特許申請の名義は個人か会社か?
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大企業の場合、職務発明の特許出願は当然に会社名義で出願しますが、中小企業の場合、社長等の個人名義にする方がよい場合もあります。
例えば、倒産した場合に、会社名義だと債権処理に入り、二束三文でたたき売られるおそれがあります。買収された場合にも自動的に包括承継されてしまう場合もあります。会社をたたむ場合にも会社名義だと名義変更が必要になります。登録後の名義変更は、出願係属中の名義変更とは異なり、印紙代がかかります。特許で15000円、商標では3万円の収入印紙が必要になります。
しかし、社長や役員等の名義にしておけば、個人の財産ですから、会社の債権回収とは別の扱いになりますから、抵当に入れていなければ倒産後も財産として保有してライセンス料を得ることができる可能性があります。
また、特許権や商標権を個人名義にしておけば、会社に専用実施権や通常実施権を設定して特許や商標の使用料(ライセンス料)を個人でもらうこともできます。
発明は本来は個人帰属ですから、社長の発明を個人が特許出願することは社内の発明規定できちんと規定して処理しておけば契約自由の原則から可能ではないかと思われます。ただし、社員の発明は会社に帰属する、という職務発明規定がある場合は、社長(経営陣)にもその適用があるかどうかが問題になり得ます。
その際、会社と利益相反にならないようにしっかり規定をしておく必要はあると思われます。100%会社の資源、時間を使ってした発明の特許については無償で会社に通常実施権を与えるとか、ライセンスする場合は会社の不利益にならないようにする等。
追記
補助金や交付金を得たり、審査請求料の減免制度を受けるには、会社名義または個人事業主である必要がある場合があります。その減免を受けたい場合は、会社名義にする必要がありますのでご注意下さい。
産業競争力強化法による減免措置の対象は、平成26年4月から平成30年3月までに特許の審査請求又は国際出願を行う場合となります。
対象となる出願人は以下です。なお、個人から該当する会社に譲渡した場合でも減免が受けられます。また、個人の場合、個人事業主開業届を出せば該当します。
- a.小規模の個人事業主(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下))
- b.事業開始後10年未満の個人事業主
- c.小規模企業(法人)(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下))
- d.設立後10年未満で資本金3億円以下の法人
支払う料金は通常の3分の1になります。
- 審査請求料 1/3に軽減
- 特許料(第1年分から第10年分)1/3に軽減
- 調査手数料・送付手数料1/3に軽減
- 予備審査手数料1/3に軽減