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試験研究と特許権侵害

先日ある学生が、企業でも研究に使用する場合は、特許は自由に使っていい、と聞いたが、本当か?という質問をして来ました。結論から言えば間違いで、研究用途の場合でも一定の目的以外の使用は特許権の侵害に該当する場合があります。

一定の目的とは、特許性調査、機能性調査、実施可能性調査の3つですが、これについては別の記事で詳しく述べます。

一般に、大学や企業等で試薬を試薬屋さん(代理店)から正規に買って使う場合は、そのライセンス料も価格に含まれていますから、特許権は消尽しており、自由に使えます。

ただし、例えば、プラスミドベクターとかGFP等の遺伝子(DNAなど)を購入すれば、特許や特許出願に関するライセンス契約が附属してくるので、それに署名すれば購入することができ、それらの遺伝子やベクターを使う際には、その契約に従って使用する限り何の問題もありません。

ただ、第三者に渡してはいけない、と通常は書かれています。この場合に、同じ教授や准教授などの教官の指導の下にチームで使用する場合は第三者にはあたらないと考えますが、他の研究室に渡すのは厳密に言えば契約違反と思います。

例え、別の遺伝子をクローニングして新しいプラスミドベクターに作り直したとしても、元のベクターが含まれている限り厳密に言えば第三者に譲渡したら侵害になります。

さらに、もし、特許権に係るGFPを他所の研究所や大学からもらって使用する場合は、厳密に言えば侵害となり得ます。

もっとも、試薬メーカーや代理店が、お得意様である大学や国立の研究所を訴えることは現実には考えられませんが。

しかし、企業相手となると事情は変わってきます。

昔、企業でGFP遺伝子を使用して研究開発をする場合、そのライセンス料は日本で年間2000万円~6000万円という時期がありました。日本国内の1箇所の研究所だけで使用する場合に、2000万円、日本全国の全ての研究所で使用する場合は6000万円ということでした。

それが高額なので、GFPを使用する研究を断念した大企業もあったほどです。

他にもロンザのタンパク質合成システムはアカデミアでも100万円とか、もっと高額のものでは、100億円のライセンス料のものも実際あると日本のトップクラスの製薬企業の方から聞いたこともあります。

さらには、1000億円を海外のベンチャー企業に取られた会社も実際にあったようです。これは侵害とかそういうのではなくて、ライセンスインと思われますが。

そういう意味では、企業が研究に、特許にかかる製品や方法を使用する場合は正規にライセンスを受ける必要があります。でなければ見つかった場合に高額の損害賠償金を請求されるおそれがありえます。

ですから、試験研究に使用するからと言って侵害にはならない、とは安易に考えず、きちんと契約書を読む必要があります。研究者であっても、法律問題は避けては通れないと思います。

このあたりは米国の研究者は非常にきちんとしています。契約書もしっかり読んでからサインします。日本の研究者は読まずにサインするケースも多いですが。

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大平 和幸

弁理士、農学博士、特定侵害訴訟付記弁理士。東京大学大学院(修士課程)修了。修了後、大手洋酒食品メーカーでバイオテクノロジーの研究開発に約18年従事。その後特許情報部(知的財産部)、奈良先端科学技術大学院大学特任教授。特許流通アドバイザー。大平国際特許事務所所長。弁理士会バイオライフサイエンス委員会副委員長。iPS細胞特許コンサルタント。食品、医薬品、化粧品、バイオ等の化学分野が得意。機械、装置、ソフトウエア等の出願実績あり。

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