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アップル社に日本人発明家が特許侵害訴訟で勝訴

 2013/09/26 特許訴訟 侵害 差止 和解 訴訟戦略 管轄
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米国アップル社のiPod(携帯音楽プレーヤー)の円形スイッチが、日本人の発明家の特許権を侵害しているとして、100億円の損害賠償を求めた裁判の判決が出ました。

東京地裁の高野輝久裁判長はアップルに対し約3億3千万円の支払いを命じる仮執行宣言付の判決を下したそうです。

この発明家は斎藤憲彦さん(56)で、以前、株式会社ポセイドンテクニカルシステムズから平成10年頃に7件の特許出願をしていますが、全て拒絶されています。

特開平11-272378 入力装置及び該入力操作検知方法 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-195353 通信端末装置 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194891 マウスポインティングデバイス 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194883 タッチ操作型コンピュータ 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194882 キーボードおよび入力装置 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194872 接触操作型入力装置およびその電子部品 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194863 タッチ入力検知方法及びタッチ入力検知装置 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ

しかしながら、このうちの下の特許出願についての拒絶査定不服審判からの分割出願が特許になり、それが今回の侵害事件につながったようです。

出願番号 特許出願平10-012010
公開番号 特許公開平11-194872
審判番号 不服2005-020649
特願2005-133824
特許-3852854(早)(2006.9.1登録査定)
接触操作型入力装置およびその電子部品

斎藤さんの特許は検索した限りではこれのみがヒットしました。かなり広い権利範囲となっています。見方によってはパテント・トロールと言ってもおかしくないくらい広い請求項ですが、それでトロールの本場の米国を代表する企業アップルから損害賠償金を取るとは日本人としては痛快と言えなくもないですね。

国際出願して欧米でも権利化できていれば、米国では3倍賠償制度もあるので、1ケタ以上高額の賠償金が取れた可能性があります。というのも、日本ではアップル社がこの特許に対して2009年3月に無効審判を請求しているからです(後に審判請求取下げ。おそらく斎藤氏側が訂正したためと考えられます)。

特許-3852854(早)
接触操作型入力装置およびその電子部品

【原出願日】平成10年1月6日(1998.1.6)
【出願番号】特願2005-133824(P2005-133824)
【氏名又は名称】株式会社齋藤繁建築研究所
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状である軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーが配置されたタッチ位置検知手段と、
接点のオンまたはオフを行うプッシュスイッチ手段と
を有し、
前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡に沿って、前記プッシュスイッチ手段が配置され、かつ、
前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡上における押下により、前記プッシュスイッチ手段の接点のオンまたはオフが行われる
ことを特徴とする接触操作型入力装置。
【請求項2】
請求項1記載の接触操作型入力装置であって、前記プッシュスイッチが4つであることを特徴とする接触操作型入力装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の接触操作型入力装置を用いた小型携帯装置。

なお、拒絶された原出願の出願公開時点の請求項は以下のとおりで上記よりもさらに広い特許請求の範囲となっている。

特許請求の範囲】
【請求項1】 直線または平面曲線もしくは空間曲線状の所定の軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーを配したタッチ位置検知手段と、該タッチ位置検出センサーの用いら れる軌跡上で指が移動する方向以外の物理的な移動または押下により接点のオンまたはオフを行なうスイッチ手段とを有し、前記タッチ位置検知手段による軌跡 上のタッチ位置の状態と、前記スイッチ手段による接点の状態とを一体化させて検知することを特徴とする接触操作型入力装置。
【請求項2】 直線または平面曲線もしくは空間曲線状の所定の軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーを配したタッチ位置検知手段と、該タッチ位置検出センサーの用いら れる軌跡の接線に直交する方向への物理的な移動または押下により接点のオンまたはオフを行なうスイッチ手段とを有し、前記タッチ位置検知手段による軌跡上 の接触点からの位置情報と、前記スイッチ手段による接点のオンオフ情報とを一体化させて検知することを特徴とする接触操作型入力装置。
【請求項3】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーには、軌跡上の接触点において接触時と非接触時の静電容量変化を信号変化として検出する静電誘導式検知手段を用いることを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請 求項4】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーには、軌跡上に連続して配置した第1電極と間欠に置かれた第2電極を用いると共に、いずれか一方の 電極を可動電極とし、他方の電極を固定電極として指の押圧力を検知させる可動電極式検知手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入 力装置。
【請求項5】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーには、軌跡の両側もしくは下側に発光素子および受光素子を1組づつ連続して配置した光学式検知手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請 求項6】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーには、軌跡の両側に電極を付設し、該電極に駆動電圧と接地電圧をかけて電位分布を発生させて接触点 位置の電圧を検知することにより変位、移動量および押圧力を検知する抵抗膜式検知手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装 置。
【請求項7】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーは、金属接点間を跨がって接触した指等の抵抗を検出し、出力レベルを高レベルと低レベルの2値に変 動させる直流抵抗検知方式によるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請求項8】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーは、磁気膜を使用した電磁誘導方式によるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請求項9】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーは、超音波発振源を使用した超音波方式によるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請求項10】 前記スイッチ手段は、前記タッチ位置検知手段のタッチ位置検知部に沿っての片側または両側に設けた突起の押下時に該突起と共に接点のオンまたはオフを行なうことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項11】 前記タッチ位置検知手段のタッチ位置検知部、あるいは該周囲部、もしくはタッチ位置検知部を光透過可能なものとした該下部において接触検知の状態に応じて明滅する発光体を配設したことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請 求項12】 前記スイッチ手段は、前記タッチ位置検知手段に接触せずに接点のみオンまたはオフを行ない、なおかつ該接点の押下に連動して同時にタッチ位置検知手段が押 下されるよう常時タッチ位置検知手段と連接していることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項13】 前記スイッチ手段は、前記タッチ位置検知手段に接触せずに接点のみオンまたはオフを行ない、なおかつ該接点の押下時に前記タッチ位置検知手段と連接して同時に押下されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項14】 前記スイッチ手段は、一端が揺動可能に支承された揺動カム機構の他端押圧時に接点のオンまたはオフを行なうことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項15】 前記タッチ位置検出センサーは、変移単位の同じかまたは変移単位の異なる複数の接触検知軌跡上に沿って配されているものとした請求項1乃至14のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項16】 前記タッチ位置検出センサーは、幅広な帯状にして一様に分布されているか、もしくは粗密性を有する不均一分布にして配されているものとした請求項1乃至15のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項17】 前記タッチ位置検出センサーは、少なくとも1つの接触位置を検知する隣接した2個または3個以上のセンサーによるものとした請求項1乃至16のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項18】 前記スイッチ手段は、複数のプッシュスイッチによるものとした請求項1乃至17のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請 求項19】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部を所定の範囲で水平に動き得るように保持し、該タッチ位置入力部の接点との間に電気信号または電圧を伝達する手段を有する接 点付取付基板と、通常状態で該タッチ位置入力部を水平一定方向へ押しつけるバネ体と、バネ体の付勢力に抗して前記タッチ位置入力部を押すことにより動作す るよう接点付取付基板の上に配されたプッシュスイッチ部とから成ることを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項20】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部のための固定接点および上方から操作するプッシュスイッチ部を上面に有する取付基板と、該取付基板に設けた支持部によって揺 動可能に保持されると共に固定接点に対応した接点を下面に有するタッチ位置入力部を保持した部材と、該部材の揺動によって先端でプッシュスイッチ部を駆動 するように該部材の周囲の一部に設けられた切片状の突起の作動体とを有し、タッチ位置検知部のある部材に十分な圧力が加えられたときにプッシュスイッチ部 を押下することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項21】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部のための固定接点および上方から操作するプッシュスイッチ部を上面に配した取付基板とを有し、該タッチ位置入力部の両端側ま たは中央下部側に垂設された支持部が取付基板上に設けたガイド用軸穴に嵌挿されて昇降可能となるように案内支持され且つタッチ位置入力部側を取付基板上方 の係止部側へ常時弾発付勢すべくタッチ位置入力部と取付基板との間に弾性体を介設させ、該弾性体の弾発付勢力に抗してタッチ位置検知部に十分な圧力が加え られたときにプッシュスイッチ部を押下することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項22】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部を保持する部材の接続方式として該タッチ位置入力部夫々に設けられた窪みまたは孔部もしくは貫通する孔部により連結部材に よって嵌合されており、該タッチ位置入力部を水平一定方向に押し付けるバネ体を付勢力に抗して押すことによりプッシュスイッチ部が押されるものとしたこと を特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項23】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部を一定方向に付勢または押し付けるための部材に弾性体を用い、該付勢力に抗してタッチ位置入力部を押すことによって該弾性体 の圧縮または伸展によってプッシュスイッチ部を押下する手段を有する請求項19乃至22のいずれか記載のプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請 求項24】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部を有し、該タッチ位置入力部とは別に弾性体の圧縮または伸展によってプッシュスイッチ部を押下する手段を有する請求項19乃至23のいずれか記載の プッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項25】 前記プッシュスイッチ部を押下する手段は、単一機器において、タッチ位置入力部が配置されている位置と離隔した位置に配されるか、またはタッチ位置入力部 の近傍に隣接配置されているものとした請求項19乃至24のいずれか記載のプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項26】 前記タッチ位置検知手段の指先接触面には凹凸部が設けられている請求項19乃至25のいずれか記載のプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項27】 キートップに接触検出センサーを付設し、1つの接触を検知する手段を有することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項28】 キートップに複数の接触検出センサーを付設し、夫々の接触を検知する手段を有することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項29】 キートップにタッチパネルを付設したことを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項30】 キートップにタッチパネルを付設し、接触を検知する手段を有することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項31】 前記スイッチ手段は、キートップに接触検知部を付設し、プッシュしたときにセンサーの接点が離れることを特徴とする請求項1乃至30のいずれか記載のプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項32】 前記スイッチ手段は、モメンタリイ式、オルタネイト式もしくはロック式のいずれかによるものとした請求項1乃至31のいずれか記載の接触操作型入力装置。

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大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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