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基本特許と周辺特許(利用特許、改良特許)出願

外国の出願、特に米国の特許出願明細書には非常に広い範囲をカバーする大概念が書かれている場合があります。例えば、昔のゼロックスの複写機(コピー機)のように、複写機なら全部含まれるような広い特許です。

最近では、iPS細胞特許もある意味で基本特許と言えるでしょうが、構成が4遺伝子を含むので、本当の意味での基本特許とまでは言えないと思います。基本特許と言えるためには、遺伝子を導入することで細胞を初期化する方法、のような基本概念のみで記載する必要があると思っています。こうした非常に広い請求項はまず日本では特許にはならない、と思っていた方がよいですが。

このような基本的な概念を押さえる特許を基本特許と言います。例えば、複写機がそれまで無かったら、複写機、という基本特許が取れます。車が無かったら、自動車、飛行機が初めてなら飛行機というように非常に広い範囲の特許が取れる場合があります。

MRIとか、モノクローナル抗体、遺伝子組換え、PCR等の特許なども基本発明です。

そうした新しい世界を拓くような発明は、かつては欧米に多く、日本人はそれを取り入れて(マネして、利用して)、それを改良して、追いつけ追い越せ、と高品質で安い製品を製造して経済的に成功しました。それで高度成長期に入り、1980年代には米国を追い越し、ジャパンアズNo1とまで言われました。

しかし、1985年に米国ではヤングレポートが出され、プロパテント政策を取るようになり、プラザ合意で円高に誘導され、バブル崩壊もあって、日本の高度成長時代は終わりました。代わって台頭したのが中国や韓国でした。

かつて世界の工場として経済成長していた日本は、世界の工場の地位を中国、韓国、台湾、東南アジアなどに奪われ、安く高品質なものを作るだけでは輸出で稼ぐことが難しくなり、日本経済が停滞するようになりました。

ともかく、バブルの頃までは、外国の基本特許に対抗して、周辺特許、利用特許を大量に取って、基本特許を持っている特許権者が身動きできないようにしてクロスライセンスに持ち込む、という戦略が一般的でした。

基本特許を取る基礎研究は企業の中ではバブルの頃は優秀な人材が基礎研究所に配属されたりしましたが、バブルがはじけてからは実用化研究の方にシフトし、企業の基礎研究はあまり発展しませんでした。これには日本で基本特許が成立しにくいことも関係しているのではないかと思います。

それに加えて日本では、あまりに広い基本発明は特許になりにくい面があります。それは、日本の特許庁はサポート要件が厳しいからです。日米欧の中で記載要件が一番厳しいのが日本です。その1つの原因は、日本のサポート要件は、課題を解決できることが理解できるように書く必要があります。

しかしながら、全く新しい発明、例えば、iPS細胞の発明の場合、何が課題であるかは、ある程度研究が進まないと分かりません。全く何もない世界を切り開いた場合には、何が問題かを予想することは難しいです。応用研究が進んで初めてどういう問題があるかわかってくるわけです。

そして、日本の審査官は、ある一定のパターンに当てはめて審査をしようとしていたので、そうしたパイオニア発明、前例のない発明の審査は苦手でした。一定のパターンに当てはめて審査をしていたので、そのパターンに当てはまらない発明は審査する方も苦し紛れだったようです。

日本の場合はサポート要件が厳しいので上記のような大概念は特許にならないので、元々日本の特許出願にはそういうものすごく広い権利を取ろうとして明細書を書くことは少ないです。弁理士も海外に出願することが決まっている場合は、海外向けにいろんなクレームが書けるように工夫はしますが、そうでない場合は、日本の審査を考えて明細書を書きます。

しかしながら、米国の特許出願の記載要件は、その発明の所有者であることがわかるように書けばよいので、日本のように、課題を解決できる、という形で書く必要はありません。

そもそも、パイオニア発明である基本発明の場合は、将来あり得る全ての課題を考えて、その解決策を書けるわけがありません。初めての世界を拓くのですから、何ができて、何ができないか、どんな障害が待ち受けているか、ほとんど全くわかりません。

そういう意味では日本の特許の審査基準のサポート要件は改良発明、周辺発明の保護を主に作られていて、世界を変えるような画期的なパイオニア発明の保護は弱いように思います。

しかし、過去の製造国(世界の工場)としてのビジネスモデルはもはや日本では成立せず、中国、韓国、台湾、東南アジア等が世界の製造工場の役割を担っています。人件費競争ではこれらの国には太刀打ちできません。

これまでは、欧米で開発した製品をいかに安く、高品質に作れるか?というフォロワー的な発想でしたが、これからは、何を開発するか、日本人自らが決定し、発明していく必要があります。つまり、世界の先頭走者、フロントランナー型の産業を創造し、増やしていく必要があります。

頭脳で勝つしかないとすれば、日本も欧米と四つに組んでパイオニア発明で戦えるようにならなければならないと思います。

日本は製造業でかつては世界1になったのだから、発明や特許出願の世界でも世界1になれるはずです。マイクロソフト、アップル、グーグル、フェイスブックに匹敵するような画期的な発明が日本人にもできないはずがありません。

日本人は今後は発明を主な製品として世界と競争すべきと思われます。製造は、中国、台湾や東南アジアに委託すればよいですから。

そのためには、従来は日本国内市場を中心に考えて開発していたとしても、今後は最初から世界市場を考慮して研究開発、マーケティングを行う必要があります。

台湾などは最初から世界市場を狙って製品開発をしていますから、日本にできないわけがありません。意識の問題だと思われます。

文字通り世界を変える発明を日本から出したいものです。大平国際特許事務所ではそのようなお手伝いもさせて頂いています。

大平国際特許事務所へのお問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ

 

 

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ライター紹介 ライター一覧

大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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