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インド最高裁がグリベック(ノバルティス)の特許を認めない判決

スイス製薬大手のノバルティスは、2006年、抗がん剤「グリベック(Glivec、米国でのみGleevec、一般名イマチニブ)」の特許出願がインドで却下されたことを不服として提訴していた。

インド最高裁判所は、4月1日、グリベックは「既存薬の化学構造を変えただけで新薬とは言えない」との高等裁判所の判決を支持したという。

インドは2005年まで医薬品の特許を認めていなかった。WTOのTRIPS協定に加盟したことから、2005年に物質特許制度が導入されたが、第3条に不特許事由が規定されている。

第3条 発明でないもの
(c)
科学的原理の単なる発見,又は抽象的理論の形成,又は現存する生物若しくは非生物物質の発見
(d)
既知の物質について何らかの新規な形態の単なる発見であって当該物質の既知の効能の増大にならないもの,又は既知の物質の新規特性若しくは新規用途の単なる発見,既知の方法,機械,若しくは装置の単なる用途の単なる発見。ただし,かかる既知の方法が新規な製品を作り出すことになるか,又は少なくとも1の新規な反応物を使用する場合は,この限りでない。
(e)
物質の成分の諸性質についての集合という結果となるに過ぎない混合によって得られる物質,又は当該物質を製造する方法

http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/chousa/pdf/tripschousahoukoku/22_4.pdf
(d)に記載されているように、インドでは用途特許が認められないので、いわゆるライフサイクルマネジメントのような延命化特許を取得するのが難しい。また、強制実施権の規定もある。CBDについては出所の開示を求めており、違反すれば無効になる。

医薬は特許制度が最も効果を発揮する産業と言われているが、インドではその効果が発揮できないような仕組みになっていると思われる。医薬品産業の巨額の投資を回収することが難しい制度設計では医薬品の開発意欲が湧くだろうか?
以下はグリベックの科学的な解説である。

グリベックはKITの分子標的薬で、KITに入り込み細胞増殖のスイッチを切る働きをする。それにより腫瘍細胞の増殖が止められる。しかし腫瘍細胞を殺すわけではないので、増殖シグナルを切り続ける必要がある。

グリベックは以下の病気に適用される。慢性骨髄性白血病、KIT (CD117) 陽性消化管間質腫瘍、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病。

元々は、フィラデルフィア染色体の遺伝子産物Bcr-Ablを標的とした分子標的治療薬としてブライアン・ドラッカーとスイスのノバルティスファーマ社により開発された抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)である。

このフィラデルフィア染色体は、22番染色体と9番染色体間での転座によって、c-ablとbcrという遺伝子が融合し、異常なタンパク質を生じるものである。慢性骨髄性白血病および一部の急性リンパ性白血病に見られる染色体の異常である。

グリベックはBcr-Ablチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害するだけでなく、KITチロシンキナーゼ活性も阻害し、GISTに対する抗腫瘍効果を発揮する。また、c-abl、p185Bcr-Abl、Tel-Ablチロシンキナーゼに対しても同様な阻害作用機序を示す。

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大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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