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進歩性の低い特許出願

ある関西の研究所に出張して発明をヒアリングしてきました。

新しくてきれいな建物でうらやましい位でした。

最近は大学でもベンチャー向けに新しい建物を建てているところもありますが、それを思い出しました。

そこでも少し話したのですが、例えば、公知の遺伝子を公知の方法で導入した形質転換動物について特許出願した場合、進歩性がない、という拒絶理由が来ます。処理する動物自体も知られていて、導入する遺伝子も知られていて、導入方法も公知の方法であれば、通常は誰でも容易に思いつくからです。

その場合に、反論するには、その組み合わせ(構成自体)は通常の当業者(専門家)は思いつかない、組み合わせを考えることに障害となる理由(論文等)がある、その組み合わせには予想外の効果がある、等の進歩性があることを主張する必要があります。

例えば、特殊な目的の場合に予想以上に高い効果がある、とか、ある条件では予期しなかった効果があったなど、効果を主張することによっても進歩性を主張できます。

そういう意味では、予想外の効果がある範囲を確定できるように実験を組むのも一つのやり方です。つまり、効果を測定し、予想外の効果がある部分をきちんとデータを取ります。この場合、上昇中、あるいは、下降中の範囲までしかデータを取らない人もいますが、これは困ったものです。上昇中であれば、その途中で権利化しても、他の人がもっと上の部分で実施してもっといい効果が出たりするからです。

そういう意味で、上昇中、下降中なら、もっと先までデータを取って、ピークがわかるように取る必要があります。そうしておけばその効果のある範囲に限定することで進歩性が認められるケースがあります。

他にも、ちょっとした効果や工夫で特許出願の進歩性が認められるケースもありますから進歩性でお悩みの方はお気軽にご相談下さい。

既に特許申請済みの出願に対して進歩性がない、という拒絶理由が来た場合は、意見書だけでは拒絶理由が解消できない場合もあり得ます。

その場合には、上述のように数値範囲を補正することにより、顕著な効果がある部分のみに限定できるのであれば、そのような顕著な効果がある範囲に限定する補正をすることも有効な場合があります。

あるいは、付加的な要素が明細書中に記載してあれば、その付加要素を追加して、先行文献に対して進歩性が出るようにすることもできることがあります。その付加要素を追加することを当業者が思い付かない、あるいは、それを付加することで非常に効果が高くなったり、予想外の効果が出たりする場合です。

ただし、付加要素を追加すればそれだけ権利範囲としては狭くなります。すると他社がその権利をすり抜ける(エスケープ)のも容易になります。

つまり、補正して限定することで特許になりやすくなるのですが、それだけ権利が狭くなり、他社への抑止力は低くなる、というわけです。

ですから、補正する場合に一番いいのは、構成要件を追加したように見えて実質的には何も権利としては狭くなっていない、という補正だと思います。そういう補正も知恵を絞れば可能です。大平国際特許事務所でもそういう補正を考えるのが得意です。

つまり、補正する場合に、その要素を追加したために、他社が容易にエスケープできるような権利になるのでは、権利化する意味が少なくなってしまいます。

特に、自社実施する場合であれば、まだ、いいですが、ライセンスする場合には、エスケープ可能な権利だと相手先もライセンスを受けずに特許権をエスケープして実施してしまいますから、ライセンスは難しいです。

ただ、現実には、進歩性が低い発明だけど、権利化したい、あるいは、広い権利を取りたい、というご要望はかなり多いです。

個人発明家の方で、発明を特許申請するのが初めて、という方の場合は、ご自身ではすごい発明をした、と信じているのですが、非常によく似た先行技術があったりします。

そういう場合は、さらにその発明を改善してより優れた発明にして出願することをお勧めすることもあるのですが、多くの発明家の方はそれをされません。どうしていいかわからないのかも知れません。

しかし、発明は改良の連続、ともいえます。

どんなに素晴らしい発明をしても、どんどん改良発明が出てきます。企業にとっては改善は日常活動です。

パソコンにしても、iPhoneにしてもどんどん新製品が発売され、性能も上がっています。そしてそれらには発明が張り付いています。権利化されているかどうかは別として。

ですから、発明家にとって、改良発明をするのは日常的なルーチンワークであるべきです。

改善するためには、どうすればもっといい発明になるか?もっと便利になるか?使いやすくなるか?を考え続ければいいだけです。

そうした知恵を出すために考えることで頭が活性化しますし、高齢者の場合はボケ防止にもなります。

難しい問題を解決するほど、面白いものです。問題集でもそうですが、難問程解くのが面白い、とも言えます。ゴルフでもあんな小さな玉を小さな穴に入れるという難しさがあるからこそ面白いとも言えます。もし、ホールが大きな穴で誰でも簡単に入れられるようなスポーツであれば誰もやる気にならないでしょう。

野球でも打てば必ずホームランばかり、というのでは面白くも何ともないでしょう。

発明も同じです。難しい課題を解決するほど面白いです。発明を完成してもそれで終わりにせず、常に改善点を見つけ、改良発明をし続けるつもりで知恵を出されるとよいと思います。実際、完璧な発明などありませんから。

弁理士の仕事も難しい拒絶理由とか、異議申立事件とかの方がやっていて面白いと感じます。簡単に反論できる拒絶理由に応答してすぐに特許になっても当たり前過ぎて単なる事務作業のようなものです。

しかし、相手が必死になって特許を潰そうと異議申立をしてきた分厚い異議申立書を読み、取消理由に反論するのは、弁理士の仕事の醍醐味ともいえます。

また、大平国際特許事務所では、進歩性の拒絶理由についてはどんなに難しい拒絶理由でも対応できる自信があります(新規性、記載要件も大抵は何とかなりますが、希にどうしようもないこともあります)。

もし、他の特許事務所でこれは難しいから諦めた方がいい、と言われて諦めている案件があれば、ぜひ大平国際特許事務所にご相談下さい。

きっと、「えっ?あれが特許になったの?」と驚かれると思います。

難しい拒絶理由にお悩みの方はぜひご相談下さい。

お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ

 

 

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大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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