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どうすればいい発明ができるか?

タイトルのような質問を読者の方からいただきました。

いい発明をしたいなら、特許を出したことがない方の場合は、アイデアを思い付いたら、まずは、その分野について徹底的に先行技術を調査することだと思います。当所に特許申請を依頼してこられる方の発明の中には、少し先行技術調査をすれば簡単に同じ発明がヒットするケースがかなりあります。

特許調査は特許情報プラットフォーム(jPlatPat)で簡単に調査できますから、発明アイデアが閃いたら、まずは、先行特許調査をされることをお勧めします。それも1回だけでなく、一度調査し、その結果ヒットした文献からキーワードを拾って、再度調査し、さらに、それらを読んで、もう1回調査する、程度の調査は必要と思います。

それというのも、自分ではこのアイデアはすごくいいので、自分しか思いつかないはず、という無意識的な願望があり、それがあると、無意識にヒットしないキーワードで検索して、やっぱり無かった、と思いたい部分があるからです。そういう意味では客観的にどういう先行技術があるか調査する、という意識でやる必要があります。

そうした先入観の無い私達、特許や調査のプロでも最低2回はキーワードを変えて調査をやり直しますから(通常、3~5回以上はキーワードやIPC, Fタームなどを変えて調査を繰り返します)。

有名な発明家のドクター中松も、ケチョウスピゾケイキアイキ、という発明手法を提唱していますが、最初に先入観を消したら(ケ)、「チョウ」つまり、調査を徹底することを勧めています。これにより先人がどの段階まで到達しているかわかるからです。また、その次には、理論的に正しいかどうか(スジが正しいか?物理学、化学、生物学等の基本法則に反していないか?)を調べます。

つまり、いい発明をするには、まずは調査、次に科学的理論を調べます。その上でアイデアを出すわけです。ドクター中松の発明手法の他の部分は以下のとおりです。この方法は発明初心者にも使えると思われます。

「ケチョウスピゾケピケアイキ」

ケ  ・・・一切の先入観を取り除く。
チョウ・・・調査する
ス  ・・・スジが通っているか?理論的に正しいか?
ピ  ・・・ひらめき。ピカ。アイデアを出す。
ゾ  ・・・実際に作ってみる
ピ  ・・・再度アイデアを出してブラッシュアップ
ケ  ・・・きちんと動くか、効果があるか、を確認
ア  ・・・製品化する(アセンブル)
イキ ・・・発売して世の中の役に立つ

また、そもそも、いい発明、の定義はいろいろでしょうが、企業がいい発明という場合と、大学がいい発明、というのは少しニュアンスが違うかも知れません。

企業がいい発明、と言うとすれば、おそらく儲かる発明で、基礎研究的に意義のある発明とは限らないと思います。大学がいい発明と言うとすれば、儲かるのは二の次で基礎的なサイエンスとしても貢献度が高い発明ではないかと思います。もっとも、これは評価する人によっても変わりますが。

しかし、儲かるかどうか、と、サイエンスとしてレベルが高いか、は全く別の独立した評価基準ですので、儲かるし、サイエンスとしてもレベルが高い発明(例えば、山中伸弥教授のiPS細胞の発明は年間数億円のライセンス収入を生み出しています。ノーベル賞を受賞したモノクローナル抗体やMRIも数十~数百億円のライセンス収入を生み出しました)もありますし、ノーベル賞になるような高度な発見でも全く儲からないものもあります(素粒子の発見など)。もともと発見は特許にはなりませんが。

儲かる発明はどういうものか、は新製品開発みたいなものなので、結局は飲料等では市場に出してみないと売れるかどうか、わからない面が大きいです。飲料開発では、千三つまり、1000の新製品が出た場合、翌年まで残るのは3商品程度と言われています。

商品コンセプトが時代に合っている必要もあり、製品化のタイミングが早すぎても、遅すぎてもヒットしないこともあります。逆に、それほど大した技術でなくても、公告宣伝や営業マンの力で売れることもあります。鉄骨飲料等は、ネーミングと宣伝で大ヒットしたと思われます。

しかし、電化製品等ではこれができたら必ず市場がある、というものがあると思います。例えば太陽光発電装置で、今よりも2倍効率アップすれば確実に市場があるでしょう。そこまで行かなくても数割アップでも市場はあると思われます。コスト的にも問題がない方法であることが前提ですが。

あるいは、空飛ぶ自動車、事務員レベルで仕事をやってくれるロボットなどなら必ず需要はあると思います。

ですから、これができれば確実に売れる、というテーマで発明を考えるのも一つのやり方でしょう。例えば、ガンが治る、ハゲの人がふさふさになる、不老不死になる、若返る、老化防止などそういうテーマはいくらでも思い付きます。ただし、これらは非常に難しいと思われます。

私が思うには、儲かる発明と、サイエンスとして優れているかどうかは関係ない、ということです。むしろ科学的に見て当たり前のようなつまらない発明の方が巨大な市場を獲得するケースを見てきました。要は、より多くの人がその発明に価値を感じて欲しがるかどうか、ではないかと思います。

ですから、サイエンスとしてのレベルの高度さは儲かるかどうかとは全く相関関係はないと思います。初心者はまずは、儲かるかどうか、売れるかどうか、の視点から考えて発明をするのがよいです。

では、どうすれば、儲かる発明ができるか?ですが、それにはブレークスルーを起こす必要があります。そういう発明をしてノーベル賞を受賞した、田中耕一さん、白川英樹さんらは失敗というか試薬の量を間違えてうまく行っています。

しかし田中耕一さんの発明は時代的に早すぎて儲かる発明にはなりませんでした。島津製作所は当時は3年で実用化できないプロジェクトは止める、という方針だったので、10年後に実用化できるような画期的な発明は捨てられていたようです。

昨年ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授の場合も、24個の遺伝子全部を入れるという生物学者では決して考え付かないことを他の分野(工学部)から来た大学院生(高橋和利現京大講師)がやって成功しました。田中耕一さんや、山中伸弥先生の場合は、異分野の人がやったので成功した、と言う面があるように思います。その分野では非常識で不可能と思われていることをやったら成功したわけです。

シャープの液晶開発チームも一晩放置した液晶を使ったらうまく行ったという話があります。

そういう意味から言えば、どんどん早く失敗をすることが儲かる発明につながるようにも思えます。儲かる発明には、マーケティング的な面もあるので、発明をしながら試作品を市場に出して反応を見ながら改良していくことが売れる製品を出す一つのやり方です。リーンスタートアップとして最近注目を浴びている方法です。

つまり、最初からいい発明をする、というのではなく、発明をしたら、もう一度見直して改善してから市場に出してみて、購入者からのフィードバックをもらい、改善を繰り返して行くことでいい発明、つまり売れる製品になっていくように思います。このやり方はシリコンバレーで始まり、リーンスタートアップという名前で知られています。

リーンスタートアップと特許出願のタイミングをどうするか?は難しいかも知れません。最初に基本特許が取れればいいですが、フィードバックを受けてどんどん改良を加えていくと、最初の特許の範囲からずれてしまうケースもあり得ます。

優れた技術を開発しても、最初の試作品が売れず、改良版ではその特許を使用しない可能性も出てきますから。しかし、強固な特許壁を築いて他社の参入を防止する、という意味から言えばそういう特許も含め、どんどん改良特許も出願するという選択肢もあるようにも思います。また、基本技術の発明であれば、どの製品にも使用するでしょうし、他社にライセンスできる可能性もありますから、迷わず特許出願すべきと思います。

まとめると、いい発明とはいい製品(売れるヒット商品)になる必要があり、これには、マーケティングも絡んできます。製品が売れるかどうかは、最終的には市場に出してみなければ分かりません。そういう意味では商品開発はバクチのようなものです。

そして売り方を変えるだけでヒット商品になる場合もあり得ます。技術がいいからといって、ヒット商品になるとは限りません。ネーミング、宣伝広告も非常に重要です。

これら全てがうまく行ってはじめていい発明と言えるように思います。

大平国際特許事務所では、発明相談や、発明コンサルティング、発明コーチングなども行っております。発明コンサルティングやコーチングを受けることで、発明やアイデアを出しやすくなります。また、売れる発明をどのように作ればいいかもわかります。

ご興味のある方は以下からお気軽にご相談下さい。

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大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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