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発明者の思い込みと現実

特許出願の相談を受ける場合、非常に楽観的な人もいれば非常に悲観的な人もいます。

悲観的な人は、「本当にこれは特許になりますか?」と何度も聞いてきます。しかし、以前も何度か書いたように、世界中の文献や製品を調べないと確実に特許になるとは言えないので、確実なことは言えません。日本特許を調べて、その範囲では先行特許出願はない、と言えるだけです。海外の古文書(インドのアーユルベーダなど)までは調査できませんから。

それとは逆に非常に楽観的で、この特許が取れたら億万長者になれる、と信じている人もときどきいます。率的にはそれほど多くはないですが。

しかし、楽観的な人は、ビジネスモデルや参入障壁をあまり厳しく考えてない場合も多いです。

このあたりの考え方ですが、「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」という本に出ている、「ストックデールの逆説」という考え方が役に立つと思います。

これは、ベトナム戦争で捕虜になったとき、楽観的だった兵隊は帰国できるチャンスがどんどん先に延びると落胆して次々と死んで行ったそうです。復活祭には帰れる、イースターには帰れる、と楽観的な見方をしていたのに、それが叶わないととても落胆して死んで行きました。

ストックデール将軍は、いずれ帰国できる、という楽観的な見通しだけでなく、厳しい現実を直視する現実的な考えも持っていました。最悪のケースも想定して心の準備をしていました。ですから、春には帰国できる、と思っていても、それが秋に延び、翌年に延びても耐えられたといいます。

つまり、楽観的な考えは必要ですが、厳しい現実を直視する悲観的な発想も必要です。その両面を持っていれば、発明をして特許出願しても改善を繰り返して実用化につなげられると思います。

つまり、楽観的だけでも、悲観的だけでもなく、その両方を持つことで、発明者として成功しやすくなるのではないかと思います。

これは、発明に限らず、ビジネスや資格試験などでも同じでしょう。インテルのアンディ・グローブは、パラノイアだけが生き残る、と悲観主義者だけが生き残る、と言いました。こういう極端な用心深さでも成功はできますが、明るい未来を想像することも必要です。

エジソンは、発明アイデアが出たら、その発明アイデアがどんな社会を実現できるか?について10ページくらい書いていました。こうした未来のビジョンが発明の実用化に役立つと思われます。

目標は楽観的に、計画は悲観的に、という考えもあります。目標は楽観的に大きく立て、実際の実行計画はトラブルも見越して問題が起きたときの対処法も準備しておく、ということと思います。

棒ほど願って針ほど叶う、とも言われます。発明者は途方もなく大きな夢を抱くことも多いと思います。そして、それを実現する発明をするわけですが、最初のアイデアが出てから製品が売れて大きな収益が得られるまでには、多くの問題が起こりえます。

そういう意味で、素晴らしいアイデアが出た、特許を取ろう、というのはいいのですが、すぐに製品化して大儲けできることはむしろ少ないと思われます。そういう意味で、アイデアマンであるほど、実用化までには様々な壁があることを想定して、製品化まで粘り強く開発して欲しいと思います。

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ライター紹介 ライター一覧

大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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