特許審査を世界最速・最高に

特許庁が、特許出願の審査を世界最速かつ世界最高品質にすることを目指すそうです。

特許出願から10ヶ月以内には、審査に着手するということで、現状の審査請求後、1.5年から3年位して最初のアクションがくるのに比べてかなり早いですね。

特許出願から審査開始までの期間を11カ月から10カ月以内に短縮し、権利化までの期間を30カ月から14カ月以内に半減させるそうです。つまり特許出願から約1年で権利化できることになります。

時は金なり、ですから、既に販売している製品に張り付いている特許はすぐにでも権利化できれば嬉しいですね。

特許審査「世界最速・最高」に

ただ、審査で権利範囲が狭まったり、拒絶査定が早く確定すると困る場合もあり得ます。例えば特許出願についてライセンス中で、審査の結論が早く出て欲しくない場合もあり得ます。そういう場合は、審査請求を遅らせることで対応可能なのでしょう。

審査を早くするのはいいのですが、それだけではなく、権利範囲もより広くて強いものにして欲しいです。狭い権利を早く取れても仕方ないので、広くて強い権利を早く取れるようにして欲しいものです。

そしてできれば、懲罰的賠償制度、例えば、3倍賠償制度を導入し、特許権者に有利な制度にすべきでしょう。

さらに、弁護士も増員し、成功報酬制弁護士が増えるようにして、特許紛争も簡単にできるようにするのもよいと思います。

特許性(進歩性)が無い、と自白する特許出願明細書

特許出願するからには、特許を取ることが目的のはずですが、ときどき、自分から特許性がない、ということをわざわざ記載している明細書があったりします。

有名な話では、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授のiPS細胞に関する特許出願で、ヒトではコロニーが得られなかった、という実施例の記載がありました。

普通に考えたら、ヒトではうまく行かなかった、と書いてあるわけですから、特許は登録されないのですが、特許庁からの拒絶理由に対して、コロニーは得られなかったけど、iPS細胞はできていて、増殖しなかっただけだ、という反論をして、それが認められて特許登録されました。

もう少し詳しく言うと、iPS細胞の生成ステップと増殖ステップを分け、ヒトではコロニーは得られなかったが、ヒトiPS細胞自体はできていて、増殖しなかったためにコロニーが得られなかっただけだ、と反論し、それが認められています。これは、米国、欧州でも同様に認められています。

山中伸弥教授の場合は、優秀なスタッフや優秀な弁理士チームが対応したので非常に不利な状況でしたが、うまい理屈を組み立てて特許化できました。

しかし、普通の人が、●●できなかった、と実施例に書けば、その部分は発明として未完成なので、その特許出願の権利範囲には入らない、と自白しているようなものです。

ですから、できなかった場合は、正直にできなかった、と書くのではなく、何も書かない、という戦略もあると思われます。

有意差が無いというデータの場合に、このデータには有意差はない、と書いてしまうと、そのデータは特許性の判断では評価されないおそれもあり得ます。

科学の世界では正直であることが求められますが、特許出願の場合には必ずしもすべてを正直に書けばそれで足りる、というものでもありません。法律の世界では黙秘権も認められるので、わざわざ不利になるデータも記載して権利範囲を狭くする必要はありません。

さらに言えば、実験してないから、この部分は権利は要りません、というのは、科学者としては非常に立派な態度ですが、特許で争う場合には、穴だらけの特許しか取れず実効性がない場合もあり得ます。

そういう意味では、法律と科学の両方にまたがる特許はある意味グレーゾーンともいえ、純粋科学とはちょっと異なる発想が必要な場合もあるのかも知れません。

学部卒業生がいきなり知財部に入るのは?

このところ、弁理士試験を勉強していて、卒業後も何もせずに、試験勉強だけをして弁理士試験に合格する人もかなり増えているそうです。

そういう人が企業の知財部にいきなり配属されるケースもあると思われます。そこでちゃんとオン・ザ・ジョブトレーニング(発明発掘から特許出願、特許調査、特許期限管理、ライセンス交渉、契約書作成等)ができるのであればそれでもよいと思われます。

しかし、昔は知財部に行きたい、という学卒でもまずは研究所に数年いてから知財部に異動させる、という会社が普通だった気がします。そうすれば、研究所の所員の顔も覚え、発明発掘もやりやすくなるでしょう。

もちろん、いきなり知財部に行って、すぐに弁理士試験に合格し、弁理士としてバリバリ活躍する人もいるようですが。

やる気があれば、最初から知財部に行って出願だけでなく、訴訟等も手がけるのがよいと思われます。そういう人は知財部にいてもいいでしょうし、知財部を辞めて独立しても成功できるように思います。

要は、人とのコミュニケーションがきちんと取れ、やる気があるのであれば、新卒で知財部に入るのもそんなに悪い選択ではないように思います。ただ、弁理士資格を持っていても、海外の特許制度についてはほとんど知らないわけですから、5年位は修行期間と思ってできるだけ多くのことを学ぶようにするのがよいように思います。自分は弁理士だから偉い、と思っていても、何十年も知財にいる人の方が知恵がある場合も多いですから。

欧州特許出願と出願維持年金(renewal fee)

欧州への特許出願は欧州特許庁(European Patent Office, EPO)に対して出願することもできますし、各国に個別に直接出願することもできます。

製薬企業等は、イギリス等には個別にパリ条約で出願したりする場合もあるようです。

また、フランスは無審査なので、確実に特許にしたい場合はフランスに直接出せば無審査で登録されます。

欧州特許庁に審査してもらいたい場合は、冒頭にも書いたように、欧州特許庁EPOに特許出願します。通常は、PCT出願からの移行が多いと思われます。

欧州特許庁に出願する場合の一つの問題は、出願維持年金というのがあり、結構高額、ということです。3年目から毎年renewal feeがかかります。

3年目  465(ユーロ)
4年目  585
5年目  810
6年目  1040
7年目  1155
8年目  1265
9年目  1380
10年目  1560

為替が1ユーロ140円とすると、6万円~20万円位かかることになります。これが何もしないのにかかるので、ちょっと変な気もしますが、EPOも財政的に苦しいのかも知れません。あるいはヨーロッパの貴族的なところがあるのか・・・?

いずれにしてもクライアントも5年目くらいになると、10万円近い出願維持年金を取られると、何でやねん、と怒り出す人もいたりします。ですので、早めに早期審査を願い出るか、PPHをかけるのがよいと思います。