特許出願の拒絶査定への対応 拒絶査定不服審判請求
特許出願して審査請求すると、一発で特許登録査定が来ることもありますが、そういうケースは珍しく、通常は、拒絶理由が来ることがほとんどです。
そして最初の拒絶理由に対して補正したり、意見書で反論することで特許になることもあれば、反論が認められず、最後の拒絶理由が出て、それに対して補正したり反論しても拒絶査定が出ることもあります。あるいは、補正が補正の要件違反で却下され拒絶査定が出ることもあります。
拒絶査定が出た場合には、拒絶査定不服審判を請求して争うことができます。また、この際に分割出願することも可能です。審判で拒絶理由が出ない場合には、この時期が分割の最後のチャンスになりますから、安全を見越して分割出願するのも一つの考え方でしょう。
拒絶査定不服審判は、特許庁印紙代が49,500円+(請求項の数×5,500円)ですので、請求項の数が10だと、49500+55000円となり、特許庁印紙代だけでも約10万円位はかかります(請求項数によりますが)。それに弁理士手数料の20万円を加えると30万円位かかります。
これがアメリカや韓国だと再審査請求(継続審査要求(Request for Continued Examination: RCE))という制度があり、拒絶査定に対しても再度補正して審査をしてもらうことができます。米国ではその前にadvisory actionが出ますが。
補正却下により拒絶査定された場合も拒絶査定不服審判を請求した場合、拒絶理由が出て、補正ができる場合もあります。この場合、却下された補正と同じか、それよりも広い範囲に補正することも可能です。それにより、あっさり特許審決が出る場合もあり得ます。
ともかく、日本では、拒絶査定が出た場合には、再審査の制度はないので、審判請求して争うしかなく、かなりの費用がかかります。しかし、重要な特許であれば、それだけの費用をかけても争う価値はあります。
例えば、数億円の市場を独占できれば、粗利益30%としても、億単位の利益が得られます。だとすれば、その特許を取得するかどうかにより、事業戦略が大きく影響を受けるでしょう。この場合は、審判請求して特許化を目指すのが普通です。
さらに言えば、例え拒絶審決になっても、知財高裁に訴訟を提起して争い、さらに、最高裁まで争うことで、拒絶審決の確定を遅らせ、その間に独占の利益を得ることも考えられます。この訴訟の行方が不透明であれば、ライバル会社も参入を見合わせる可能性もあるので、その間に市場シェアを押さえてしまえば、よい、という考え方もあるでしょう。
そういう意味では、拒絶査定不服審判は費用がかかるから一律止めとこう、というのではなく、費用対効果を考え、事業戦略的に考えて、もしその特許が取得できれば審判費用は十分ペイする、という特許出願については、拒絶査定不服審判を請求するのが正しい戦略である場合もあります。
また、審判請求して補正して前置審査で簡単に特許になる場合もあり得ます。
海外からの特許出願では、拒絶査定不服審判をどんどん、というか、ほぼ全件で請求するような出願人もいます。もちろん、それだけ優れた発明であり、ライセンス収入もそれなりに上げている大学等ですが。
そういうのを見ていると日本の企業や大学も拒絶査定不服審判をもっとやってもいいのかも知れません。中小企業の中には、審判は原則やらない、という方針の会社もありますが、それほどハードルが高いわけではないので、外国出願するような重要な特許であれば、拒絶査定に簡単に承服するのではなく、拒絶査定不服審判の請求を検討するのがよいと思います。
大平国際特許事務所では拒絶査定不服審判も得意としております。ご興味のある方はお気軽にご相談下さい。