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ブロックバスターの特許切れ問題 メルク、ファイザー

メルクがブロックバスターの特許切れで収益が減少しているそうだ、と2013年5月3日に書きました。しかしながら、メルクは新たな免疫チェックポイント医薬である、キートルーダで今年600億円程度の売上げをあげ、この免疫チェックポイント医薬は、10年後には小野薬品のオプジーボと合わせて3兆円の市場になるだろうと言われています。

オプジーボは、小野薬品が日本で販売していますが、海外ではブリストルマイヤーズスクイブが販売しており、7000億円位の売上げだそうです。小野薬品はPD-1抗体、PD-L1抗体に対する特許をもっており、そのライセンス収入は600億円強だそうです。

小野薬品の日本での売上げ予想は今年度で1700億円程度とのことです。

メルクも一時期ブロックバスターの売上げが減り、困っていましたが、抗PD-L1抗体のキートルーダで巻き返しに来ています。

しかしながら、小野薬品と本庶佑先生のPD-1特許にはPD-L1も含まれていることから、メルクはこの特許権を侵害しているとして、小野薬品から世界中で訴訟を起こされており、メルクもこの特許に対して異議申立や訴訟等で対抗しているようです。

小野薬品としては、メルクの販売を完全に差止までする気はなく、ライセンス料を支払えば、販売してよい、という姿勢のようです。今後の訴訟の動向が注目されます。

以下は2013年の記事です。

メルクはピーク時50億ドルの売り上げだった、ぜん息・抗アレルギー薬「シングレア」の売り上げのほとんどを失ったという。米国の場合は薬価が無く、ジェネリック医薬品が出たら、価格は10分の1位に一気に下がるので、先発医薬品メーカーからジェネリックに一気に移行する。

日本の場合は、薬価があり、特許が切れても6%づつ位しか薬価が下がらないので、新薬メーカーの薬を使い続ける医師も多いようだ。それに、日本の後発医薬品メーカーの中にはしっかりとデータを出さずにまた、副作用チェックもあまりやらないメーカーもあるようで、品質に不安があるメーカーもある。そういう意味では日本の方が新薬メーカーに有利と言えるかも知れない。

米国ではオレンジブックというジェネリック薬の評価の付いた本があり、新薬メーカー同等の品質のジェネリック医薬を選ぶことができるのでジェネリック薬が普及しやすい。

とはいえ、米国は薬価制度が無いので数百万円の薬がたくさんあるというメーカーにとってのメリットはある。

メルク社では、抗アレルギー薬「クラリネックス」も予想を上回るペースで後発医薬品へのスイッチが進んでおり、これも悩みの種になっているようだ。糖尿病治療薬「ジャヌビア」も競合他社との値下げ競争があり、さらに、より優れた新薬が認可される可能性もあるので、売上規模の予測が立たないようだ。

医薬品開発では巨額の開発投資がかかるが、低分子化合物医薬は出尽くしたという説もあり、いずれは枯渇すると思われる。そうなるとバイオ新薬の方にシフトし、より高額医薬品が増える可能性もある。

また、バイオ医薬は特許が複雑に絡み合い、物質特許のように1つの特許(出願)でブロックバスターを保護できる、というわけでもない。そういう意味では今後、医薬の特許出願が増える可能性があると思われる。

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大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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