特許庁での審査官との面接審査
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大平国際特許事務所では、スパっと意見書で一刀両断できるような間違った拒絶理由については、面接審査はあえてはやりません。
しかし、微妙な案件や、ややこしい案件(拒絶理由通知)に対しては、まず特許庁の担当審査官に電話インタビューを行い、それでも難しいときは、直接特許庁に行って審査官と面接することにしています。
面接すると、包袋に応対記録が残りますが、包袋禁反言にならないやり方もありますから問題ありません。
先日も大阪から東京の虎ノ門の特許庁に行って面接審査をしてきました。もっとも、日程などがあえば、関西に審査官が出張することもあるし、TV会議も可能なようなので、よほどの案件以外は電話インタビューか、TV会議でもいいのかも知れません。(2016/8追記:今はインターネット経由でTV会議で複数の箇所をつないでTV面接ができるのでわざわざ特許庁まで出張する必要もなくなりましたが)
面接のいいところは、どこまでこちらの言っていることを審査官に理解してもらっているかが直接審査官の反応からわかるので、誤解されていると感じたら、さらに資料を提出して詳しく説明するか、既に提出済みの資料を用いて、理解してもらえるまでその場で説明できる点でしょう。
また、審査官の拒絶理由の意味をこちらが誤解している場合もあり、一見難しく見えても実は非常に簡単に解消できる拒絶理由だった、というケースもあります(もちろん、その逆もあり、こうすれば絶対拒絶理由が解消できる、と信じて作成した、自信満々の補正案に対して厳しいコメントをもらったこともあります)。
このあたり、特許になるかどうかのギリギリの境界部分(グレーゾーン)は、その都度審査官が複数人集まって協議してどちらかに決めるそうです。中間的な査定はないですから、理不尽に思えても、必ずどちらかに決める必要があります。多数決で決めることもあるようです。ですので、見方によっては常識とは異なる判断が出る場合もあり得ます。
それに、拒絶査定不服審判の請求書あるいは理由補充書は文章で書くわけですが、それを一言で言えば、こういうことです、と面接でまとめて言えば、逆にわかりやすい場合もあります。たとえて言えば、教科書などの本を読むのと、講義を聴くのとの違い、という感じでしょうか?わからなければその場ですぐに疑問点を突っ込んで聞けますし、説明する方も相手に合わせた言葉や説明ができます。
意見書や審判請求書、理由補充書を読むのは、その道のプロの審査官、審判官であっても楽とは言えないでしょう。元々の明細書も普通の人は読むのが苦痛な文章なのに、それをベースにした反論文ですから、なおさら理解しにくい場合もあり得ます。特に反論が10ページ以上もあればそのすべてを正確に理解できるとは限りませんし、読み飛ばしてしまう箇所もあるかも知れません。
それ以前に書く側(弁理士や知財部員、発明者など)の文章力、論理力の問題もあり、日本語として変な記載だったり、誤記や完全な誤解も含まれる場合もありえます。
そのような場合、面接をしないと、完全に誤解されて拒絶されることもあり得ますが、面接をすれば、全くすれ違いで拒絶される、ということは少ないと思われます。
以前、ある特許出願の拒絶理由通知で、審査官の引用文献に記載の発明の認定が完全に間違っていたので、それに反論する意見書を提出したのですが、それでも発明の認定が間違っていたことは認めず、さらに間違った先行文献を出して来て間違った認定に基づいていきなり拒絶査定が来たことがありました。
つまり、出願人が正しい(と思う)反論をしても、それを審査官が理解してくれない場合もあるわけです。文章で伝えることの限界ではないかと思います。
そういう場合は直接会って話をすれば、審査官がどこまで理解してくれているかわかりますから、理解していない点を理解してもらうように、より詳細に根拠を示して説明すれば理解してくれるはずです。
そうすれば、間違った発明の認定に基づいて拒絶されることは防げます。
そういう意味で、大平国際特許事務所では、拒絶理由に対して確実に意見書、補正書で対応できる(拒絶理由を解消できる)、と確信できる案件以外は面接審査をするようにしています。
裏話を言えば、面接をやると費用が余計にかかるので、出願人もやりたがらないケースも多いのも実情です。また、審査記録に面接記録が残るのを嫌がる会社様もあります。将来的に訴訟などで面接記録を根拠に無効の抗弁をされる可能性もないとは言えません(これについては、当所では問題にならないノウハウがあります)。
また、特許事務所にとっては面接審査をすれば1回で解決できることが多く、そうなると拒絶理由が何回も出て、拒絶査定不服審判も請求するケースに比べて儲からない、という面もあります。
審判まで行けば1つの特許が成立するまでに100万円以上のコストがかかることもありますから、特許事務所としては、面接しなければそれだけ儲かるのに、面接で拒絶理由1回で特許になってしまうとそのチャンスを失う、という見方もあります(ちなみに大平国際特許事務所の特許登録率は非常に高いです)。
とはいえ、面接審査して早めに特許登録査定にして成功報酬をもらい、次の案件に移った方が最終的には収益性が良くなる、という考え方もあります。クライアントの会社様にとっても何度も拒絶理由対応し、さらに、拒絶査定不服審判、分割出願など手間と費用がかかるのは好ましくないでしょう。できるだけ早く特許にしたいはずです。
私としては、1つの案件で拒絶査定不服審判まで行って徹底的に争い、それにより特許にすることも当然やっていますが、できるだけ審査の早い段階で面接して特許化するようにしています。これは企業様の出願件数が減少傾向の現状では儲けを少なくしかねないやり方で、経営的にはあまりうまいやり方ではないのかも知れません。
しかし、面接をうまく活用して早めに特許化して拒絶理由応答費用を抑えることにより、より多くの出願をしてもらい、それによりクライアント様の特許網(特許壁)、特許ポートフォリオを強化することでクライアント様の売上げが上がるならそれが一番いい、と考えています。どの特許が将来ヒットするかは予想できない面もありますから、特許出願の数を増やすことも特許による売上げアップ、ライセンス収入増には必要だからです。
つまり、会社の知財部(特許部)をプロフィットセンター化するには、ある程度の数を出願し、それにより巨額の利益を生み出す特許を保有することが必要と思います。そして、そうした巨額の利益を生み出す発明を発掘することも知財部員(特許部員)や弁理士の役割だと思っています。
大平国際特許事務所では、発明者の頭の中に眠っている発明を引き出す、発明コーチング&コンサルティングも行っておりますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
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