サントリーがアサヒビールに敗訴 特許無効の判断

東京地裁でサントリーがビールテイスト飲料の特許でアサヒビールを訴えていましたが、サントリーが敗訴したようです。

言わば、当たり前、の特許だから無効という判断が出たようです。サントリーの特許請求の範囲は以下です。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキス分の総量が2.0重量%以下であるビールテイスト飲料であって、pHが3.0以上4.5以下である、前記飲料。

エキスが少ないビールテイスト飲料で、pHが3以上、4.5以下という極めてシンプルな特許です。

これだと、pHをこの範囲に入れるだけで侵害になります。

しかし、ビールは炭酸が入るのでどうしても酸性になってしまいます。すると、この特許にはほとんどのノンアルコールビールが入るように思います。

サントリーの特許が成立したのは、このpHだとコクが出る、というのが予想外、ということで進歩性が認められて特許になったようです。

しかしながら、このコクが出る、というのが予想外なのかどうかは不明です。他にもそのような例があると予想可能、ということで進歩性無となり、無効になり得ます。

ビールは長い歴史がありますから、低エキスビールでpHを低くした例はおそらくありそうな気がします。

それによりコクが出る、というのがどのくらい予想外なのかによって、特許権の有効性が決まります。

予想の範囲の効果であれば、無効の抗弁が特許権侵害訴訟では可能です。

これにより、特許無効審判を起こさなくても、訴訟では勝訴できます。おそらく今回のアサヒは無効の抗弁をしたものと考えます。

とはいえ、進歩性の判断は微妙です。サントリーも控訴したようですから何等かの勝算があるのでしょう。

あるいは、退くに引けなくなって、負けるとわかっても控訴せざるを得なかったのかも知れませんが。

いずれにしてもビールシーズンが終わって秋にこのような結論が出ても喜ぶのは一部の人だけでしょうね。

どっちが勝ってもビールがおいしくなるわけじゃなし。

特許訴訟もいいけど、やはり、もっと画期的な特許で争って欲しいですね。

と、言っても私もこうした当たり前のような特許をぎりぎりで成立させるのを得意としているので、こうした当たり前特許がことごとく無効になってしまうのも困るのですが・・・

今後の日本経済の復興を考えると、ノーベル賞級の画期的な発明の特許を増やして行きたいですね。

サントリーがビールテイスト飲料特許でアサヒを提訴

これは今年3月19日に投稿した記事なのですが、一度ブログが消えてしまった時になくなっていたので再掲します。

食品業界に限らず、日本企業は特許出願は多数して特許権は持っていても、あまり特許権侵害訴訟をせず、和解で終わらせるのが美徳、のような風 潮があり、企業によっては、受け身の訴訟はするが、攻撃の訴訟はしないのが方針、というところもあります。これは一部には、無効になる可能性がかなり高い ので、攻撃して反撃で自社の特許が無効になるのが怖いから、という面もありますが。

食品業界では、サトウの切り餅やラーメンの訴訟が有名ですが、それほど大きな訴訟は少ないです。

今回は、サントリーvsアサヒということで、食品業界でも最大手同士の争いですから注目を浴びることは必至でしょう。

サントリーが特許権者で、アサヒがその特許権の技術的範囲に入る製品を製造販売しているので、特許権侵害で訴えたようです。これに対してアサヒ側 は、特許が無効であるとの主張をしているそうです。サントリーの特許が無効である、と信じて製造販売したとすれば、故意が阻却されますから、刑法犯は阻却 されます。

いずれにしても、食品業界でも特許訴訟が頻発するようになれば、業界自体の特許出願のレベルは高くなるので弁理士としては歓迎すべき事態とは言えま す。とはいえ、サントリーが今回取ったような広い特許権を他社もどんどん取るようになれば、特許侵害だらけになるおそれもあります。

では、サントリーの特許権はどういうものでしょうか?以下のような特許権をサントリーが取得しています。

【特許番号】特許第5314220号(P5314220)
【登録日】平成25年7月12日(2013.7.12)
【発明の名称】pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料
【出願番号】特願2013-516897(P2013-516897)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【国際出願番号】PCT/JP2012/079973
【審査請求日】平成25年5月24日(2013.5.24)
【優先権主張番号】特願2011-255388(P2011-255388)
【優先日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【早期審査対象出願】
【特許権者】サントリーホールディングス株式会社

国際出願して、しばらくしてから日本国内に移行手続きをして、早期審査で特許化したようです。特許請求の範囲は以下のようにかなり広いです。請求項 1は、エキス分の総量が2重量%以下のビールテイスト飲料で、pHが3~4.5ということで、本当にこれまでこうしたビールテイスト飲料がなかったのか不 思議な気がします。審査でも拒絶理由が出ずに一発で特許になっているようで、本当に先行文献がないのかも知れません。

もし本当に先行文献が無ければ、この特許を潰せないので、エスケープするのはかなり難しい気がします。エキス分を2.1%にすればいいだけのこと、とも言えますが。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキス分の総量が2.0重量%以下であるビールテイスト飲料であって、pHが3.0以上4.5以下である、前記飲料。
【請求項2】
エキス分の総量が1.0重量%以下である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
エキス分の総量が0.5重量%以下である、請求項2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
エキス分の総量が0.3重量%以下である、請求項3に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
エキス分の総量が0.01重量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項6】
pHが3.0以上4.2以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
pH調整剤として、乳酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、及びそれらの塩からなる群から選択される一種又はそれ以上を含んでなる、請求項1~6のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
pH調整剤として、乳酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、及びコハク酸からなる群から選択される一種又はそれ以上を含んでなる、請求項7に記載のビールテイスト飲料。
【請求項9】
カロリーが8.0kcal/100ml以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項10】
カロリーが4kcal/100ml以下である、請求項9に記載のビールテイスト飲料。
【請求項11】
カロリーが1.6kcal/100ml以下である、請求項10に記載のビールテイスト飲料。
【請求項12】
カロリーが1.4kcal/100ml以下である、請求項11に記載のビールテイスト飲料。
【請求項13】
カロリーが0.1kcal/100ml以上である、請求項9~12のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項14】
糖質の含量が2.0g/100ml以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項15】
糖質の含量が1.0g/100ml以下である、請求項14に記載のビールテイスト飲料。
【請求項16】
糖質の含量が0.5g/100ml以下である、請求項15に記載のビールテイスト飲料。
【請求項17】
糖質の含量が0.01g/100ml以上である、請求項14~16のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項18】
ビールテイスト飲料がノンアルコールのビールテイスト飲料である、請求項1~17のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項19】
ビールテイスト飲料が非発酵のビールテイスト飲料である、請求項1~18のいずれか1項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項20】
ビールテイスト飲料の製造方法であって、
飲料のエキス分の総量が2.0重量%以下となるようにエキス分の総量を調整する工程、及び
前記飲料のpHをpH調整剤により3.0以上4.5以下に調整する工程、
を含む、前記方法。
【請求項21】
飲料のエキス分の総量が1.0重量%以下となるようにエキス分の総量を調整する、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
飲料のエキス分の総量が0.5重量%以下となるようにエキス分の総量を調整する、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
飲料のエキス分の総量が0.3重量%以下となるようにエキス分の総量を調整する、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
飲料のエキス分の総量が0.01重量%以上となるようにエキス分の総量を調整する、請求項20~23のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項25】
飲料のpHを3.0以上4.2以下に調整する、請求項20~24のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
pH調整剤が、乳酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、及びそれらの塩からなる群から選択される一種又はそれ以上を含んでなる、請求項20~25のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項27】
pH調整剤が、乳酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、及びコハク酸からなる群から選択される一種又はそれ以上を含んでなる、請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
ビールテイスト飲料のカロリーを8.0kcal/100ml以下に調整する工程をさらに含む、請求項20~27のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項29】
ビールテイスト飲料のカロリーを4kcal/100ml以下に調整する、請求項28に記載の製造方法。
【請求項30】
ビールテイスト飲料のカロリーを1.6kcal/100ml以下に調整する、請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
ビールテイスト飲料のカロリーを1.4kcal/100ml以下に調整する、請求項30に記載の製造方法。
【請求項32】
ビールテイスト飲料のカロリーを0.1kcal/100ml以上に調整する、請求項28~31のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項33】
ビールテイスト飲料中の糖質の含量を2.0g/100ml以下に調整する工程をさらに含む、請求項20~32のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項34】
ビールテイスト飲料中の糖質の含量を1.0g/100ml以下に調整する、請求項33に記載の製造方法。
【請求項35】
ビールテイスト飲料中の糖質の含量を0.5g/100ml以下に調整する、請求項34に記載の製造方法。
【請求項36】
ビールテイスト飲料中の糖質の含量を0.01g/100ml以上に調整する、請求項33~35のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項37】
ビールテイスト飲料がノンアルコールのビールテイスト飲料である、請求項20~36のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項38】
非発酵性の方法である、請求項20~37のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項39】
ビールテイスト飲料への飲み応え及び適度な酸味の付与方法であって、飲料のエキス分の総量が2.0重量%以下となるようにエキス分の総量を調整し、飲料のpHをpH調整剤により3.0以上4.5以下に調整することによる、前記方法。
【請求項40】
飲料のエキス分の総量が1.0重量%以下となるようにエキス分の総量を調整する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
飲料のエキス分の総量が0.5重量%以下となるようにエキス分の総量を調整する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
飲料のエキス分の総量が0.3重量%以下となるようにエキス分の総量を調整する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
飲料のエキス分の総量が0.01重量%以上となるようにエキス分の総量を調整する、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
pHを3.0以上4.2以下に調整する、請求項39~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
pH調整剤が、乳酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、及びそれらの塩からなる群から選択される一種又はそれ以上を含んでなる、請求項39~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
pH調整剤が、乳酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、及びコハク酸からなる群から選択される一種又はそれ以上を含んでなる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ビールテイスト飲料のカロリーを8.0kcal/100ml以下に調整する工程をさらに含む、請求項39~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
ビールテイスト飲料のカロリーを4kcal/100ml以下に調整する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ビールテイスト飲料のカロリーを1.6kcal/100ml以下に調整する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ビールテイスト飲料のカロリーを1.4kcal/100ml以下に調整する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ビールテイスト飲料のカロリーを0.1kcal/100ml以上に調整する、請求項47~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
ビールテイスト飲料中の糖質の含量を2.0g/100ml以下に調整する工程をさらに含む、請求項39~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
ビールテイスト飲料中の糖質の含量を1.0g/100ml以下に調整する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ビールテイスト飲料中の糖質の含量を0.5g/100ml以下に調整する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ビールテイスト飲料中の糖質の含量を0.01g/100ml以上に調整する、請求項52~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
ビールテイスト飲料がノンアルコールのビールテイスト飲料である、請求項39~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
非発酵性の方法である、請求項39~56のいずれか1項に記載の方法。

記載要件違反の拒絶理由通知への対応

欧米からPCT出願経由で日本に国内移行した特許出願の場合、記載要件違反(サポート要件違反、実施可能要件違反)が来ることがあります。

欧州代理人は、記載要件を満たすと思っているようですが、日本の記載要件は厳しいので、欧州の基準では満たしていたとしても日本では十分に記載されていない、とされてしまうケースも多いです。

そのような場合、実験方法が書かれていれば、その実験方法できちんとできている、というデータを提出すれば実施できるように記載されていることが証明できます。

ですので、最低、実施できるように記載されていることが必要です。

サポート要件の場合は、記載が無いので、後からデータを出しても記載されていることにはならないので、技術常識から記載されているに等しい、ということを証明する論文などの文献を提出する場合もあります。

しかし、これは一歩間違うと、新規性、進歩性がないことの根拠にもなり得ますから十分注意が必要でしょう。

アメリカの場合は、実施可能要件を満たさないという証明責任は審査官側にあるので、審査官が証明できなければ実施可能要件は満たす、とされます。

日本の場合に、立証責任がどちらにあるか、と言えばやはり審査官側に立証責任はあると思われます。

しかしながら、審査官が実際に実験をして実施できるように書かれていない、ということを証明することは実際には困難でしょうから、実施可能要件違反に対しては、技術常識を使って丁寧に説明し、審査官が反論できなように記載すればよいのでは?と思います。

以前、ある方法の発明についての拒絶理由で、審査官がその方法を知らないから、実施不可能、と言ってきたことがあります。

その審査官は2つしか方法を知らなくて、第3の方法があることを聞いたことがなかったようです。

そこで、Wikipediaなどの一般的な記載で、1970年頃から第3の方法が使われていて、使用実績もたくさんあることを説明したところ、実施可能要件の拒絶理由は取り下げられました。

そういう意味では、特殊な方法については、審査官も全てを知っているとは限らないので、総説等を用いて詳しく説明すれば実施可能要件を満たす場合もありえます。

ただ、記載が1行程度しか無くて、請求項にはしっかり広い範囲を記載している場合にサポート要件違反、と言われた場合はかなり苦しいです。

そうならないように、請求項に記載する場合は、きちんと課題を解決できるように明細書に十分な記載をするべきでしょう。

大発明を生む破壊的イノベータ―の特徴

画期的な大発明をする、いわゆる破壊的イノベータ―と言われる人達には、次の5つの特徴があるそうです(イノベーションのDNAより)。

1.全く関係の無いものを組み合わせて独創的な発明をする

これは、例えば、電話機とコンピュータを組み合わせてiPhoneを作ったスティーブ・ジョブズが有名ですね。これほど画期的でなくても、企業の発明の8~9割は組合せ発明と言われています。

ですから、何か新しい製品が出たら、他の何かと組み合わせられないか?と考えるのも発明を出すヒントになります。

2.質問力を高める

アインシュタインは、問題を解く時間が60分あったとしたら、そのうち55分を質問を作るのに費やすそうです。つまり、いい質問が作れれば、問題解決につながる、ということでしょう。

勉強していて、質問しようと思って質問を考えていたら、自然に答えがわかったという経験をした人も多いと思います。いい質問がいい発明を生み出します。

3.観察力

世の中を興味を持ってよく観察するということです。観察することで、改善する点や、新たなアイデアにつながる発見が得られたりします。観察力も発明に役立ちます。

4、いろんなジャンルの人と付き合う

自分の専門分野とは違う分野の人と付き合うと、全く違う発想に出会えたり、自分では考え付かなかったような開発テーマがひらめいたりします。異分野の人と積極的に交流することで、新たな発見があるでしょう。

5.実験を軸とする

頭の中だけで考えても、実際に試作してみないと本当に動くかどうかはわかりません。ですから、アイデアが出たら、それを実験してみて、本当にその効果が得られるか確認することです。

実際には、アイデアどおりに効果が出ることは少ないと思われます。しかし、最初うまく行かなかったとしても、実験をして改善を繰り返すことで発明が完成することも多いです。

また、理論的にはできそうなものでも、永久機関のようなものは、どこかで動かなくなります。例えば摩擦があったり、開閉のスピードが追いつかなかったり、理論的には考えなかったような欠点がわかります。

そしたら、それを改善するようにしていけばよいです。ただし、永久機関は理論的に不可能ですので、どこかからエネルギーを供給する必要があります。

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子供の発明を特許出願する親

数日前に、神谷明日香さんという小学6年生が空き缶の分別可能なゴミ箱で特許を取得したという話を書きました。

ただ、小学生の子供の発明を弁理士に依頼して出願できる親はあまりいないと思います。親が特許性があるかどうか判断できるケースが少ないし、特許出願するコストを負担できるか、また、出願コストに見合う売上があがるかどうかも不明ですから。

弁理士に依頼して出願すると、標準的な料金だと、明細書作成→出願だけで20~40万、審査請求で15万程度(特許庁印紙代含む)、中間処理(拒絶理由対応)で1回約10万円、成功報酬10万~20万かかるので、最低でも50万円程度かかります。

拒絶理由対応が難しい場合は登録までに100万円近くかかる場合もあり得ます。審判請求したりすると、150万円以上かかることもあります。今回は早期審査も請求しているのでその費用も余分に必要です。

それだけのコストをかけてまで出願するのは普通の会社員の家庭ではよほど売れるという確信がないと難しいと思われます。神谷明日香さんの場合は、シニアソムリエで有限会社カルチベイトジャパン代表取締役の父親が特許を取得していて、発明家のようですから、ある程度特許について詳しいのだと思われます。

ただし、父親が発明者での特許は以下です。
【特許番号】特許第5022528号(P5022528)
【登録日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【発明の名称】味覚値処理装置、及び、プログラム
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【氏名又は名称】株式会社カルチベイトジャパン
【発明者】
【氏名】神谷 豊明

【請求項1】
味覚の一種として色を含む複数種類の味覚の各味覚値をワイン別に保持しているワイン味覚値保持手段、を有する記憶装置と、
判定対象の料理が持つ色の味覚値に対応付けられている各ワインを前記ワイン味覚値保持手段からそれぞれ抽出して、該各ワインが持つ複数種類の味覚の各味覚値をそれぞれ取得する味覚値取得手段と、
前記判定対象の料理が持つ複数種類の味覚の各味覚値と、前記味覚値取得手段が取得した各ワインの対応する味覚の各味覚値とに基づいて、前記判定対象の料理と前記取得した各ワインとの適合性をそれぞれ判定する適合性判定手段と、
を有することを特徴とする味覚値処理装置。

これはつまり、料理に合うワインを自動的に見つけるプログラムだと思われます。これは2005年に出願され、2012年に登録されています。この経験でかなり特許審査に対する知識が深まったのでしょう。

それに加えて父親も経営者ですし、祖父がスーパーを経営しているので、孫が特許で新聞に載れば製品が全く売れなくても宣伝効果で元が取れるでしょうけど。

こういう親子が増えて欲しいですね。さらに、この発明を事業家して小学生社長で年収数千万円という事例になればいいのですが。

アメリカでは、発明家で豪邸に住む人が大勢いますから、日本でもそうなって欲しいです。アメリカの発明家の中には、町1個分くらいの豪邸に住んでいる人もいるそうです。

弁理士会の必修研修 不正競争防止法、特許法改正

弁理士には研修が義務付けられ、5年で70単位位の研修を受ける必要があります。

そのうち、倫理研修と一部の法改正研修が必修とされています。必修研修を受けない場合、何度か注意を受け、そのうち警告になり、それでも受けないと懲戒処分になることもあるようです。

で、今日は、法改正の必修研修でした。

不正競争防止法の改正では、不正競争行為に対する罰則や立証責任の転換で、ノウハウを盗まれた側が、盗んだ側にこれまでよりも厳しい罰則を課せるようになりました。

近年、オープン・クローズ戦略と言って、全部を特許出願明細書に書くのではなく、一部は特許で保護し、一部はノウハウとして隠して保護することで、他の国の模倣を防ぐ、という戦略がかなり一般的になったことも影響しています。

また、新日鉄住金vs韓国ボスコとの1000億円訴訟や、東芝vsSKハイニックスのNAND型フラッシュメモリ技術の訴訟(330億円で和解)も影響しているようです。

せっかく日本の技術者が苦労していい技術ノウハウを開発しても、退職者がそれを他の国のライバル企業に売り飛ばすと、ライバル企業は労せずして最先端ノウハウを使ってビジネスをできます。研究開発投資がゼロでマネするだけですから、投資のリスクなく利益のみを得ることができます。

それはどう考えても不公平なので、今回の不正競争防止法の強化は日本の企業にとってもよいことだと思います。

具体的には、営業秘密の転得者処罰範囲の拡大、未遂行為の処罰、国外犯処罰の拡大、罰則強化(罰金引き上げ、任意的没収)、損害賠償の容易化(立証責任の転換)、除斥期間の延長などが挙げられます。

これは国会で可決しており、来年早々にも施行される可能性があります。

この法改正により不正競争行為、つまりノウハウの盗みが減り、日本経済が復活できればいいのですが。

特許法の改正は、職務発明規定の改正、特許料等の改定、特許法条約、シンガポール条約(商標)への加入等ですが、詳しくはまた別の記事で書く予定です。

名前の商標登録

自分の本名、あるいは、芸名、筆名等も商標登録可能です。登録しておけば、他人がその名前を商標的に使用することを止める(差止め請求)ことができます。

ですので、歌手などの芸能人の中には自分の芸名を商標登録する人もいます。

有名なのでは、加勢大周さんだったと思いますが、所属するプロダクションが商標登録していたため、独立するとその商標が使えなくなる、というので問題になったことがありました。何等かの形で解決して使用し続けたような記憶がありますが、相当前の話なので定かではありません。

芸能プロとしては、新人の時から発掘して育て上げた芸能人ですから、簡単に出て行かれては困るし、ブランド力のある芸名もプロダクションが有名にしたという面はあるでしょうから、商標登録するのは保険として正当な手段だと思います。

ただ、商標法には、商標権の及ばない範囲、というのが商標法第26条に規定されています。

この第1号には、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標には商標権の効力は及ばない、と規定されています。

つまり、例え加勢大周という名前を商標登録していても、本名が加勢大周という人がいて、学芸会等で歌を歌うときに、自分の名前を書けない、となると誰が歌っているかわからず、先生も困ると思います。また、誰が歌っているかの情報を告知するだけなら商標としての使用には当たりません。

そういう意味で、自身の名前を普通に使用する場合は商標権の効力は及びません。

ですので、個人名を商標登録しても、同姓同名の人が自分の名前を単なる情報の表示として用いる場合は差止することはできません。

また、苗字のみを商標登録した場合、例えば、「大平」で商標登録があったとして、「大平正芳」とは非類似とされる可能性があります。あるいは、「大平和三郎」も「大平」に対して識別力があると思われます。「大平シュワルツネッガー」なら明らかに「大平」単独とは非類似でしょう。

すると、苗字だけを登録して、その苗字の人全員を使用禁止にする、というようなこともできません。それを可能にすると、それまで普通に使っていた苗字が急に使えなくなって、皆改名しなければならなくなり、社会生活上様々な支障を来します。

ただし、その苗字が日本にはそれまで全くなくて、それを押さえるのであれば、名前の方に識別力が乏しい場合はもしかしたら差止が認められるケースはあるかも知れません。

しかしながら通常は、苗字のみを登録してそれに何かが付随した名前全てを押さえることは不可能です。

ただ、例外もあり、例えば、sonyは著名な商標ですが、nelsonyanというようなsonyを含む商標があった場合、sonyはnelsonyanの商標の使用を差止めることができる場合があります。特にnelsonyanのうちのsonyのみ赤字で他が黒字なら差止される確率は上がります。

このように極めて周知、つまり著名な商標の場合は、第三者がその前後に何かを付けて使用しても差止できる場合がありえます。

しかし、それには、著名性が必要、というわけです。それほど知られていない商標の場合は、そこまでの誤認、混同は起きないと考えられ、一部に含まれるだけでは差止は難しいと考えます。

(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条  商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。

 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
 当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特 徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他 の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
 当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数 量若しくは価格又は当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の 特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
 当該指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について慣用されている商標
 商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標
 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。
 商標権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。ただし、その行為が不正競争の目的でされない場合に限る。

 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律 (平成二十六年法律第八十四号。以下この項において「特定農林水産物等名称保護法」という。)第三条第一項 の規定により商品又は商品の包装に特定農林水産物等名称保護法第二条第三項 に規定する地理的表示(以下この項において「地理的表示」という。)を付する行為
 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項 の規定により商品又は商品の包装に地理的表示を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項 の規定により商品に関する送り状に地理的表示を付して展示する行為

外国からの日本への国内移行出願の翻訳

米国が2013年3月に先発明主義から先願主義に変わった影響で、この時期に駆け込み出願がかなり集中したようです。

そのため、最近では米国からの日本出願の翻訳を多数やってました。

英語から日本語への翻訳なので、英語と技術がわかれば問題なく英文和訳することができます。

ただ、英語が母国語と言っても、書く人によって使う単語の傾向も違うし、間違っている箇所の多い人もいますし、短文で書いてくれる人もいれば、延々とピリオドのない長文が続く人もいます。

特に修飾語の長い文章の翻訳をどうするか?は難しいところです。

修飾語を全部前にくっつけようとすると、どうしても文章が読みづらくなり、わかりにくくもなります。

ですから、私としては、頭から訳して行くのがいいと考えています。

英語の語順のとおり頭から読んで、まずは頭から区切りのいいところまでを訳し、その後、例えば、関係代名詞等があれば、それを接続詞でつないで書く、という感じです。

ただ、この頭から訳す、というのをやると、請求項のようにピリオドのない文章の場合に、最後でどう帳尻を合わせるかが難しくなる場合もありますが。

日本から海外に出す場合も私自身で和文英訳する場合もあります。この場合も日本語の明細書が訳しやすければきれな訳文が作れるのですが、複文が入り乱れて、さらに途中で別の構造に変わったりする場合もあります。

そうすると、英訳が非常に大変になります。当所が最初から明細書を作ればそういうことは無いのですが、発明者の方がご自分で明細書を作られて出願されているような場合は大変です。

大平国際特許事務所では、日本から海外に出願する場合にも翻訳しやすい文体で明細書を作成するように注意しています。

中国で特許を取ったので日本でも取りたいとの相談

最近問い合わせがあり、中国で特許を取得したので日本でも取りたいが見積して欲しい、と言って来ました。

名前を見る限り中国人のようです。それで、新しくないと特許にはならない(新規性)と言ったのですが、どうも通じなかったようで、もう一度、中国で取ったら日本で取らなくていいのか、とまた同じようなメールがありました。

そこで、中国で秘密状態であれば取れるが、特許公報が公開されていたら日本では新規性がないから取れないこと、ただ、中国での特許出願から1年以内であれば、パリ優先権を主張すれば日本でも取れる可能性があることを説明しました。その後なしのつぶてです。

中国特許法によると新規制については22条に以下のように規定されています。

新規性とは、当該発明又は実用新案が既存の技術に属さないこと、いかなる部門又は個
人も同様の発明又は実用新案について、出願日以前に国務院専利行政部門に出願しておら
ず、かつ出願日以降に公開された特許出願文書又は公告の特許文書において記載されてい
ないことを指す。(ジェトロ仮訳)
ということは、中国では、出願されていなければ新規性があるようです。日本では世界公知、つまり、世界のどこかで、実施されていたり、論文に書かれていたりすれば新規性が無いのですが、中国では、中国特許庁に出願されてさえいなければ特許出願に新規性があるように読めます。このあたりは審査基準も確認してまた後日記載します。
その割には、中国の進歩性の拒絶理由は厳しくてなかなか特許にならなくて苦労するのですが。中国の場合は面接審査(電話インタビュー)をすれば審査官の感触がわかるので特許になりやすい印象です。
中国出願をご希望の場合はお気軽にご相談下さい。
そういえば、今日は南アフリカの事務所から他の知財関係の会社とジョイント・ベンチャーをすることになった、というメールが来ていました。知財の世界もどんどんグローバルになってきますね。

 

特許による保護と医薬品のデータ保護期間

TPP交渉でバイオ医薬品のデータ保護期間が8年間の方向で進展があったようです。米国はデータ保護期間12年間を主張し、新興国は5年以下を主張していました。
データ保護期間は新薬メーカーが特許が無くても独占販売できます。つまり臨床試験のデータが8年間他社には使えないので他社は特許が切れていても承認が受けられないわけです。つまり、新薬メーカーが特許出願しなかった国においても独占販売の利益を確保できます。
 
特許を世界中で出願してから権利取得し、存続期間満了まで維持するには50か国程度でも1億円以上かかります。それが特許を取得していない国でもデータ保護期間の8年間は独占販売できるので製薬企業はその間にある程度の利益を得て新薬開発費を回収することができます。
 
製薬企業の新薬開発費は数百億円×20年以上もかかります。日本最大手の製薬企業の元知財部長によれば、200億円をかけた「壮大な博打」ですから、優れた医薬品を開発した場合は莫大な研究開発費を回収する必要があります。
 
とはいえ、データ保護期間が米国の言うように12年とかになると、特許を取得する必要が少なくなってしまうおそれもあります。と言っても、特許があるだけで1年間で数百億円から1兆円以上もの売上を独占できるのが医薬品業界ですから、1億円以上かけて世界中で特許を取得しても十分ペイするのですが。

逆に言えば、利益ベースで1億円を超えない商品の場合、1億円をかけて世界中に特許出願するのはコストパフォーマンスが悪いのでお勧めできません。

さらに、日本に出願して審査請求し、拒絶理由に対応し、登録査定を得るためには60万~100万円程度かかりますから、100万円の利益を生まない発明を特許出願すると赤字になってしまいます。

また、審査で拒絶査定されて審判や訴訟をすればさらに50万円~100万円かかる可能性がありますが、それでも、その特許を持つことで、それ以上の利益が見込めるなら審判・訴訟をする価値はあることになります。

つまり、特許出願にかけられる費用はその商品の販売により得られる総利益よりも少ない額にするのが妥当です。

しかしながら、実際には、売上予想に反して全く売れない新製品もよくあります。そういう意味から言えば、総利益×商品ヒット率まで含めて企業の特許予算を計算するのがよいのかも知れません。

例えば、商品のヒット率がいわゆるセンミツ、1000に3つであり、ヒットした場合の総利益が100億円とすると、特許にかけられる費用としては、10000000000×0.003=3000万円になります。

もちろん、株主配当、内部留保や利益準備金等も必要ですから、総利益×ヒット率×特許による独占利益の割合で特許部の予算を計算するのもよいと思われます。

 特許出願、商標出願、発明コーチング&コンサルティングに関するお問い合わせは以下からお気軽にどうぞ。

データ保護期間に関するTPPニュース記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151003-00000038-jij-pol