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アイデアのみの段階での特許出願依頼と国内優先権主張出願

これから取引先に売り込むので、とりあえずアイデアだけで特許出願しておきたい、というケースはかなりあります。

これは、商品の内覧会のような形式で、一般消費者ではなく、問屋さんや販売代理店さんの集まりに新製品を説明するような場合です。

この場合、問屋さんと言っても、守秘義務がなければ、一般に公開したことになるので、その新製品(発明品)の新規性は失われます。そして通常、秘密保持契約をしないことの方が多いと思われます。

日本とアメリカ(他に韓国、カナダなど)だけで製造販売するのであれば、新規性喪失の例外規定(日本特許法第30条、米国ではgrace period)の適用期間内に必要な手続をして出願すれば、新規性を喪失しなかったものと扱われますのでグレースピリオドのある国では問題は少ないです。

むしろ、販売を開始し、売れ行きを見てから特許出願すればいいので、売れない新製品に無駄な特許を出願する費用が節約できるというメリットもあります。

しかし、欧州でも独占販売したい場合は、欧州特許庁は絶対新規性、つまり、グレースピリオドを博覧会を除いて一切認めないので、欧州でも特許を取得する必要がある場合は、発表前に必ず特許出願を完了させておく必要があります。これは、販売代理店へのプレゼンであっても同じことです。

つまり、基本的なアイデアだけで出願しておけば、新商品見本を販売代理店にプレゼンしても問題無く全世界で特許を取得することが可能になります。

また、取引先と共同研究開発の打ち合わせをする前に、自社の持つアイデアを明確にしておきたい、アイデアのコンタミを防止したい、という場合もあります。これをやっておかないと、どれがどちらの会社から出たアイデアがわからなくなり、共同出願の持ち分等で不利になる場合があり得ます。ただ、この場合は、開発中はお互い秘密に保持するので問題は少ないです。

それらの場合は、とりあえずおおまかなアイデアを押さえる目的で、特許出願することになります。共同開発の場合は、必ずしも特許性がなくても大丈夫です。プレゼン目的の場合は、アイデアであっても、特許性のある請求項と明細書の記載が必要です。つまり、実施可能要件、サポート要件という明細書の記載要件を満たす必要があります。

そして、出願後に取引先と話し合い、改善しながら発明の細部を詰めて様々な工夫を加えて行き、発明を完成させていくやり方です。

こうした場合、通常は、とりあえずアイデアのみで特許出願しておいて、その後、国内優先権主張出願をしてデータと実施形態、請求項等を追加していくことになります。

ところが、日本の特許法の場合、請求項にかかる発明に関係するデータや実施形態を国内優先権主張出願で追加すると、その請求項に関しては優先権主張しているにも関わらず、後の出願日が新規性、進歩性等の基準日になってしまいます。

そうすると、守秘義務のない取引先に話した段階でアイデアは公知になってしまい、特許要件の基準日が後の出願日とすると、データを追加した請求項については特許が取れない場合が出てきます。

そのあたりも十分考慮して特許出願戦略を練る必要があります。

つまり、アイデアから商品化のどの段階で特許出願するか、については、やはり、発明が完成したらできるだけ早く出願すべきです。

しなしながら、どうしても完成前にアイデアだけで出願する必要がある場合は、後のデータ追加により、優先権が認められなくなる可能性も考慮して、請求項を複数作る等の対策が必要でしょう。

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ライター紹介 ライター一覧

大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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