農林水産省の革新的技術創造促進事業の公募と特許申請

農林水産省(農水省)が、農業や食品開発を対象に補助金を出しています。

最大1億円で3年間もらえます。応募締切は6月10日です。

農林水産省の革新的技術創造促進事業

ただ、開発に成功したら、その利益の中から一部を納付する制度です。ですから、確実に成功できる、という確信がある技術開発は自社のみでやった方が利益が大きくなる可能性があります。

しかし、逆に失敗する可能性が高い、あるいは、かなり冒険的なチャレンジなのでリスクも高い、というようなテーマの場合は、国の補助金を使ってフィージビリティ・スタディ的なことをやるのも一つの考え方でしょう。

失敗した場合どうなるか?ですが、その場合には、もらった額の10分の1を返還する必要があります。例えば、1億円もらって開発を行い、開発がうまく行かず、製品が売れなかったら、補助金の10%を返還すればいいだけです。

以前は補助金の3割を返還していたのでかなりのリスクでしたが、今回は1割を返還すればよいようです。ただ、返還の条件まで熟読したわけではないので、場合によってはもっと返還が必要になるかも知れません。そのあたりも含め、応募要項を十分読まれることをお勧めします。

このような補助金を使って研究開発し、特許を出願して権利化できれば、それは会社の資産になります。そして、場合によっては、ずっとライセンス料をもらい続けたり、訴訟になったときの反撃の武器になったりもします。

ご興味のある方はこちらをご覧のうえ、ぜひご検討下さい。そして、参加するからには、毎年数件特許出願をするような計画を立てるのがよいと個人的には思います。でないと製品が売れなかったとき、何も残りませんから。
農林水産省の革新的技術創造促進事業

欧州特許出願の予備的請求(Auxiliary requests)

欧州に特許出願した場合、最初に欧州調査報告(サーチレポート)が来ます。このときから応答に予備的請求(Auxiliary request、副請求ともいう)が使えます。

予備的請求(Auxiliary request)とは、補正案を何個も出せる制度です。この場合、一番広いものから順に減縮した案を作成して提出します。それぞれ全く異なるクレーム案をいくつも出せるというわけではありません。また、異常に多くの案を出すと拒否される場合もあります。

通常は、3~4程度、複雑な事案なら20個程度までは出せる可能性があります。

特許出願人としては、一番欲しい広い権利から順に減縮した補正案を作り、それぞれのセットに対して審査官が特許性を判断していきます。あるいは、意見書のみでの応答、次に減縮補正、さらに限定した減縮補正などの案を出すことができます。

これにより、何度も応答せずに1回で全ての案を出すことができ、審査の促進に役立つと考えられます。

上から順番に審査して行って、どれかの案で特許性有り、となれば、それ以下の予備的クレーム(Auxiliary rclaims)は審査されません。

この制度は、審査官が審査をよりやり易くするためのものだそうです。

しかしながら、最初から減縮した案も出すので、審査官も、これなら簡単に特許査定を出せる、というクレームを見ながらその上位のクレームを審査するので、最初から落としどころを見透かされる恐れがあります。

とはいえ、Auxiliary claimsを3つ位提出してもことごとく、拒絶理由が解消しない、と言われることもあります。そういう場合は、何度もAuxiliary claimsを提出することもあります。

例えば、口頭審理召喚通知が来た場合は、かなり先に口頭審理日が設定されており、それまで何回もAuxiliary claimsを提出しても拒絶理由が解消せず、結局口頭審理の場で特許になったケースもありました。

また、単なる限定的減縮であれば、Auxiliary claimsを使わなくても、従属クレームで限定していくことも可能です。

予備的クレーム(Auxiliary claims)を使う場合、補正案、意見書案もセット毎に作りますから、それだけ費用がかかることになります(欧州の代理人はタイムチャージの場合も多いですから)。

予備的請求(Auxiliary requests)をすべきかどうか迷ったら、欧州の代理人に聞くよう担当の弁理士に依頼するのも一つの方法でしょう。微妙なケースなら的確なアドバイスをしてくれると思います。

大平国際特許事務所でも予備的請求(Auxiliary requests)による対応も可能ですので、お気軽にご相談下さい。

中国が知財裁判所を来春にも設置 中国への特許出願が増加する可能性

中国への特許出願は、してもきちんと権利行使できるかどうか不安、という理由で躊躇する企業もあった。実際、中国は法治国家ではなく、人治国家であるため、裁判で死刑になっても賄賂を払えば数週間で出てこれる、というような噂もあった。

しかし、最近では、日本からの侵害訴訟も日本の主張が認められるケースも増えてきており、徐々にまともな方向に進みつつあるような印象がある。中国には弁護士が10万人以上いることから、知財に強い弁護士も増えているものと推測できる。

そんな中、中国政府は知的財産(特許、商標等)に関する事件を専門的に扱う知的財産法院(裁判所)を早ければ来年春に設置することを決めたという。

中国では知財訴訟が年間7800件と、500件以下の日本に比べると10倍~20倍あるにもかかわらず、知財専門の裁判所が無かった。そのため、専門家でない裁判官が担当し、審理に非常に時間がかかる等の問題が出ていた。

また、弁護士も10万人以上いるが、知財法も整備もようやく整って来た段階なので、知財専門の弁護士はおそらくあまり育っていないだろうし、判例も十分蓄積していないと思われる。

知的財産法院はまず、上海と広州に作り、その後全国に広げるという。

知的財産法院ができることで、知財専門の裁判官が育成でき、より専門性の高い裁判官が審理することで、審理がより迅速で妥当なものになることが期待される。

しかし、法治国家ではなく、人治国家と言われる中国が、果たして裁判で法に基づく公正な結論を出せるかどうか、注視していく必要があると思われる。日本や先進国のように3権分立ではなく、司法も共産党の指導下にあるため、不公正な判決が出る可能性がないとは言えない。

中国はこの知的財産法院設置によりFTAに参加することを狙っているようだ。

職務発明を法人帰属へ 職務発明制度見直し論議が本格化

職務発明は、企業の研究者がその職務として発明した場合に会社に、特許を受ける権利を会社に移転させ、その代わりに発明者に相当の対価を支払う、という制度です。従って、特許出願人は会社となります。

この制度は普通レベルの研究員には妥当でしょうが、途方も無い大発明をした場合に問題になります。例えば、青色発光ダイオードの中村修二さんのように、年間1000億円を超える利益を会社にもたらした場合に、その相当の対価はいくらになるか?の算出基準が難しいです。

ライセンスした場合はキャッシュで明確に額がわかるので、その何%(通常企業ではもっと低いと思われますが)を支払う、という規定にしておけば、例えば、1%ならライセンス料1億円で100万円もらえる、と明確になります。

しかし自社開発、製造、販売の場合は、発明だけでなく、その後の製造工程やマーケティング、営業マンの能力なども関与してきますから、それらを差し引くと、発明者の貢献が相対的に低くなり、発明者が相当と思う額を支払われないケースも多くなると思われます。

逆に、技術的には大した発明ではなくても、たまたま時代にマッチしたというだけで何百億円も売れてしまう商品もありえます。それはむしろマーケティング企画の手柄であって、発明者の貢献は低いでしょう。

こうした例を見るまでも無く、職務発明の対価がいくらが相当かは、かなり難しい問題です。そのため高額訴訟が提起され、企業が億単位の対価を支払うケースもあります。

企業としてはそうしたリスクを避けたいので、職務発明は全て企業に帰属させる、という形を望んでいるようです。それにより、職務発明訴訟のリスクが減る、と考えているようです。

しかし、研究開発型の大企業はかなりしっかりした報奨制度を作っているようです。そのため、数千万円以上の高額の報奨金をもらうことも可能になっているので、職務発明訴訟のリスクは低くなっていると思われますしそのような制度があることで、研究者のインセンティブも高く保たれると思われます。

ですから、最初から企業に帰属させる法制度にしても、社内規定で発明報奨金を残す企業も出てくると思います。それは言わば成功報酬みたいなものですから、企業にとっても儲かった中から支払えばいいので、リスクにはならないでしょう。

そして、職務発明報奨制度も優秀な研究者が入るかどうかの選択の基準になる可能性もありえます。

そういう意味では、職務発明制度の法律を廃止したとしても、職務発明規定を残す会社も出てくると思います。

ですから、職務発明制度について法律で定めるのではなく、入社時の契約で企業ごとに個別に決めるのがよいのではないかと思われます。

職務発明制度が不要、という企業は最初からそれがないことを明確にし、社内営業など、ごますりが苦手で、ちょっと変わり者だけど、発明、アイデアは抜群に得意な人は、他の会社に行くように促す、というやり方もあるでしょう。