欧州統一特許と欧州統一裁判所

欧州特許が2015年位から欧州統一特許に変更できるようになりそうです。

これは特許出願が登録査定になり公報が出てから1カ月以内にvalidationの手続きをすれば、欧州特許が欧州統一特許に変化するというものです。

ですから、特許出願の審査はこれまでと全く同じです。登録後に従来どおりの欧州特許を選択するか、欧州統一特許を選択するか?を選ぶ必要があります。

オプトアウトというのをやると、欧州統一特許にならずに済みます。

欧州統一特許の場合、裁判管轄が決まってしまいますし、セントラルアタックのように1回負けると全部消滅してしまいます。

欧州特許の場合は、各国の権利なので、ある国では無効になったけど、別の国では有効、ということもあり得ます。

そういう意味では、欧州統一特許が全ての面でメリットがあるわけでもなく、用途に応じて選択すべきでしょう。

例えば、ある特許出願は何とか特許になったけど、無効審判で無効になる確率が高い、と判断すれば、従来型の欧州特許にして各国毎に権利化するのも一つの考え方でしょう。

ただ、税関で水際で差止めしたい場合は、欧州統一特許にしておけばベルギーも自動的にはいりますから、アントワープの港で差止めできるので効率よく水際規制ができます。しかし、そうでない場合は、かならずベルギーに国内移行しておく必要があります。

欧州統一特許のもう1つの問題は、特許の維持年金です。25か国分の年金を支払うとすると、1か国1万円でも25万円になります。企業にとっては大した金額ではないですが、中小企業にとってはかなり苦しいと思います。この維持年金がいくらになるかによって欧州統一特許が利用されるかどうかが決まりそうな気もします。

 

 

難しい拒絶理由への対応と先行発明の本質を捉える力

特許出願をして審査請求をすると、いきなり特許になる場合もありますが、多くの場合は拒絶理由通知が来ます。

その拒絶理由のポイントと、引用文献のポイントを的確にとらえることができると、その差が的確に把握でき、拒絶理由に的確に反論でき、拒絶理由を解消して特許査定を得ることができます。

あるいは、差が全くない、という場合もわかります。その場合は、諦めることになります。これは例えば、大学の先生が、特許と全く同じ論文を出願前に出していて、新規性喪失の例外適用を忘れたような場合です。さすがに、発明者本人の全く同じデータが既に公開されていれば新規性がありませんから、登録はほぼ不可能です。

そのようなケースでも、明細書に新たなデータが含まれていれば、その部分で権利化できる場合もなくなないですが。

この拒絶理由と引用文献に記載の発明の本質を一瞬で捉える力が弁理士の腕、と言ってもいいでしょう。これは科学者としての能力がかなり重要です。研究者歴がなく、特許実務のみやってきた人にはそのような本質部分わからない人もかなりいます。研究者でも、論理の穴をパッと気づく人もいれば、気づかない人もいます。

特許事務所の新人だとこの先行文献に記載の発明との差異にを見つけるのに時間がかかります。最初の頃は1つの拒絶理由に応答案を作るのに1週間位かかったりします。これは、拒絶理由が何を言っているか、どう反論すればよいか、のポイントがわかっていないからです。

反論するには、法律的な知識や法律に当てはめて説得力のある論理を作り上げる力が必要になります。こちらは特許実務でマスターできます。

こういう拒絶理由に対してはこう反論する、そのためにはこういう根拠が必要、だからその根拠を見つける、というのが一瞬でできるようになると拒絶理由への応答が1時間以内でできる場合もあります。

そういう拒絶理由だと応答するのも楽しいです。もちろん、拒絶理由の本質を的確にとらえることで特許査定率も上がります。

大平国際特許事務所は、この拒絶理由への反論を得意としており、「えっ、あれが特許になったの?」と驚かれることがよくあります。所長の大平は、難しい拒絶理由ほど闘志を燃やして何とかして特許にしようとします。妖刀村正のような切れ味の頭脳をフル回転させ、針の穴を通すような、ウルトラCを駆使して特許にすることもしばしばあります。

難しい拒絶理由だと思ったらぜひ当所にお気軽にご相談下さい。

大平国際特許事務所へのご相談はこちらからお気軽にどうぞ

大学で知財講義 特許出願、特許要件、侵害訴訟など

先日某大学の大学院で知財講義をやってきました。1時間半2コマで合計3時間の講義です。

最初のコマでは、最近の知財の話題から始まり、大学知財の問題点、特許出願の手続き、審査、等の手続き論、何が特許になる発明か?や新規性、進歩性、先後願、不特許自由、記載要件などを話しました。

また、高額訴訟の例として、ファイザーvsランバクシーの事例を話しましたが、あんなちょっとしたことで数千億円の損失が出るおそれがある、ということがわかって面白かった、という感想をもらいました。

やはりお金に関する部分は学生さんも興味がわきやすいようです。

あまり過剰な期待を抱かせ過ぎても問題があるかも知れませんが、次回からはもっとお金が絡む話を入れてみようかと思っています。

他の講師の方は企業の知財部の方が多く、それよりも弁理士の私の話が面白かった、という感想をいう学生がかなりいたようです。

企業の方が仕事のスケールも大きいし、実際の事業の話が聞けるのでよほど面白いはず、という印象を持っていましたが、特許事務所の弁理士の話の方が面白かったというのは意外でした。

自社の話ではなく、他社も含めて面白い話をピックアップして話したのがよかったのかも知れません。

また、今回は、プロメテウス事件で発明適格性の話から入ったのですが、そのあたりはわかりやすく、入りやすかったかも知れません。その前にアップルvs日本の個人発明家の斉藤さんのニュースのコメントがFLASHに掲載された話をしたのもわかりやすかったかも知れません。

来年も役に立った、と言われるよう、さらにいい情報を集めようと思います。

今回かなり評判がよかったので、他の大学や大学院、公的研究所、企業での講演も考えています。ご依頼は上のメニューバーのお問い合わせからお気軽にどうぞ。

南條進藤特許事務所と提携

大阪に南條進藤特許事務所という事務所があるのですが、大平国際特許事務所はこの南條進藤特許事務所と提携しました。

(2016年追記:南條進藤特許事務所はその後名称が変更になり、現在では、提携関係ではなく、大平国際特許事務所とは完全に切り離して仕事をしています。2016年以降、南條進藤特許事務所の後継の事務所に依頼しても私(大平和幸)が受任するとは限りませんので、私への依頼は、全て大平国際特許事務所宛にお願いいたします)

南條進藤特許事務所は私も含めると、弁理士4人、総勢13名で、海外のクライアントも多く外国に強い特許事務所です。分野は化学、バイオ関係が多く、それに関連する器具や装置の出願等も扱っていますから私の得意な専門分野と一致しています。

所長の進藤卓也弁理士とは奈良先端科学技術大学院大学で、企業からの受託研究員として吉田和哉准教授室で机を並べて研究した仲です。机を並べていたのは約1年程度で、その後私は同じ奈良先端大の別の建物の先端科学技術研究調査センターの集中研究室に移りました。新名惇彦先生のNEDOの新エネルギープロジェクトに参加したためです。ここでは、豊田中研、出光石油、王子製紙から研究員が派遣され、私はそこの主任研究員をやってました。

しかし、直接の指導教員の吉田和哉准教授はその後も同じだったので進藤さんとは約4年間程度の交流がありました。その後、私は弁理士試験に合格し、会社の知財部(当時は特許情報部)に転勤になりました。

知財部に移ってしばらくして、奈良先端大が大学法人化に伴い知財本部を作ることになりました。そこで、奈良先端大の特任教授として知財本部で2003年~2007年まで特許出願や契約、ライセンス等の知財業務をしました。

初年度のライセンス収入が東大TLOの初年度の収入を抜いたり、毎年ライセンス収入が数千万円得られたことから、日本の大学の知財本部としては最高の評価を文部科学省からいただきました。予算の一番多いときは1億円以上ありました。

海外ライセンスも行い、ニューヨーク州バッファローにあるバイオベンチャーにライセンスしたことからナイアガラの瀧を毎年見に行けたのは楽しい思い出です。ただ、いつもAUTMの時期に行っていたので、2月か3月で、雪に埋もれていて霧の乙女号にも乗れず、滝壺にも入れませんでしたが。それでも、瀧の水は凍らず流れていましたが。

その後私は、2007年9月末で奈良先端科学技術大学院大学と会社を辞め、事務所を開業しました。

しばらくして、進藤さんも弁理士試験に合格した、という連絡が来ました。で、一度事務所を訪問したいと思っていたのですが、なかなかその機会がありませんでした。

ところが、今年(2013年6月)たまたま弁理士会の研修フェスティバルのセミナー講師を大阪で行った際、再会し、その後、一緒にやることになりました。

ということで、今後大阪の南條進藤特許事務所で実務することが多くなりそうです。週末は川崎に帰ってますので、関東のクライアント様の仕事も続けるつもりですから、関東と関西を往復することになると思います。基本的に弁理士には地域的な制限はなく、私自身も、日本全国から受注してますし、外国からの依頼もあります。

そういう意味では関西、関東の両方に拠点ができたようなもので、今後は、関東だけでなく、関西、そして世界でも活発に活動していく予定です。

 

追記
惜しいことに、指導教官だった吉田和哉准教授はその後ガンが再発し、お亡くなりになりました。とても明るい性格で、研究的にも非常に優秀な研究者で私も彼に会うだけで元気になれるような人でした。ご冥福をお祈りします。

 

ベトナム・マレーシア等東南アジアへの特許出願

東南アジアに特許出願すると、元の植民地等の本国(英国、欧州等)で登録されれば東南アジアの国でも登録される、という国があります。例えば、マレーシアでは、英国で登録されれば登録される、というのを以前やったことがあります。

マレーシアの特許法では以下のように定めています。

第 29A 条 実体審査又は修正実体審査の請求
(2)特許出願においてクレームされている発明と同一又は基本的に同一の発明に関し,特許又は工業所有権の保護に関するその他の権利が,マレーシア以外の所定の国において又は所定の条約に基づいて,その出願人又は前権利者に付与されているときは,出願人は,実体審査を請求する代わりに修正実体審査を請求することができる。

つまり、マレーシア以外の、英国、欧州等の特許庁で特許査定を受けているときは、同じクレームであればマレーシアでも特許が認められる、ということです。

他にも、他国の特許庁の審査を援用する国があり、例えば、ベトナムの場合は欧州特許庁の調査報告に基づいて特許性が否定される、という拒絶理由通知が来る場合があります。その場合は、欧州特許庁のサーチレポート(ESR)の拒絶理由に対して応答することになります。

日本企業でベトナムに出願する場合、欧州にも移行手続きをしている場合も多いでしょうから、欧州でサーチレポートが出た場合にもそれに対して応答しますが、ベトナムでも、同じサーチレポートに応答する必要が生じる場合があります。

これはある意味1回で済むので楽という面もありますが、ベトナムで早めに審査請求をすると、サーチレポートで欧州に応答する前にベトナムの拒絶理由通知に対する応答期限が到来する場合がありえます。

それを避けたい場合はベトナムでの審査請求を期限ぎりぎり(優先日又は出願日から42か月以内)にするのがよいと思います。そうすれば、まず欧州に応答してからそれをそのまま使って提出できますから。

先にベトナムの拒絶理由に対して応答してから、欧州のサーチレポートに応答するのは何となく変な感じがします。欧州のサーチレポートに応答しても、それでそのまま査定が出るわけではなく、その後、また拒絶理由が来て反論できる機会があります。しかし、ベトナムでは、拒絶理由として引用されているので、応答次第ではいきなり拒絶査定が来る可能性もありますから。厳しい方を先に済ませる、と言う意味ではこういうやり方もなくはないのでしょうけど。