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日本と海外の特許ライセンス収入比較

アメリカなどでは、巨額の特許収入を得ている個人がかなりいます。

また、大学も1900億円もの特許のランニング・ロイヤリティ(実施料収入)を得ています。それに対して日本の大学全体で最高の年で22億円でした。つまり約100倍程度の差があるわけです。

今回は海外と日本のライセンス収入を比較してみました。

これを見ると、海外と日本がいかに異なるかがわかると思います。

なぜ、海外ではライセンスがしやすく、日本ではライセンスがあまり進まないのでしょう?

一つには、アメリカや欧州は訴訟社会なので、契約をきちんと読んで対応するのが当たり前になっています。それ以前に、訴訟が非常に簡単にでき、とりあえず訴えておいて、その後のディスカバリー(情報開示)の過程で訴訟戦略を練ることができますし、完全成功報酬制弁護士も多いですから、訴訟の最初のコストがほとんどかかりません。

一方、日本では証拠を集め、侵害を立証する訴状を作る必要があります。それに弁護士に着手金を支払う必要もあるので、手軽に訴えるというわけにはいきません。それに、日本では、できるだけ訴訟を避け、交渉で解決するのが美徳という風潮があります。

また、アメリカ人はディベート文化が子供の頃から根づいていますから、相手をコテンパンにやっつけるのが普通です。

しかし、日本では、相手を徹底的に叩くのは非常識、と思われるケースも多いと思いますし、あまりそこまでやる人は少ないです。できれば話し合いで穏便に済ませたい、という人が多いでしょう。

そういう意味から言えば、仮に特許権の侵害者を見つけたとしても、徹底的に相手を潰すことはせず、むしろ共存共栄の策を模索することも多いと思います。

それに訴訟で白黒はっきりつけようとすると、場合によっては自社特許が無効とされるおそれもあります。そうなるとやぶへびですから、相手から仕掛けられない限り、自社からは訴訟を仕掛けない、という方針の会社もあるようです。

自社は訴訟をなるだけしない、という方針をかつてアメリカで講演した会社があったそうですが、その会社は訴訟の格好の標的になったようです。

というのもできるだけ訴訟しない=和解金をたんまり払う、という意味ですから、アメリカの弁護士は労せずして多額の和解金を得たであろうことは想像に難くありません。

そういう意味では、郷に入っては郷に従え、ということで、訴訟文化の国に行けば、訴訟をきっちり受けて立つようにしないと訴訟の標的にされ、多くの和解金を取られることになりかねません。

ライセンスが増えない原因のもう一つは、日本企業ができるだけライセンスを受けない、という文化があるからではないかと思います。

ある日本企業では、特許ライセンスを受けることが必要な研究はできるだけ避ける、という感覚があるようです。そういうテーマを企画すると、それだけで通りにくくなるようです。

こういう文化からも日本はライセンスをできるだけ受けたくない会社がかなり多いと思います。最近は徐々に変化しているかもしれませんが。

そうしたことを考え合わせると、日本で特許ライセンスが盛んになるためには、特許権者が気軽に訴訟できる状況を作ることでしょう。

法科大学院を出て司法試験に合格した弁護士の中にも仕事が無くて困っている人もいるでしょうから、そういう人達が成功報酬制弁護士として、特許権者を保護するようになればいいと思います。

訴額が大きくなると印紙代がかさむので、最初は一部のみ請求する訴訟をするのもよいでしょう。そして勝訴すればその賠償金でさらに大きな訴訟をする、という形で特許権者がしっかりと訴訟をする姿勢を見せれば日本のライセンス市場も変わると思われます。

なので、特許権者の皆さんは、弁護士に成功報酬制でやってくれ、と言って弁護士に依頼し、成功報酬制弁護士を見つけて訴訟する、というのがよいと思います。

と、言っても決して不要な訴訟を増やしましょう、というのではなく、本当に侵害されているのなら徹底的に争いましょう、という意味です。特許侵害者を放置する必要はありません。そこは徹底的に叩く必要があります。

そうすることで、日本での特許侵害が減り、特許権者が正当に報われるようになると思います。

 

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ライター紹介 ライター一覧

大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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