知財部(特許部)のパラダムシフトとプロフィットセンター化

知財管理を読んでいたら、知財部のパラダイム・シフト、という記事がありました。2014年にも同じタイトルの記事があり、続編のようです。

内容的には、知財部が出願、中間処理(拒絶理由対応)、審判、訴訟、ライセンス交渉、ライセンス契約等の知財コア業務に加えて、M&A(企業買収)のデュー・デリジェンス、購買契約、開発戦略など、従来、知財では扱わなかったようなことも知財部がやるようになる、というような話でした。

このような話は当所のクライアント様の企業知財部でもときどき聞きます。むしろ、M&A業務が忙しすぎて、発明発掘まで手が回らないほど忙しい企業もあるようです。M&Aのデューデリジェンスは弁護士でもチームで何ヶ月も泊まり込みでやるという話もあるくらい大変な仕事です。弁理士が担当するのはその中の知財評価がメインになるでしょうが。

と、言っても、知財デューデリジェンスを知財部がやるのは当たり前ですし、購買契約でも知財が関係していれば知財部が本来関与すべきものです。開発戦略については、本当は知財部が最初から入っておいた方がよいのですが、企画部等が部外者が参加するのを嫌うケースもあります。

過去にこっそり処理した失敗などを知られたくないのかも知れません。

開発戦略に知財部が積極的にかかわるのはでしゃばりすぎ、という説もありますが、それは当人の能力とやる気次第ではないかと思います。

研究者よりもよく知っているなら、研究者よりもいい開発計画が立てられるかも知れません。また、特許調査をすることで、特許バキュームを見つけ、そこに研究資源を投入して、他社に対する競争優位性を構築することができるかも知れません。

そういう意味では、知財部員(特許部員)が開発計画に積極的に加わるのも面白いと思います。もちろん、よくわからず、足を引っ張るだけしかできないなら、やらない方がよいですが。

昔の知財部は、研究者の落ちこぼれが飛ばされるおじ捨て山とか最後の楽園(ラストリゾート)などと言われていたものです。研究者として使い物にならない、と見捨てられた人、営業で体を壊した人、他のポストが空いてないからポスト待ちで来た人などが知財部のメンバーでした。

そういうレベルの人は元々やる気も少なく、嫌で仕方ない特許部に飛ばされた被害者意識の強い人達ではないかと思います。

将来もあまり期待できない部署とも言えます。役員になる特許部長も昔はいませんでした(キャノンなどは別ですが)。

私が弁理士試験に合格して、特許部に異動したら、特許部を希望して入ってきたのは君が初めてだよ、とあきれられていました。それほど昔は特許部は人気のないところでした。そして弁理士は皆大嫌いなんだよ、という人もいました。一説にはそういう人は弁理士試験に落ち続けていたので大嫌いになったそうです。

実際、知財の仕事は非常に細かく面倒で、覚えることが非常に多く、しかも、各国の法律もどんどん変わっていくし、先進国も判例が出れば実務ががらりと変わったりします。

そしに、元研究者だった人は自分が主役だったのに、今後は、他の人の研究を特許化するという、いわば、脇役に落とされたわけですからやる気がなくなるに決まってます。

そんな人がどんどん仕事を拡大して、会社に貢献しようとはあまり考えないでしょう。

それに、昔の特許部は結構暇だったようです。研究者から発明届出書が出てきたら、それを特許事務所に持って行く言わばメッセンジャーみたいなものでしたから、やることは、明細書の誤字脱字のチェックとか、特許調査程度でした。

特許調査も製品が出るときの実施可否調査(侵害調査)は気合いを入れてやりますが、研究者から、この分野をやっといて、というのは期限もないので、時間ができたときにやればいいということで後回しになります。そして、1年位放置してそのまま消滅、というケースもありました。

そういう意味では昔の特許部は、仕事をしなくていい、本当のラストリゾートでした。

しかし、小泉純一郎首相になって知財戦略本部ができ、知財が注目を浴びるようになると、やる気のある若い人達が自分から知財部を志願して入るようになりました。それまでは、誰も知財部を志望する人はいなかった会社も多かったと思います。

中には、研究者よりも優秀な頭脳を持った人もいるかも知れません。そういう人は研究戦略も立てられると思います。あるレベル以上に優秀な人材であれば、知財部から主体的にこの研究をしたらいい、と助言できると個人的には思います。アインシュタインは特許庁審査官でノーベル賞を取ったわけですから、特許の仕事をしていても、ノーベル賞クラスの理論的な発見は可能です。

そういう意味で、知財部から研究テーマを提案して、他社の特許網(特許壁)を破る特許網を構築することも可能ではないかと思われます。つまり、知財部員が研究の源流に入る、というよりも、源流を創る、ということです。

これは、弁理士にも可能な人材もいると思われます。その分野で何十年間の研究開発経験があれば、大学の教授や助教授に匹敵する知識を持つ弁理士もいたりしますから。

つまり、知財部からテーマを提案し、研究者と一緒になって発明を作り、鉄壁の特許網(壁)を作り上げるような活動をしてもいいのではないでしょうか?そのためには、知財部員が研究所に常駐し、研究者と机を並べて、いつも研究者と議論をしながら発明を特許化していくのがいいと思います。

以前はマーケティング部が社内のハブと言われ、全部署とかかわりのある中心的な役割を果たしていました。今でもそうだと思いますが。

もしかしたら、知財部もそうした社内のハブ的な役割を果たすようになるかも知れません。全ての部署の情報が知財部を通るようになれば、知財戦略が全ての部署で一貫性をもって構築でき、実行できます。

とはいえ、法務部もあるとすれば、法務の方が一般的な事案を全部手がけ、知財部は知財が絡むことだけを専門的にやる、という住み分けもありえます。

その場合は、法務がハブで知財部はその一部を請け負う、という形になることもあり得るでしょう。

組織構造が明確に定義され、権限と責任が明確化されている場合はそれに従えばよいですが、それがない場合は、知財部員も可能な範囲でどんどん活動範囲を広げて行くのも一つの考えでしょう。

そうすることで、知財部が全社的に認知され、知財部の地位も上がると思われます。もちろん、それにより注目度も上がりますから、よりレベルの高い仕事をするとともに、プロフィットセンターになることも求められると思います。

活動範囲を拡げながら、プロフィットセンター化は可能でしょうか?

私が以前やったことに、あるノベルティの特許調査がありました。計画していたノベルティがちょっと侵害リスクがあったのですが、その調査の過程で出願だけして、権利化していない特許出願(審査請求していない出願や拒絶査定が確定した出願等)の中にノベルティとして使えるものがありました。

その出願は公知であり、しかも特許になっておらず、さらに他に特許も成立していませんでしたから、自由に使えることが保証されているものです。そこで、事業部としては、出願して特許になっていないやり方をキャンペーンに採用することにしました。

これなら他社の特許を侵害するリスクが無く、絶対に安全だからです。実際、どこからも何も言ってきませんでした。

それにより、安心してノベルティを拡販することができ、キャンペーンもそれなりの成功を収めました。こういうのも知財のプロフィットセンターとしての役割ではないかと思います。つまり、売上アップに直接関与できるわけですから。

ただし、その後他社も同様のキャンペーンをしてきましたが、当然、止めることはできませんでした。先行者利益が得られたのと、どの程度効果があるかがわかったのが収穫でした。

あるいは契約交渉で自社に有利な条件で契約する、というのもプロフィットを生む行為とも言えます。例えば、ライセンス料率の交渉で、相手が3%と言っているのを交渉で5%+イニシャル・フィーでライセンスアウトできれば、直接会社の利益が増えます。

または、特許無効審判や訴訟で勝てば、相手の特許を無効にできるので、自社の事業を拡大できますし、逆に相手から起こされた無効審判で勝てば自社の特許を維持できるので、独占の利益を継続して得ることができます。

つまり、知財部としては、やるべきことをきちんと高いレベルでやれればプロフィットセンター化は十分可能と思われます。そのためには高度な仕事をすればいいだけです。しかも、自分でやる必要はありません。腕のいい弁理士を活用すればいいだけです。

大平国際特許事務所では、非常に高い特許登録率を誇っています。ですから、どうしても特許にしたい場合はぜひお問い合わせ下さい。他の特許事務所がさじを投げたようなものでも特許化できる場合もあり得ます。

また、どんなものでも特許にできる、ということは、裏を返せば、どんな特許も無効にできる、といえます。つまり、どうしても潰したい特許があれば、それもお気軽にご相談下さい。

最強の矛(特許化)ともなり、最強の盾(無効化)にもなる実務が大平国際特許事務所では可能です。

大平国際特許事務所へのお問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ