拒絶理由通知の先行文献を読まない弁理士と読み込む弁理士

クライアントと話していたら、ある弁理士は論文を読まず、全部研究者に押し付けてくるので苦労した、と言っていました。

私は先行技術文献はほぼ全体を読むことにしているので非常に驚きました。

それというのも、研究者の目で論文を読んでも、特許性の面からは見ず、研究者の視点で見るので、特許性にどう関係するかはわからないからです。

弁理士であれば、論文を読んでも、この部分は反論に使える、この部分は使えない、というのが瞬時にわかります。

しかし、大学等の研究者が論文を読むと、このデータの取り方は正しくない、これでは証明したとは言えない、というような、細かい矛盾点には気づくのですが、特許性に関与する、新規性、進歩性の概念を十分理解していないために、せっかく論文を精読しても反論が特許的にはピント外れになってしまうことがあります。

もちろん、中には本質をずばりついてくるような優秀な研究者もいますが、それでも、優秀過ぎて逆にずれる、という人もいたりします。

弁理士としては、通常は論文を読んで、しっかりコメントや意見書案を作成すべきでしょう。その際、斜め読みして必要な部分のみしっかり読む、という弁理士も多いです。

大平国際特許事務所では、簡単にクリアできる場合は別として、難しい拒絶理由に対しては徹底的に論文を読み込み、アリの一穴のような、穴を見つけて、そこから拒絶理由を崩していくのが得意です。

ですから、例えば、非常に小さい字で書いてあるほんの一行の記載を見つけることで、通常は特許にならない場合でも、逆転して特許にすることができることがあります。そういう経験を何度もしてきました。

というか、むしろそれに快感を感じていて、いわばやりがいとさえ言えます。

ですので、拒絶理由が難しいと思っても決して諦めず、ぜひ大平国際特許事務所にご相談下さい。多くの場合に突破口が見つかると思います。現状、移管費用をいただいていませんので、お気軽にご相談下さい(ただし、成功報酬は正規料金をいただきます)。

もちろん、このような対応をすると時間がかかり、コストパフォーマンスが悪くなる、という面もありますから、何でもかんでも論文全体を精読する、というわけではありません。キーとなる論文に対して徹底的に読み込む、ということです。

それ以外にも、大平国際特許事務所では、分厚い特許文献を素早く読む方法や、他の技術文献を組み合わせて反論する方法なども得意で、審査官を説得する文章力とあいまって、非常に高い特許査定率を誇っています。

高品質な拒絶理由対応が必要な場合はぜひご相談下さい。

 

米国とドイツの訴訟構造の違い 竹中俊子ワシントン大学教授

米国の特許訴訟と、ドイツの特許訴訟は大きく異なります。

米国の場合は、侵害警告状を送らずに、まずは訴訟を提起します。これは、警告状を出すことで、相手が差止請求権不存在訴訟等の訴訟を起こす利益を持つことになり、相手が有利な裁判所を選んで不存在確認訴訟を起こす可能性があるからです。

そこで、米国では、いきなり訴訟を提起するわけです。そして米国の場合は広範なディスカバリーが認められます。その分費用も高額で時間もかかります。ディスカバリーの平均費用は3億円位だそうです。期間も3年位かかります。その後訴訟になりますが、ディスカバリーでほとんど勝ち負けがわかるので、訴訟に至るのは3~4%です。

これに対し、ドイツの特許訴訟は、まず警告状を送ります。警告状を送っていなかった場合、相手がすぐに認めて訴訟が終結すると裁判費用を請求できなくなるようです。

そして警告状を送った後、訴訟をするわけですが、大体1年間程度で判決が出るようです。訴訟費用も1000万円程度でできます。これは、訴訟費用を敗訴者負担にするからで、もし負ければ3000万円位かかる可能性もあります。

昨年12月に米国では法改正があり、訴状にある程度侵害の事実を書く必要があるようになりました。それまでは、侵害品も侵害されたクレームも特定せずに訴状を提出できたのですが、それを悪用するパテントマフィア等がいたために厳しくなったようです。

このあたりはドイツや日本に近づいてきた、ということも言えると思います。

ドイツでは訴状で侵害を立証する必要があります。そのために日本のインカメラ手続きのような手続があります。しかしながら、これも認められにくい面があるようです。

アメリカのようなディスカバリーがなく、侵害の立証はドイツや日本の方が難しいと思われます。

もっとも、ディスカバリーも以前のように関連するものは全部、というのではなく、訴訟に必要なものだけに限られるようになったそうです。

このディスカバリーですが、米国内だけで使うという約束でやると保護規制がかかって、米国以外の国では使えないのですが、保護を無くさせる申請ができ、それが認められると他の国でも使えます。

ということは、証拠が集めにくいドイツや日本の訴訟をアメリカでも起こせばそこでディスカバリーを使って証拠を集め、それに基づいてドイツや日本でも侵害を立証できることになります。

韓国のボスコ等の訴訟はそのような形で立証されたようです。

そういう意味では、国際的なフォーラムショッピングとして、まずはアメリカで訴訟をして証拠を集めてから他の国で訴訟するのもよいかも知れません。

進歩性が認められる実験データの取り方と明細書の書き方

審査基準が昨年改訂され、進歩性で効果の参酌がかなり弱い書き方になっているように感じました。

異質な効果や同質であっても際立って優れた効果があれば、進歩性の主張に有効なのは変わらないのですが、どうも、改訂により、構成の容易想到性、つまり、発明の構成を当業者が容易に思いつくかどうかの方がより重視されるような印象を持っています。

実際、最近の審査では、予想外の効果を主張する場合、その効果を発揮することが証明されている範囲でなければ進歩性を認めない、という感じの審査官もいます。

確かに、予想外の効果の無い範囲まで進歩性を認めるのは、厳密に言えばおかしいのですが、昔はそこまで厳しくなかったように思います。単に予想外の効果がある、と主張すれば、実施例に限定されずに特許になっていたことがありました。

中国でも同じようなことを言われることがあり、実施例に記載の範囲までしか進歩性(中国では創造性といいます)を認めない、という審判官もいたりします。

このことから言えることとしては、予想外の効果、あるいは、際立って優れた効果を主張して進歩性を認めさせることができるのは、原則、実施例で効果が証明されている範囲である、と考え、実施例の記載を充実させるとともに、実施形態の中でも効果のある範囲をしっかり段階的に書いておくことでしょう。

後から実験データを出して補正するにしても、実施形態に範囲を書いていなければ新規事項の追加として補正が認められないおそれがありますから。

そして、進歩性の拒絶理由はほとんどの場合に来ると考えられることから、この効果の主張を考慮して実験データを取っておくことが非常に重要になります。

それには実験計画法に従って実験を組むのは当然として、効果が出る範囲の境界(臨界点)とその少し外側までしっかりデータを取っておくことでしょう。

ときどきあるのは、右肩上がりのデータで、上がっている途中までしかデータを取っていない場合です。その場合に顕著な効果を主張すると、上昇途中の範囲までしか権利化できませんから、その後のさらに効果の高い部分が権利範囲から外れます。そうすると、簡単にエスケープできる使えない特許権になってしまいます。

そうならないように、データは必ずピークの両側を取り、片方だけをとらないこと、2次元ならマトリックスでデータを取っておくことです。

研究者は、1つのテーマがうまく行くと、その実験は終わったと思って次のテーマを始める傾向があります。しかし、国内優先権主張出願を使えば、最初の出願から1年以内であればデータを追加して出願できます。それまでに、できるだけ、特許化に必要なデータを揃え、強くて広い特許請求の範囲を取れるように明細書を補強すべきです。

このデータさえあれば、事業を守る強い特許権が取れたのに、と後悔しないように、研究者は特許に必要なデータをきちんと取る必要があります。一方で知財部員もそのような教育をしっかりやるべき、と思います。それが知財部員の一つの役割ではないかと思います。