製薬企業のデータ保護期間と特許 TPP

新薬を開発した場合、データ保護期間というものがあります。

これは、新薬メーカーが出した臨床データを他社が使えない、つまり、そのデータを使って製造承認申請ができない期間、という意味です。

ジェネリック医薬品の場合は、ANDA (abbreviated new drug application)と言って新薬の臨床データがあるので物質としての同一性を示すデータを提出すれば、承認されます。

しかしながら、新薬の場合は、膨大な臨床試験のデータを出す必要があり、それには多額の費用がかかります。

それを使って製造承認した薬があったとして、そのデータを他社が使って製造承認を出されると新薬メーカーは独占の利益を得られません。そこで、臨床試験のデータ保護期間というものを設定してその間は他のメーカーはこのデータを使用できないようにしています。

このデータ保護期間は国によって違い、6年~10年位が多いです。だんだん長くなる傾向にあるようです。このデータ保護期間は特許がなくても独占できますから、これが長くなれば、特許がなくても特許と同じ位長い期間保護できる場合もありえます。

それが今交渉されているTPPでアメリカは12年を主張しているようです。

最近は少し早くなっていますが、臨床試験のデータが出て、承認されるまでに、10年~15年位かかっていました。

特許期間が20年+存続期間の延長5年で最長で25年間ですから、特許出願から13年後に製造承認がおりた場合、特許がなくても、特許を取得したのと同じ位長く独占できます。

米国がTPPでデータ保護期間を長くしたがっているのに対し、発展途上国は逆に短くして、安価な後発医薬品が早く出るようにしたいと考えています。

このあたり、利益を多くしたい開発者と、できるだけ安価に開発品を入手したい消費者の利益は真っ向から対立しています。

最近の米国の特許適格性の変更を見ても、開発者に不利な変更です。市民団体が公平の観点から権利を主張するのはよいですが、ベンチャー企業をリスクにさらすような改正は短期的にはメリットがあるように見えても、長期的には研究開発の意欲をそぎ、新薬開発のインセンティブが下がるのではないでしょうか?

そういう意味で、米国の天然物(遺伝子、タンパク質など)に特許適格性を認めない運用変更は行き過ぎのような気がします。

 

拒絶理由通知への対応 進歩性がない

特許出願して、審査請求すると、いきなり特許査定が来る場合もありますが、ほとんどの場合は拒絶理由通知が来ます。拒絶理由通知というのは、現在の請求項では特許は許可できない、その理由は●●である、というような通知です。

拒絶理由としては、特許法上の発明に該当しない(産業上利用できる発明でない)、新規性違反、進歩性違反、記載要件違反、先後願違反、公序良俗違反などがあります。

新規性違反の場合には、請求項(特許請求の範囲)に何等かの限定をつけて請求範囲を減縮して新規性を出すことになります。あるいは、審査官による先行文献の発明の認定が間違っている、という反論が有効な場合もあります。

拒絶理由対応で一番悩むのが進歩性欠如で、公知の方法で公知の物を処理する、というような組合せ発明の場合、通常は誰でもそれを組み合わせることを考え付く、と言えます。そして、その発明の効果も予想通りの程度ですと、進歩性をどう出すか非常に悩みます。

もし、その組み合わせを考え付くことに困難性があればいいのですが、そうした阻害要因がない場合も多いです。企業の発明の場合は、元々業界内でできていない課題を研究テーマに選ぶので発明が完成すれば進歩性がある、と主張することは比較的容易な場合が多いです。

しかしながら、個人の方の発明の場合、時には、軽く調査したらそのものズバリが先行文献に書いてあったり、一般的な科学的知識から容易に類推できる発明の場合も多いです。

そのものズバリがあれば、それ以外の付加要素がなければ特許にすることはほとんど不可能です。一般的な科学的知識から容易に類推できる場合も特許にすることは非常に困難です。ですから、容易に類推できるレベルからもう1ひねりを加えて、誰でも考え付くものではない発明にブラッシュアップする必要があります。このあたりが弱い個人発明家の方は比較的多いです。

進歩性がある、と言えるためには、その業界内で、それはすごい、と言われるような発明であればほぼ大丈夫です。しかし、ちょっと考えて出てきたアイデアの場合は既に他者が考え付いている場合も多いです。そういう意味で、個人発明家はしっかりと特許調査をすることが必要と思います。

進歩性欠如の拒絶理由への対応としては、組合せが容易に推考できるという拒絶理由に有効な反論ができないと思われる場合は、予想外の効果、または同質の効果であっても際立って優れた効果がないかを探します。

予想外の効果、または際立って優れた効果があれば、それを主張して、審査官が効果を認定すれば、特許査定になることもあります。

予想外の効果の主張は日本に限らず、欧州特許庁(EPO)や、中国(SIPO)の審査でも使えます。欧州ではsurprising effectがあれば進歩性(inventive step)があるとされます。米国特許庁(USPTO)は効果で主張すると言うよりは構成で主張するのでちょっと書き方を変える必要がありますが、予想外の効果があれば構成上の違いと結びつけて主張できます。

最近は、明細書に網羅的に記載することが多くなり、先行文献に何等かの動機づけになりそうなことが書かれている場合が多いです。これは一般的な言葉でいうと、これを見ればやってみるよね、ということです。

そして、阻害要因を主張しても、「でも、やっぱりやるよね?」と審査官に言われてしまうと、動機づけがない、という反論は認められないでしょう。

そういう場合も含め、発明の動機づけがある、として進歩性違反の拒絶理由を受けることが非常に多いです。今後も特許出願や学術論文は増え続けるでしょうから、進歩性違反の拒絶理由が出る可能性がどんどん増えて行くと思われます。

そういう意味では、出願時から進歩性違反の拒絶理由を想定して、予想外の効果がないか、考えて、データを出して、その効果について、少しでも特許出願時の明細書に記載しておくのがよいです。

少しでも記載しておけば、後からデータを提出して効果を主張できますから。

参考判例:偏光フィルム事件判決(知財高判平成17・11・11平成17年(行ケ)第10042号)

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弁理士受験生が減少傾向と企業内弁理士の増加と出願料金

弁理士試験は昔は難関試験で、私が受験していた頃は合格率2.7%で、合格率2.8%の司法試験よりも倍率が高かったこともあります。

それというのも、合格者が100人位で、この位の人数だと、毎年優秀な人100人が合格して抜けていくとしても、毎年自分より優秀な人が100人新たに参入してきたら、いつまでも受からない計算になります。実際100人程度は優秀な人材が参入していたと思います。ですから、いくら勉強しても合格できないので諦めて別の試験を目指すようになった人もいました。

弁理士受験塾の答案練習会等でトップクラスの人でも何度も不合格になって司法試験の方に移ったという人もいました。

浪人生にも25浪という人もいて、非常に難しい試験でした。

しかし、試験に合格さえすれば、独立して年収2000万円が平均の時代でしたから、何年もかけて合格する価値は十分ありました。資格さえ取れば、人生大逆転ができたわけです。プラチナ資格だったとも言えます。

しかし、このところ、合格して弁理士として独立してもとても年収2000万どころか、食べて行くのがやっと、という弁理士も多いようです。年間売上が100万円にも満たず、廃業した弁理士もいたそうです。

独立開業すれば、仕事が無ければ収入はゼロです。田舎で開業してお客さんがいなければ、年商100万円も行かないことも十分あり得ます。これでは事務所を維持することさえできないでしょう。

特許は、出願件数が以前は40万件以上あったものが、今は30万件よりも少なくなり、弁理士数は以前の3倍位に増えているのですから当たり前と言えば当たり前でしょう。

単純計算すれば、年収が3分の1の700万円になる計算です。これでは会社員でいた方がマシでしょう。50歳を超えれば年収1000万程度にはなる会社が多いですし、部長とかになれれば年収1500万円以上もありえますから。

さらに、社内弁理士が増えたこともあって、明細書を社内で書く会社も増え、外部の弁理士事務所に仕事を出さなくなった会社も増えているようです。それも弁理士の収入減に働いています。

さらには、パナソニック等は、自社内で特許出願業務をやる子会社を作って、自社で出願するようにしました。これによっても弁理士事務所への出願依頼数は激減したようです。一部は外部の事務所に出すこともあるようですが。

さらに、将来的にはAI(人工知能)が発達して、明細書チェックをしてくれるようになるかも知れず、そうなれば、弁理士に依頼しなくても研究者が自分で明細書を書けるようになる可能性があります。すると弁理士の仕事そのものが無くなってしまうかも知れません。

そのような事情もあって、弁理士試験の受験者数も減っているようです。この傾向は司法試験でも同様のようで、法科大学院も定員割れで補充募集が20人~30人のところも多いです。

最近の合格者でも、年商100万以下の弁理士が1,2割はいたと思います。そういう弁理士は事務所の家賃すら払えないので廃業したり、企業に再就職したりしていました。

もちろん、経費を引いた後の年収が100万円であれば、まだぎりぎり何とかなる場合もあり得ます。自営業のメリットで様々な費用を経費で落とせるため、それであえて収入を減らしているケースもあるでしょう。

それに、弁理士の仕事は一度出願を受ければ、その後、審査請求、拒絶理由対応、登録謝金と出願後も収入があり、多くの場合、リピートで発注してくれることも多いので、しばらく維持できれば徐々に仕事も増えてきます。さらに、腕がよければ知り合いの会社などを紹介してくれる場合もあり得ます。

そういう意味で、特許事務所は立ち上げさえうまく行けば、後はその顧客を維持するだけでもやっていけるとも言えます。単価を維持できれば、ですが。

ところが、大手の特許事務所はリーマンショックの際に大きな打撃を受けました。研究開発費が7割位に減り、特許部予算も7割に減ると、発明数が減り、知財部としては、従来の特許を維持するための費用は削れませんから、新規出願を絞るようになります。すると新規出願数が5割などになり、それに加えて経費削減、値下げ圧力が強まり、弁理士にとっておいしい仕事はどんどん値切られるようになっていきました。

多くの所員を抱えていて、解雇しない方針の大事務所や中規模事務所はボーナスを無くしたり、いろいろご苦労されていました。

私もある事務所の所長が毎週のように所内ミーティングで、「売上が足りない」と怒っていたのを思い出します。毎週そんなことを言われるのは営業マンの売上会議みたいですごく嫌でした。

それとともに、企業内弁理士が増えて、明細書を内製する動きが広がってきたことによっても特許事務所への出願依頼数が減っているように思います。年間数十件程度の出願であれば、弁理士が1人で書ける量と言えなくもありませんから、社内に明細書を書ける弁理士がいれば内製化する会社もあると思われます。

とはいえ、特許事務所は常に明細書を書いていますが、企業内弁理士は戦略を考えたり、訴訟や契約、調査など明細書を書いてばかりいるわけではないので、特許事務所の弁理士ほど特許庁とのやり取りは多くはなく、ケーススタディ量としては、特許事務所よりも不足する場合が多いので、弁理士のように最新ノウハウを駆使して明細書を書けない弁理士も存在すると思われます。

それを考えれば、専門の特許事務所に依頼するのも一つのやり方でしょう。ダブルチェックにもなりますし、責任問題になれば特許事務所の弁理士が悪い、と責任を押しつけることもできます。

それでも、時間が取れるなら社内で明細書を内製するのも一つの考え方でしょう。特に、製薬企業などで、年商数千億円のブロックバスター医薬の特許の場合は、ミスがあれば、数千億円の売上げが無くなるおそれもあり得ます。

そのような場合は、知財部員が開発者と何ヶ月もかけて何度もやり取りして数百ページの特許明細書を書き上げる場合もあると思います。そのような重要な特許については、製薬企業の優秀な社内弁理士が何十にもチェックする方が特許事務所に依頼するよりもいい明細書が書ける場合もあると思われます。

しかし、企業の知財部の本当の役割は知財戦略を立て、交渉し、自社に有利な契約を締結することではないかと個人的には思います。

明細書をいつも書いているのではない人が書いた特許出願やPCT出願を自社でした後で、拒絶理由が来てから特許事務所に依頼される場合もあるのですが、正直拒絶理由対応が難しいことがかなりあります。最初にきちんと明細書を書いてないと後からは追加できないですから、どうしても狭い権利範囲しか取れないか、拒絶査定を受けて拒絶査定不服審判で争うことになり、費用がかさみます。

そういう意味で、自社出願しておいて、後から特許事務所にその後の対応を依頼するのであれば、最初から特許事務所に出願を依頼した方が結局はいい特許が取れて費用対効果がよいのではないかと思います。

また、出願後は自分でやりたい、という個人の方もおられますが、拒絶理由対応はやる人の腕によって全く結果が異なりますので、ご自身で応答することはお勧めできません。素人の場合、もっと広い権利が取れるところを非常に狭く補正してしまうケースが多いからです。

それらを考え合わせると、最もいいのは、自力で完璧と思える明細書を作成し、それを特許事務所に送ってチェックしてもらった上で出願するのが一番確実と思われます。そうすれば、自社の明細書ノウハウも含まれ、さらに、特許事務所の最新ノウハウも組み合わせて最強の明細書になると思われます。

大平国際特許事務所でも、最強の明細書を作成することが可能です。お気軽にご相談下さい。

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特許権の侵害鑑定

自社特許を他社の製品が侵害している可能性があったり、他社特許を自社商品が侵害している可能性がある場合があります。

もし、他社が自社の特許権を侵害しているとわかれば、まずは侵害警告を出すことになります。その際、弁理士か弁護士名で出すと、相手もこちらが本気であることが伝わり、真剣に対応すると思います。

侵害警告を出す場合は、弁理士が他社商品(イ号製品)が特許権の技術的範囲に属するか?と鑑定する場合が多いです。

逆に、自社商品について他社から侵害警告を受けた場合も弁理士に鑑定を依頼するとともに反論することになります。

この鑑定ですが、通常、特許権の請求項を各構成要件に分解して、イ号製品が全部の構成要件を満たすかどうかをチェックしていきまし。

もし、1つでも構成要件が抜けていれば、直接侵害にはなりません。

直接侵害でないとしても次は間接侵害の可能性についてチェックします。間接侵害の場合は、その製品が発明の実施に不可欠なものであったりすると、該当します。もう少し正確に言うと、下記の条文のようになります。

条文はとっつきにくいかも知れませんが、じっくり注意深く読めば大体わかると思います。

(侵害とみなす行為)
第百一条  次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。

 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明によ る課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等 若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為
 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明 による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲 渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為


そして、直接侵害、間接侵害のいずれにも該当しないとすれば、侵害には該当しない、という鑑定になります。

しかしながら、特許権の鑑定はどうしてもグレーゾーンがでてきてしまいます。逆に明らかに侵害、または明らかに非侵害であれば、争いになりようがありません。グレーだからこそ争いになるわけです。

ある程度明らかな場合は、訴訟まで行かずに和解で解決するケースも多いです。

どちらも一歩も引かないで訴訟に至る場合もあります。それは、どちらの代理人も自分の方が正しい、と自信を持てる場合が多いです。特殊なケースを除いて。

ともかく、侵害している可能性があれば、早めに弁理士の鑑定を依頼することをお勧めします。

特許にするのが非常に難しい発明の特許申請

特許申請の経験がほとんどない企業から特許の依頼を受ける場合もあります。

そういう場合、例えば、コストカットする発明とか、既に売られている材料の中から一番いい材料を見つけた発明などを特許化したい、と言われることもあります。

コストカットできる材料を見つけたと言っても技術的な特徴がなく、単に安い商品を見つけた、というだけでは特許にはなりません。

公知の材料の中から最適な材料を見つけた、というだけでも特許にはなりません。

しかし、それに加えて、予想外の効果や、質としては予想の範囲内でも際立って優れた効果(程度の非常に高い効果)があれば、特許になる場合があります。

つまり、誰でも考え付くような組合せであっても、予想外、または際立って優れた効果があれば、進歩性が認められて特許になる場合があります。

ですから、普通に考えたら進歩性がない、と思われる発明であっても、非常に優れた効果があれば特許にできる場合がある、ということです。

少し考えて、これは進歩性がないから特許出願は止めておこう、というのではなく、何か特殊な効果はないか?ということを常に意識すればよいと思います。

そうすれば、意外性のある効果が見つかったりします。そしたら、それを主張して進歩性無の拒絶理由を解消できる場合があります。

この効果というのはちょっとしたものであってもそれによって特許査定になる場合があります。

拒絶理由通知に驚いた

最近、ちょっとおかしな拒絶理由が来るようになった気がしています。

以前は全く的外れの引用文献が来ることはよくあり、どこかに外注したのをそのまま拒絶理由として使っているのかな?と思ったことはありました。まぁ、これは止むを得ないと納得していました。

しかし、最近見た拒絶理由は、審査官がその方法を知らないから実施可能に書かれていない、というものでした。審査官はその測定方法については2種類しかないから、明細書に記載の方法(第3の方法)は実施可能に記載されていない、と言って来ました。

しかしながら、明細書に記載の方法は何十年も前から確立している方法で、それをそんな方法はないから実施可能ではない、と指摘されたのはちょっと驚きでした。もちろん、昔からある方法であることを主張して拒絶理由は解消しました。

最近、特許庁では無効になる特許を認めたくないのでしっかり審査する、という方向になっているようです。それは、昨年に審査で3年後の請求と7年後の審査請求の重複部分がようやく無くなってある程度審査に余裕が出て来たからのようです。

そこで、審査官の判断がよりしっかり出るようになったのではないかと推測しています。それ自体は歓迎すべきことで、丸投げの調査結果で全くピント外れの文献を理由に拒絶理由を打たれるよりはマシです。今回の拒絶理由も審査官本人の判断であると思われます。

ただ、だからと言って、自分が知らないからそんな測定方法はありえない、実施できない、というのはちょっと自信を持ち過ぎではないかな?という気がしないでもありません。

ちょっとGoogle検索してもすぐに出て来るような測定方法を、自分が知らないから存在しない、だから実施不可能、と言われて、もう数十年前からある、と反論したらすぐに拒絶理由を引っ込められました。

知らないから実施不可能である、というのはできれば止めて欲しいです。教科書的な説明をするのはかなり手間がかかりますから。その測定方法は原理的にこういう問題があるから実施不可能、というならまだわかるのですが。

とはいえ、アメリカや欧州の審査官もバラツキがあり、専門分野も多様化していますから審査官が知らないことがあってもしかたないとも言えます。中国なんかもっとひどい気がしています。完全に論理的、科学的に間違った補正指令が来たこともあります。しかもその補正を受け入れれば特許査定する、というのです。

驚くこともありますが、世界中の特許庁からどんな変な拒絶理由が来てもきちんと対応して拒絶理由を解消できるようにしたいと思っています。そのあたりは当所はかなり得意です。他所のベテラン弁理士がこれは特許にならない、というような特許出願、拒絶理由でもいくつも特許登録査定にしていますから。

例えば、同じ事務所の他の弁理士がやったら、2ヵ国で放棄せざるを得なかった案件が私がやれば、別の2ヵ国(欧州と日本)で特許になった例もあります。それほど弁理士によって腕が違うことは知っておくべきだと思います。

大平国際特許事務所は、難しい拒絶理由に対して知恵を出して特許化するのが得意ですので、非常に難しい拒絶理由が来たらぜひ当所にご相談いただければ、と思います。

 

特許の価値を上げるには特許侵害訴訟?

特許部(知財部)をコストセンターからプロフィットセンターにしたい、というのは多くの会社が目指しているところでしょう。

しかし、直接利益を生む事業部と違い、事業部が事業で成功しなければ特許出願していても無駄になります。

例えば、ある製品を守るために複数の特許や意匠、商標等を出願し、鳴物入りで発売したにもかかわらず、早い時には3カ月、普通なら半年~1年、長くて3年位で終売になって製造中止になることもありえます。

するとせっかく特許出願や意匠登録出願して参入障壁を作っても製品がなくなるわけで、その製品しか守れない特許は不要になります。

そういう意味では、特許で利益を出すには、製品のマーケティング的な成功が前提になります。

しかしながら、商品開発で成功するのは1000に3つとか言われ、すると全部に特許出願すると1000件の特許出願になり、そのうち製品としてヒット商品になるのが3つになります。

その場合、費用的には、1000件の出願費用が30×1000で約3億円、ヒット商品が100億売れて、利益が10%で10億円の利益、このうち、独占販売による利益が100%なら10億ー3億で7億円のプラスになる、とも言えます。

そういう意味では、わずかなヒット商品であっても数十億規模の売上が得られるのであれば、特許出願はコスト対効果がプラスになる、とも言えるでしょう。

しかし、私はそれだけでは十分特許で利益を生み出しているとは言えないように思います。やはり、特許は侵害警告や侵害訴訟で使ってこそ抑止効果があるので、知財部としては、侵害を発見したら、それを止めさせるために特許を活用すべきではないかと考えます。

米国の特許訴訟では、、数十億円以上、時には1000億円以上の賠償金を請求されることもあります。日本でもそうした巨額の賠償訴訟があれば、特許部(知財部)が何百億円稼いだ、ということでプロフィットセンターのような立場になれるのではないでしょうか?

もちろん、日本は訴訟文化の国ではないですし、会社の方針として自分から侵害訴訟はしかけない、受けて立つだけ、という方針の会社であれば、また違った形でも特許権活用の方法があると思いますが。

ただ、特許は持っているだけで無言の抑止効果がある、という面もあるので、そのあたりを考慮すれば必ずしも訴訟まで持っていかず、警告状だけで止めさせられればそれに越したことはないのかも知れません。

プロダクト・バイ・プロセス・クレームの特許出願

最高裁判決(平成24年(受)第1204号、同2658号)を受けて、特許庁は7月6日からプロダクト・バイ・プロセス・クレームの審査を変更しました。

プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、製造方法でしか特定できない事情があることを明細書に記載していないと拒絶理由が出されます。それに対して特許出願人が上記の事情を説明すれば審査官が疑いを抱かない限り反論が認められ、他に拒絶理由が無ければプロダクト・バイ・プロセス・クレームで特許が成立するようです。

これから製造方法で物を特定する場合は、上記のような「不可能・非実際的事情」があることを主張することが必要となります。「不可能・非実際的事情」とは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情をいいます。

ここで注意しなければならないのは、構造や特性で特定できない、という主張をしながら、一方で物質クレームを立てている場合です。一方で、物としては特定できない、と言ってプロダクト・バイ・プロセス・クレームで権利化しながら、他方で、物としてもクレームしているとすれば矛盾した主張となるからです。訴訟では禁反言とされる可能性もあり得ます。

ですから、今後はできる限り物質で特定するのがよいと思います。その方が侵害の立証もしやすいですから。

今後は安易にプロダクト・バイ・プロセス・クレームを使うのは止めた方がよいかも知れません。できるだけ物質として構成で表現するのがよいと思います。

1ヶ月ほど表示されませんでしたが特許出願依頼のブログが漸く復旧しました

このワードプレス・ブログにしばらくアクセスできない状態が続いていて大変申し訳ございませんでした。約1ヶ月位悪戦苦闘しましたが、なかなか復旧できませんでした。

理由は、これを置いてあるサーバー(Xrea)が大幅リニューアルをし、その際1つのサーバー(s352)だけMySQLデータベースが引き継げなかったようで、データベースが空になってしまったためです。他のサーバは特に問題無く表示されていました。

そこでワードプレスの引っ越しのやり方などいろいろ調べてやってみたのですが、以前に吐き出したdump fileを使うことで漸く復元することができました。ただ、dump fileが700M近くあって、ワードですらファイルを開けることができず、苦労しました。また、これだけ大きいとそのままでは、サーバーへのアップロードもままならないです。

結局、あるテキストエディタが巨大ファイルを開いて編集できることがわかり、それを使って不要な部分を削除することで、データベースをサーバーにアップすることができ、何とか復旧できました。アクセス解析のログがMySQLデータベースのかなり大きな部分を占めていたのがわかりました。

アクセスしようとして見れなかった方がおられたらご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

今回のような事故が起こることを想定して、サーバーの引っ越しも含めて今後は対策を取る予定です。MySQLのテキストも購入し、SSH接続(telnetのようなもの)も使えるようにしました。また、巨大なMySQLデータベースを編集できるソフトウエアも見つけました。

もう1つ同じサーバーに置いてあって復旧していないブログがあるので、そちらはSSH接続してコマンドベースでデータベースを復旧するしかないと考えています。データベースプログラムを勉強するいいチャンスと思って研究してみます。

また、こまめにコメント欄のスパムコメントを削除しないと大量のメモリーを使ってしまい、復旧が難しくなることもわかりました。

さらに、これを機会にこれまでバージョン3.4を使っていたのを最新版のワードプレスに更新しました。

これにより、セキュリティも強化され、プラグインも最新のものが使えるようになりました。

今後とも特許出願依頼ブログをよろしくお願い申し上げます。