特許出願戦略立案と特許調査
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以前、経済産業省(経産省)関係の予算で、ある国立大学の特許出願戦略構築のために特許調査と出願戦略を立案したことがあります。弁理士会のプロジェクトチームで行いました。
それは医療機器の分野の発明で、神経の働きを見ることができる物質の発明をどう出願するか?というテーマでした。
そしてそれに関連する外国製の装置で日本で大量に売れているイメージング装置があり、その特許成立の過程も調査しました。特許出願の包袋を見て、どう拒絶理由に対応すれば広い特許が取れるかを調査しました。
すると、最初の日本の明細書には1ページも書いていないけど、その後アメリカで大量に特許出願していて、米国で実用化されていることを根拠に少ない記載から請求項を起こして、最初の発明とは全く異なる発明をうまく権利化していました。
海外からの特許の審査は緩いのか、こうした事例がかなりあります。これは、特許出願をしておいて、製品を発売しても、類似の商品を発売するところがあるので、その商品が権利範囲に入るように分割出願して権利化する戦略です。
理論的には、明細書および図面に記載している事項の範囲内で分割出願が可能なのですが、技術常識も記載されているに等しい事項として取り扱われることから、論文などに記載されている技術常識も記載されているともいえ、そういう意味で、僅か半ページしか記載がなくてもそこから分割出願してライバル製品をカバーする特許権が取れる場合もあるわけです。
ですから、特許調査をして、何とか侵害しない製品を開発して販売しても、その後、分割出願で侵害になってしまう、という開発者泣かせのケースです。しかし、特許権者にとっては、特許網に穴があっては他者が参入するので、後からであってもその穴を埋めたいわけです。それにより、その事業を独占できます。
そういう意味では、最初から穴を無くするように権利化するとともに、明細書も将来のバリエーションが出てきた際に、そのバリエーションに合わせて分割出願して、そのバリエーションも権利範囲に入るようにできるような明細書を書くべきです。これは最近の事例ではオブジーボでも同様の戦略が取られています。
上のイメージング装置は1台数千万円もするにもかかわらず、1つの学部に何台か入っているということで相当大量に売れているようでした。ガンの増殖等も外部から見える装置です。
その際は、その分野の特許出願、特許を網羅的に調べ、どういう形で特許出願すれば最も効果的に実用化できるか?について事業戦略まで含めてアドバイスをしました。
その大学から要求されたのは、アライアンス先まで提案してくれ、ということだったのですが、さすがにそこまでは難しかったです。
とはいえ、私の元同僚には特許流通アドバイザーがいて、製薬企業出身者もいますから、そういうアドバイスもできたかも知れませんでしたが、その際は弁理士会のプロジェクトチームだったので、そこまではできませんでした。
いずれにしても、単に特許出願を言われたままやる、というのではなく、事業化を見据えて、事業戦略も含めて提案できるようになれば特許出願の価値がより大きくなることは間違いありません。その事業に使用するなら、こういう特許を取る必要がある、というような研究開発戦略、特許網(特許壁)構築戦略まで含めて弁理士がアドバイスするのもよいと思います。
また、こういう発明はノウハウとして秘密にし、こういう発明は積極的に出願し、こういう特許は広く安目にライセンスした方が利益を最大化できる、等の戦略もあります。自社しかできないノウハウを含む発明は、状況にもよりますが、特許を出さない方が有利な場合もあり得ます。そういう場合は、公証人役場で先使用権を立証できるようにした上で、秘密に保持するのも一つのやり方です。
技術標準化戦略もありますから、どのようにして自社開発の技術をデフォルトの技術標準化するか、も重要です。特に世界で技術標準とするには、ある程度のノウハウが必要です。
もちろん、その分コンサルティング費用もかかりますが、費用以上の効果があればその方が会社にとってもよいはずです。安く出願して拒絶されたり、権利が狭くて使い物にならないよりは、高くても、事業全体を守れる広くて強い特許を取る方が最終的には利益を最大化できるはずです。
大平国際特許事務所では、経営戦略、事業戦略、戦略マーケティングも得意で、ライセンス、契約交渉も得意です。つまり、特許出願だけでなく、その前後もフォローすることができます。戦略コンサルティングも得意です。
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