人工知能(AI)が特許出願を審査?

特許庁は来年度(明日からですが)、人工知能(Artificial intelligence)を審査に試用するために7000万円の予算を計上したそうです。

方式審査や、簡単な新規性調査等には使えるかも知れません。

また、先行文献調査を人工知能が行った場合、読むスピードが人間よりもはるかに速いでしょうから、膨大な文献を調査し、より近い先行文献を見つけられる可能性はあると思われます。

そうすると、拒絶理由もより的確なものになるので、特許になったものの信頼性は上がると思われます。

そして私が危惧しているのが、人工知能のディープラーニングと機械学習機能です。これにより、反論に対してさらに反論する知恵がつきますから、全審査のパターンを学習されると、反論してもそれに対してまた反論してくるおそれがあり得ます。

そうなると、中国のように何回も拒絶理由が出て、なかなか特許にならない、ということも起こり得ます。

また、せっかく知恵を絞って考えた論理が1回は使えても、その後からは学習して対応してくるおそれもあり得ます。

そういう意味では、人工知能により審査をするのであれば、反論する側も人工知能を使って知恵を蓄積する必要があるかも知れません。

ただ、知識が膨大にあると、それに対抗することは非常に難しいです。その分野の専門の大学教授と議論して勝てる可能性はまずないでしょう。もし人工知能が大学教授並みの知識と知恵を身につけるとしたら、それに反論して特許にするのは相当難しくなる可能性があります。

人工知能の進化は驚くべきスピードで進んでいます。特許審査が人工知能によりなされるようになる日は思ったよりも早く来るかも知れません。そうなれば、特許庁審査官も少なくて済むようになるでしょう。

食品の用途発明に関する審査基準の改訂

用途発明については、従来、基本、医薬で、一部化粧品も認められていましたが、食品については用途発明は一切認めない、というのがここ2,3年の特許庁の実務でした。

それより前には、食品も剤クレームの形で特許になるケースもあったのですが、2年前あたりから急に厳しくなり一切認めない、食品を含む形になっていれば、カッコ書きで食品を除く、と書くように、と言われていました。

それが、この2016年4月1日から食品の用途発明が特許として認められるようになりました。

全く認めない、から、完全に認める、というのが2年以内のうちに変化したのですから、大変です。

特許事務所としても、これは食品を除かないと特許になりません、と言っておきながら、1年後には、食品の用途発明が認められます、というのは、特許事務所の責任ではないにしても、言いにくい気がします。

審議会の情報をつかんでいた会社等は、こうなることも見越して何とかして審査に係属した状態を続け、これから権利化を目指すところもあるようです。

そういう意味では、特許庁や首相官邸の知財本部の審議会の資料なども見ておく必要がありますね。おそらくバイオ・ライフサイエンス委員会などではある程度情報が出回っていた可能性はありますが。

そういえば、以前、機能性食品の特許出願で、審判請求したものは全く動いていませんでしたが、この審査基準の改訂と関係があるのかも知れません。

いろいろ苦労して、ノウハウを駆使して、何とかして特許にしてきた食品の用途発明関係の特許も、今後は正式に用途発明として普通に特許になるとなると、これまでの苦労は何だったんだ?という思いとともに、これからは食品の用途発明の特許申請がどんどん増えそうだな、という気がします。

折から、内閣府の戦略イノベーションプログラムでも様々な機能性食品の成果が出始めており、これからしばらくは、食品の用途特許の出願ラッシュになるかも知れません。

ただ、審査基準にもあるように、食品そのものは用途限定のない食品と扱われますので、食品の用途発明にはなりません。例えば、頭のよくなるサバ、ダイエット用バナナなどです。食品そのものではなく、何らかの加工をしたものが食品組成物として食品用途発明になります。

大平国際特許事務所所長の大平は元々大手食品会社にいたので食品特許も得意です。お気軽にご相談下さい。24時間受付中です。返信は原則24時間以内を心がけています。

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大平国際特許事務所では、特許化が難しい特許出願の拒絶理由に反論して特許にすることが得意です。例えば、普通に考えたら5%位しか特許になる可能性がないと思われるものでも特許にできる可能性がございます。

健康食品組成物等では権利化が非常に難しい場合がございます。そのような場合も特許にできる可能性がございますのでお気軽にご相談下さい。ベテランの弁理士やクライアント様からも、「えっ、あれが特許になったの?」と驚かれることがしばしばあります。

引用文献の多い拒絶理由通知

審査請求をすると、通常は拒絶理由通知が来ます。その際、先行文献(引用文献)が付いてくるのですが、普通は5報程度が多いです。

しかし、案件によっては、15件位文献が引用される場合もあります。

また、海外の分厚い数百ページもある文献が引用されるケースもあります。そういう分厚い引例ばかりのときも・・・

すると、読むだけで何日もかかってしまうので、全部精読するのはさすがに無理で、必要な部分だけを精読し、他はさらっと読む感じで対応する場合もあります。

分野によっては、この引用文献が非常に分厚くて多い、という分野があり、その場合は、拒絶理由への応答にかなり苦労します。

拒絶理由への応答で一番簡単なのは、請求項を補正により限定(減縮)することです。

引用文献に記載されている部分を全部削除すれば、一応新規性は出ます。虫食いみたいな権利になってしまいますが。

しかしながら、進歩性の場合は、それだけでは足りないので、いかに当業者であっても容易には思いつかないか、というのを説明します。

さらに、有利な効果(予想外の効果、予想の範囲内ではあるが際立って優れた効果など)があれば主張します。

発明の構成自体は容易に思いついたり、動機づけがあったとしても、予想外の効果があれば、それは進歩性があることの重要な証拠として考慮されます。

最近は科学技術関連の文献が幾何級数的に増加しており、1年経てば、それまでの全ての情報を合わせた以上の新たな情報が生み出されている、とも言われています。

特許出願も米国、韓国、中国などは出願数が増加していますから、どこかに何かしら記載があったりします。

そういう意味では構成が全く思いつかない、という発明はどんどん少なくなっていくように思います。

とすれば、予想外の効果(surprising effect)を主張するしかありません。実験でそうした予想外の効果があれば、きちんとデータを取っておいて、進歩性の主張に使えるようにすべきと思います。

また、データの取り方は、当然ですが、ピークから落ちるまで、つまり、例えば、順次増加しているとしてその増加が止まり、下がり始めるまでの範囲で取る必要があります。

増加し続けている途中でデータを取るのを止めてしまうと、もっと上(下)の方にもっといい発明があるのに、その証拠が取れずに権利範囲が十分でなくなるおそれもあるからです。

そういう意味では、必ず臨界的な意義のあるところまでデータを揃えるように最初から実験を計画すべきと思います。

今後はどんどんそうした実施例によるサポートが重要になると思われます。個人発明家としてやる場合でもこれは同じことです。必ず臨界的変化が起きる点までデータを取るようにしましょう。

また、2つ要素があるならマトリックスでデータを取るようにする必要があります。

韓国の単一性違反

韓国出願をすると、日本なら1出願でできるものでも、単一性違反の拒絶理由が来ることがあります。サブコンビネーションのような関係のものでも単一性違反とされたことがあります。

そこで、1つのグループを選択し、残りを分割するとあっさり特許になることもあります。

先日は、分割出願してから数か月で登録査定が来て驚きました。

韓国の場合は、登録査定から3カ月以内に登録料を納付すればいいので、日本よりも時間に余裕があります。

韓国の特許法は日本の特許法に近いですが、制度としては、米国の制度にもかなり近いです。

医薬等はオレンジブックのようなものが韓国にもあります。

グレースピリオドも米国と同じく1年です。

かなり米国の影響下にあることが分かります。米国と同じ制度にするための法改正がよくありますから。

また、韓国では食品の機能性クレームが認められます。また、機能性食品のデータ保護期間もあるそうです。

日本でも食品の用途特許が4月から認められる予定ですが、機能性表示のためのデータの保護期間はまだ定められていないようです。ですから、日本では、特許でうまく保護したうえで機能性食品のデータを取らないと、せっかく高いお金をかけて機能性食品のデータを取っても、他社にも自由に使われるのであまり意味のないことになってしまいます。

各国の制度の応じた最適な戦略によって製品を保護すべきでしょう。

手続きの却下理由通知書

最近、手続の却下理由通知書というのが来て驚きました。

これは、登録実用新案に基づいて特許出願をした際に、登録実用新案抹消申請書というのを提出するのですが、その原簿の住所が違っているということで、抹消申請書に対して却下理由通知が来ました。

出願人については住所変更届は提出しておいたので、勝手に住所も変わるだろうと思っていたら、登録になっているものについては、1件1件「登録名義人の表示変更登録申請書」を提出する必要があるそうで、自動的には変わらないようです。そのために却下になったようです。

住所変更届を提出したら原簿も自動的に変更してくれると便利なのですが。

で、1カ月経つと、実用新案登録抹消申請書が返却されるので、それと一緒に「登録名義人の表示変更登録申請書」を提出すれば、変更出願が有効になるとのことでした。

つまり、実用新案登録抹消申請書が却下されて返却されるので、そこで名義人表示変更登録申請書と一緒に提出すれば登録実用新案からの特許出願への変更出願が有効になるそうです。

今回初めて登録実用新案から特許出願への出願変更を行いましたが、非常に面倒です。

出願中のものであれば、簡単ですが、登録実用新案に基づく特許出願への変更はかなり手続きが多く、通常の変更出願と同じ感じと思っていたらとんでもなく面倒でした。特に今回は出願人が出願時から変更時の間に住所を変更していましたから。

という意味では、あまり実用新案からの特許への変更出願はお勧めではないです。

きちんと権利化して権利として活用したいなら、最初から特許出願で勝負すべきでしょう。特許性が低いからとりあえず実用新案登録でいいか、と思っても、将来権利行使することになって実用新案技術評価書を請求したら、否定的な見解だったら、どうにもなりませんから。

 

特許事務所の仕事量

ここ2年ちょっと大阪の友人の事務所で仕事をしているのですが、弁理士数も少なく、仕事量もかなり変動があります。個人事務所ならもっとあるでしょうが。

忙しいときは毎日何件か、中間処理(拒絶理由対応)、審判事件、外国関係などを3件以上処理することも普通です。

場合によっては明細書を1~2日で書きあげることもあります。もちろん、こういう場合はギリギリの時間で書くので内容に問題があることもあり得ます(誤字・脱字とか)。

ただし、一度書いたことのあるパターンの明細書であれば、そのパターンに当てはめればいいので1日で書いてもそれなりのレベルの明細書にはなります。

ともかく、忙しい時期と暇な時期があるのが個人事務所の悩みです。以前50人規模の事務所に勤めていたことがありますが、リーマンショック後で、依頼が少なくなっていて本当に大変そうでした。所長が毎週キャッシュが足りない、というようなことを言っていてうんざりする感じでした。

そういう意味から言えば、暇な時期ばかりだと事務所が潰れてしまうので、忙しい時期はありがたかったりします。

特に急ぎの出願の場合は、仕事も急いで早くやり、しかも特急料金ももらえる、というありがたい状態になります。

逆に出願依頼から何カ月も経っても出願のゴーサインが出ない場合もあります。場合によっては1年位その状態の場合が続いたりします。こうなると、仕事はしたのに代金がもらえない状態になりますから事務所の経営上苦しいです。

知人の事務所ではそのような場合は、出願してなくても、明細書作成料を先にもらう、と言っていました。1年間明細書を少しづつ修正していては、事務所としても手間がかかる割に入る収入が少ないので経営的に苦しくなります。

そういう意味では、特急で出願してくれ、という方が事務所にとってはキャッシュフローが早くありがたいとも言えます。

私の知人で、1日で明細書を書くのを原則としている人がいますが、そういうやり方をすれば儲かるだろうな、と思います。もちろん、それでも十分な品質を保てるからそれでもいいのでしょうけど。

そういう意味では、弁理士もす早く明細書を書ける分野を増やすことでキャッシュフローを改善できると思います。企業の知財部員はあまりに早く明細書を仕上げてしまうとやることがなくなってしまう、という場合もあるかも知れません。

いずれにしても、特許事務所も昔のようなボロ儲けできる時代ではなくなって来ました。特許出願数が減っていながら、弁理士数がかつての3倍位になっているのですから当たり前ではありますが。

日本でも、アメリカのように発明をして起業する人がもっと増えて欲しいものです。私としても発明家を増やす活動をしたいと思っています。

寄せ集め発明の進歩性

公知の方法や物を組み合わせただけの、いわゆる寄せ集め発明の場合、構成自体に困難性がなければ、進歩性がない、という拒絶理由通知が来ます。

これは、日用品のような簡単な発明だけでなく、最先端の研究でも起こり得ます。

例えば、皮膚からiPS細胞を作成する特許が公開されていたとして、口の粘膜を取ってきてiPS細胞を作る発明をしても、そこに特殊な工夫が無い限り進歩性は認められません。誰でも思いつくからです。

しかしながら、誰でも思いつき、やってみよう、という動機づけがあったとしても、できたiPS細胞が、例えば、非常にガンになりにくい、とか、増殖が通常の細胞よりも早い、など予想外の効果があれば進歩性が認められる場合があります。

基礎科学の研究者は、仮説を検証することを目的に実験するので、仮説と外れるのをあまり好みません。

しかしながら、仮説と外れた部分は特許性(進歩性)のある部分なので、その部分もしっかりデータを取ってまとめておくのがよいです。

大抵の研究はすんなりとはいかないと思います。上の口腔粘膜からのiPS細胞の作成にしても、何等かの工夫が必要な場合があります。予想外の困難性があれば、それも進歩性の根拠になり得ます。

そういう意味で、発明を特許化したい場合は、研究遂行上苦労した点はしっかりまとめておくのがよいでしょう。

この精製では通常1回で済むところを3回精製する必要があった、とか、ちょっとした通常とは違う操作したらそれをノートにきちんと書いておくのがよいでしょう。それが意外にいい特許になったりしますから。

と、言っても、大抵の実験は苦労することが多いので、そういう意味から言えば、進歩性のある発明はたくさん出ているはずなのですが。

面白い発明 ゲノム編集用クリスパーキャス9による老化遺伝子切り取り若返り経口不老不死薬

世の中には、非常に面白い発明をする人がいます。何度か紹介している加治佐功氏がまた面白い発明を特許出願していました。

【発明の名称】ゲノム編集用クリスパーキャス9による老化遺伝子切り取り若返り経口不老不死薬
【公開番号】特開2016-11317(P2016-11317A)
【公開日】平成28年1月21日(2016.1.21)

クリスパーキャス9というのは、狙ったDNAを切断できるもので、以前はよくて1万分の1程度の確率でしかターゲッティングできなかったのが、この方法によると極めて効率よく狙ったDNAを切断できる、というものです。

加治佐氏は、この狙ったところを切るDNAのハサミ(実際にはガイドするのはRNAですが)を使って、老化遺伝子をカットすることで、不老不死薬を作れると考えているようです。

請求項は1のみで、以下のとおりです。

【請求項1】
(a)主として高齢老人のヒトiPS6因子である初期化するのに必要なOct3/4、Sox2、Klf4、L-Myc、Lin28、Nanogを用意し経口し初期化しておき、
(b)clk-1、elt-5、elt-6等の老化遺伝子を見つけ切り取るガイドRNAを含む、(c)クリスパーキャス9をカプセルに入れて胃酸や熱で壊れないようにするか、コーティングするかして、たんぱく質のクリスパーキャス9「酵素たんぱく質ハサミ」で、
(d)従来、これを血液中に入れていたが、これを経口式にすることで口から飲むという単純化とし、
(e)このようにして高齢老人でも全細胞が初期化しテロメアも若返ったように元の長さに戻り、経口不老不死薬となるが脳細胞の初期化で記憶も甦るか、脳の中の海馬と大脳を光刺激か電極刺激して全記憶が甦り老人脳も若くなるし、老化遺伝子すべてが切り取られ望むならば若さを保つ遺伝子導入で若返りも可能なゲノム編集を施した、
以上のような特徴を持つゲノム編集用クリスパーキャス9による老化遺伝子切り取り若返り経口不老不死薬7

というなかなかユニークな発明です。これで老人が記憶がよみがえり、若さを保てるならノーベル賞ものですが、残念ながら、いろいろ問題があります。

例えば、最初の初期化遺伝子を経口し、とありますが、経口投与ではDNAやタンパク質は分解されてしまうでしょう。また、腸からDNAが吸収されるかは微妙ですが、ウイルスは吸収されるので、分解されなければもしかしたら少しは吸収され、血流に乗るとしても、全細胞を初期化することは難しいでしょう。

そして、仮に全細胞を初期化できたとしたら、ガン化するおそれが出てきます。

次に、老化遺伝子のどの部分を切るのかが特定されていません。クリスパーキャスでカットしてもその後修復されるわけですが、そこでエラーが出ればいいですが正しく修復されるケースもあるので、全ての老化遺伝子が破壊されるとは限りません。

また、例えば、clk-1遺伝子はコエンザイムQを作る役割があると言われており、これがないとマウスでは胎児の段階で死んでしまいます。そういう意味で、老化遺伝子も発生の時期によっては別の重要な機能を果たしている可能性もあるので、単純に壊せば老化が遅延する、とも言い切れません。

結局、この発明の問題は、実際に投与試験をして効果を確認していないところにあります。アイデアのみで実施例の記載は以下のみです。

【実施例】
【0008】
上記の形態や非特許文献の如く実施される。

実施形態の記載も請求項の引き写し程度でほとんど実質的な記載はありません。

アイデアのみは面白いのですが、発明は実施可能なものである必要があります。ですから、実際に薬を作って、ご自分でもいいので飲んで、きちんと老化防止効果があることを確かめてから特許出願するのがよいと思われます。

大平国際特許事務所では、クリスパーキャスやゲノム編集の出願も得意としております。ご興味のある方は以下からお気軽にお問い合わせ下さい。

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一流の弁理士に依頼するには?

特許出願を依頼するのであれば、新人であまり経験のない弁理士ではなく、できれば経験豊富な一流の弁理士に依頼したい、と誰もが思っているでしょう。

しかし、大規模事務所の一流弁理士には、通常は大企業の固定客が付いているので、大規模事務所に初めて仕事を依頼した場合、依頼者が大企業でなければ、暇な弁理士が担当になることも多いです。ひどい場合には、新人弁理士が担当になり、かなり多くの間違いを含む明細書を書いてくれることもあります。

私も昔、企業知財部時代や大学院大学知財本部の時代に特許事務所に依頼していたのでそういう弁理士も何人か見て来ました。

弁理士として事務所でたたき上げで、長くやっている人はまだ安心なのですが、ちょっと困ったのが、審判官や審査官を経て特許事務所に入られた方でした(これらの事例はもう10年あるいはそれ以上前の話なので今は事情が変わっている可能性もあります)。

特許庁審判官出身の方は審判官の目から見ていい明細書というのを判断しているのでしょう。「明細書は、読みやすいように簡単に書いておきました」と言われました。

確かにスッキリしていて読みやすいのですが、発明のバリエーションも少なく、限定するための段階的な記載もなく、定義も少なく、これでは拒絶理由がきたら補正できず、一発アウトになるかも、と思いました。

明細書は、読みやすければ特許になる、というものではありません。読みにくくても、日本語とは思えなくても、技術的、法律的に正しく書かれていれば、特許として登録され、事業が守れます。

もっと言えば、正確に書けば書くほど全ての条件を盛り込んで厳密に書くので読みにくくなる、とも言えます。

さらに、請求項を読んだだけでは権利範囲がさっぱりわからない、という請求項である方がいい場合もあります。なぜなら、誰もその特許権を侵害しているかどうかわからないので、侵害している製品を売り続けることになります。そうすると、より長期間侵害するので、損害賠償金も増える、というわけです。

まぁ、日本では米国のような3倍賠償制度がないので通常の実施料程度しか賠償されないケースが多いですが。さっぱりわからない請求項というのは例えば、缶コーヒーのプルトップ型の蓋のようなものを日本語で言葉で表したような場合です。図で書けばすぐに理解できるのですが、文章で書くと非常にわかりにくい文章になることがあります。

わざと権利範囲をわかりにくく書く、というのは、私はあまりやりませんが、それとは別に、明細書に定義をしっかり書いたり、数値範囲を段階的に書くと読みやすい文章にはなりません。

しかし、それができる限り広い権利を取得するのに役立ちます。

そういう意味では、読みにくい明細書であっても、きちんと広くて強い権利が取れるのであれば、読みやすくても狭い権利範囲しか取れない明細書よりもよいと思われます。

審判官出身の方もそうですが、審査官出身の方の書いた明細書も必ずしもいい明細書と言えないケースもありました。これは人にもよるのでしょうが、特許庁では審査をする側ですから、細かい明細書作成ノウハウや海外の記載要件に関する判例を審査官がどれだけ研究しているかは不明です。

では、一流の弁理士とは、どういう弁理士を言うのでしょう?

それは端的に言えば、特許登録率が高い弁理士ではないでしょうか?どんな拒絶理由に対しても論文や論理の穴を見つけ、反論し、特許にできる弁理士だと思います。普通は特許にならない出願も、何とかあらゆる方法で特許化し、企業の製品を守る、ということです。

つまり、会社の事業を守り、利益に貢献できる弁理士、とも言えるかも知れません。

ではそういう弁理士をどう探せばいいか?ですが、残念ながら、弁理士を明確に差別化することは弁理士倫理規定もあり、あまり過激にはできないので、弁理士の特徴を打ち出すのは簡単ではありません。

とはいえ、ある程度の選ぶ基準はあります。技術面と法律面の両方の知識が必要ですから、研究開発歴がある程度あり、博士号を取得している方が科学的知識が豊富で、論文を読んで拒絶理由に反論するのも得意な場合が多いです。

例えば、一流企業での研究開発歴が20年以上もあれば、研究者として大学の准教授クラス以上の能力を持っている研究者も多いです。その位の専門知識があれば、特許庁の審査官と互角以上にディスカッションが可能です(論破することも)。また、論文を読むのにも慣れていますから、論理の間違いにすぐに気づける、という鋭さもあります。

それとともに、弁理士としての経験年数も10年以上あれば、ある程度の法的テクニックは知っているので、ある程度信頼できると思います。最低5年程度あれば、才能がある人なら弁理士として1人前になれる、という説がありますから。

とはいえ、当然知っているべき判例でも、全ての弁理士が知っているとは限りません。判例に沿って議論することで、拒絶理由が解消する場合もありえます。

また、特許庁の審査官とも直接10年以上もやり取りすれば、大体の傾向や人によってどのくらい差があるかも肌感覚でわかるようになります。そうすれば、それに応じて反論の書き方を調整したりもできるようになりますし、このケースは面接が必要だな、というのも感覚でわかるようになってきます。

他には、東大や京大出身者であればあまりハズレの弁理士に当たることは少ないと思われます。

一流の弁理士がわからない場合は、一度お試しで仕事を実際に依頼してみるのもお勧めです。当所の場合はそのようなケースを想定して初回の出願は通常ではありえない値段で受任しております。

知財の仕事は奥が深く、実際に直接一緒に仕事をやってみて初めて優秀かどうかわかる場合も少なくありません。一緒に仕事をしてみて、非常に頭がいい、と感じる場合もあると思います。

そういう意味で、当所はぜひ一度お試しいただきたい事務所、弁理士であると自負しております。

日曜午前0時から午前9時までインターネット出願電子現金納付停止

日曜日の午前にかけて特許申請をすることはこれまでほとんどありませんでした。

やるとすれば、月曜の早朝ですが、その場合は、いつも使っている三井住友銀行の電子バンキングが朝7時まで停止するので、月曜早朝はその後に電子現金納付をして特許出願をしていました。

ところが、今回は、日曜日に学会があるということで、学会発表前に出願完了する必要がありました。

ただ、今回は、開始が午後でしたから、何とかなりました。午前9時の電子現金納付システムが稼働するのを待ってその後出願したからです。

これが、もし、午前8時半からの学会だったとしたら、24時以降は電子現金納付が使えませんから、出願料を納付せずに電子出願することになっていたでしょう。

そして、出願料を別途納付すれば、おそらく出願日時はそのままでしょうから問題ないはずです。

しかし、本来であれば、1日前とかに出願すれば済む話ではあります。

が、この仕事をしていると、どうしても直前までかかることはよくあります。しかし、十分余裕があって完璧な明細書を作れた、という場合と、ぎりぎりで直前に何とか完成させた、という明細書でもそれほど本質的には差がない場合も多いです。

そういう意味では直前にスピーディに仕上げた明細書も一定水準は超えていますので、それなりに高品質なものです。

今回も発明者と依頼者が異なるパターンで発明者が超多忙でメールでの連絡があまり取れない状態だったのでちょっと苦労しました。

特許明細書を書く場合、発明者と直接コンタクトできれば比較的楽に明細書を書けるのですが、発明者が外国人で自国に帰っていたりして連絡が取れない場合は非常に大変でした。

実施可能要件を満たすためには、実際にやった方法を書く必要があり、その部分を想像で書くのはリスクがありますから。

そういう意味では、明細書を書く場合は、できる限り発明者と十分にコンタクトを取って書くのがよいです。

もっとも、自分が長年研究してきた専門分野の発明であれば、発明者よりもよくわかっているので想像だけでも問題なく書けますが。上記は、専門でない分野の話です。

専門分野以外でも、さくっと明細書を書けるようになれればいいのですが、さすがに専門分野以外はある程度調べながらになるので、時間がかかってしまいます。しかし、それにより、さらに専門分野のレベルが上がる、という面もあるので、そうした専門分野以外で専門分野も含む特許出願も面白いです。

例えば、バイオテクノロジー関連発明ですが、電子回路により、変化を検出する、という発明は私の専門のバイオテクノロジーと、専門外の電子回路が含まれています。こうした専門分野に近い部分を含む、非専門分野の出願もかなり手がけているのですが、これにより、電子回路の感覚もつかめます。

ということで、私はバイオ・化学・食品・医薬あたりが専門ですが、非専門分野の電子回路などの出願も徐々にできるようになりつつあるような気がしています。