては数十億の価値がある場合もあります。
しかし、実施しない企業にとってはその特許の価値は0です。
つまり、特許の価値は会社の事業にどう活用できるか、により大きく変動します。0~数兆円まで特許の価値は変動します。
とはいえ、特許出願のときに、その商品が売れるかどうかはわかりません。例えば、医薬品でシード化合物を発見したとしても、それが臨床試験で副作用が出て販売できなくなる場合もあり得ます。そうなると、その化合物の特許にかけた費用は単なるコストになりえます。
しかし、いくつもの化合物について特許を出しておけば、そのうちのどれかが利益を生むブロックバスター医薬になる可能性もあります。そういうのが1つでも出れば、年間1000億円以上の売上を生み、巨額の利益が得られますから、全ての出願費用よりもはるかに大きな利益を生み出します。
こうしたことから考えると、全ての特許が同じように利益を生み出すというわけではなく、利益を生み出す特許と、単なるコストになる特許、その中間の特許が存在します。
だとすれば、いかにして、利益を生み出す特許を増やし、単なるコストになる特許、休眠特許を減らすか?が問題になります。
休眠特許を活用する制度として、特許流通アドバイザーという事業があり、そこでは、各企業の不要な特許を他社に紹介して実用化する、ということをやっていました。そうした、特許のライセンスや販売を仲介する業者を利用して不要な特許を売却してキャッシュに変える、というやり方もあります。
ある大学では、大学特許を海外の特許買い取り企業に販売していました。しかしながら、それにより、日本企業がその特許によって攻撃されるケースもあります。すると、安い値段で売った特許によって日本企業が巨額の損害賠償を払わされる、ということにもなり得ます。
そうしたブーメランのようなことを避けることも企業にとっては重要です。
さらに、侵害訴訟で攻撃を受けた際に、相手を逆に攻撃する(カウンター訴訟)のためにだけ使える特許のあり得ます。
そう考えると、特許はある意味保険みたいなもので、ある程度の数持っていることで、他社特許を侵害した場合に、他社からの攻撃に対する防御として使えることもあります。
なので、製品に多数の特許が貼りついている、電気、機械関係であれば、ある程度の数の特許を保有することは侵害訴訟対策にもなります。
医薬やバイオの場合も数は少ないですが、やはりカウンター訴訟用の特許は持っているに越したことはないでしょう。
そういう意味からいえば、一定の割合で休眠特許が出て来るのは止むを得ないと思われます。そのコストはヒット商品で十分に回収できるのであれば、休眠特許はヒット商品が出た場合に適切に保護するための必要物とも言えます。
ただ、現実から言えば、研究所でたまたま面白い結果が出たから特許出願する、というケースも多いです。また、何に使えるかわからなかったものが、将来大ヒット商品を生み出す発明であることもあり得ます。
そういう意味で、マーケティング主導で製品開発に合せて必要な特許を取得する、という戦略的出願をしなくても、研究者が持ってくる発明を特許出願していてもある程度は知財部の役割は果たせます。
しかし、やはり、商品開発に連動して、その商品を戦略的に守れるような特許を出願することも重要です。
大型商品の企画があれば、開発段階からどういう特許でその製品を守るか、を考えて、知財部の方から特許網(特許壁)を作るために必要なデータを研究者に依頼する、というのも有効ではないかと思われます。
知財部がそこまで出しゃばる必要はない、という人もいますが、昔の知財部は研究者より優秀で無い、というよりも、おじ捨て山のような面がありましたが、今は優秀な知財部員が増えていますから、そうした提案もできるのではないかと思われます。
それにより、知財部をプロフィットセンターにできるのではないか、と考えています。