ベルギーの技術移転

今日はベルギーの特許技術移転アドバイザーらとのミーティングに参加しました。

そこはベルギーの南の方の大学なのですが、220件位の特許出願中、150件程度をライセンスしていました。非常に高い確率でライセンスしているので、驚きました。

彼らの場合は、PCT出願して国内移行する段階までにライセンス先が決まっていなければ放棄するそうで、それであれば欧州特許庁の出願維持年金もかからないので、コストも増えないようです。

日本の大学の場合は、国内移行期限までにライセンス先が決まらなくても予算さえあれば戦略的に維持するケースもありますが、上の大学では移行しない方針だそうです。

で、ライセンス収入は億を超えていて、特許出願等の費用の約7倍程度稼いでいたので、ビジネスとして成り立つと思われます。

また、スタートアップへのライセンスもしており、そのあたりが日本とは違うな、という気がしました。

日本の大学もライセンス収入は数千万円のところが多いので、億を稼ぐ大学やTLOが出てきて欲しいものです。そのカギとなるのは、大学発ベンチャーではないかと思うのですが、融資の個人保証等の制度を変えないと厳しいかも知れませんね。

私の事務所でもライセンスの委託を受けていますが、できれば億以上を稼ぐ特許のライセンスをしたいものです。日本出願だけでも億以上の収入を生みだす特許出願はありうると思っています。

また、そのようなアイデア、発明を生みだすためのアイデア・発明コーチングも行っておりますのでお気軽にご相談下さい。

 

iPS細胞に関する欧州特許の異議申立取下げ

京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授のiPS細胞に関する欧州特許に対して昨年5月に異議申立がなされていたが、今年8月2日に取下げの書類が出され、9/25に異議申立の継続が中止されることが決定した。

異議申立の理由自体は不合理なものではなく、争えば勝てる部分もあったと思われるが、何等かの理由で異議申立を継続するメリットがなくなったのだろう。

例えば、その事業から撤退することを決定したとか、別のもっとよい方法を開発した、等が考えられる。

あるいは、ノーベル賞受賞者に異議申立で勝って実施してもその後の協力が得られないので、争うよりも協力する関係の方が全体的にみてよいと考えた可能性もある。

いずれにしても、異議申立が取り下げられたことで、iPS細胞特許は今後も有効に存続し、アカデミアの研究の自由を確保し、会社には新薬の開発機会を提供するだろう。

特許制度の活用方法として、特許出願により、他者の実施を排除するだけでなく、他者の自由実施を確保する、というアカデミアの戦略は今後も増える可能性もある。

発明の単一性とシフト補正の審査基準変更

7月頃に特許出願の発明の単一性とシフト補正(発明の特別な技術的特徴を変更する補正)の審査基準が改訂されています。その弁理士会主催の研修会が今日ありました。

審査基準が改訂されたのは、厳しすぎる運用に不満の声が多かったから、産業構造審議会でも改訂を検討したから、等の理由からだそうです。

簡単に言うと、特許出願明細書の最初の請求項の構成要件を全部含んでいて、かつ、発明の特別な技術的特徴の構成要件を含む請求項については単一性があるとして審査するように改訂されました。なので、全部の請求項を第一請求項に従属させておけば、特別な技術的特徴を持つ構成要件を含む第一請求項の従属項は発明の単一性を満たすことになります。

それ以前は、特許請求の範囲の請求項間に特別な技術的な特徴がなければ単一性がない、とされていました。第一請求項にそれぞれ独立の発明を従属させた場合に、第一請求項に新規性、進歩性が無いと、従属項はそれぞれバラバラですから単一性違反となっていました。

また、第一請求項に従属する請求項のうち、特別な技術的特徴がある下位の請求項とその従属項しか単一性が認められませんでした。

しかし、今回の改正では第一請求項に従属させておけば、特別な技術的特徴を含む請求項については審査はしてくれる、ということだと解釈しています。

正確な表現では、

1 特許請求の範囲に最初に記載された発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明

2 特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明について審査を行った結果、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能な発明

については、審査対象に加える、ということです。

シフト補正の方は、簡単に言えば調査のやり直しを伴わなければ審査してくれる場合もある、ということのようです。審査の省力化、無駄防止が主な目的のような気がしました。

これまではシフト補正をしても審査官によっては拒絶しないで審査してくれる審査官もいたので、審査官毎にばらばらの対応だったのですが、今回の審査基準の改訂により、基準がより明確になったと思います。

シフト補正については、後日また詳しく書こうと思います。

アップル社に日本人発明家が特許侵害訴訟で勝訴

米国アップル社のiPod(携帯音楽プレーヤー)の円形スイッチが、日本人の発明家の特許権を侵害しているとして、100億円の損害賠償を求めた裁判の判決が出ました。

東京地裁の高野輝久裁判長はアップルに対し約3億3千万円の支払いを命じる仮執行宣言付の判決を下したそうです。

この発明家は斎藤憲彦さん(56)で、以前、株式会社ポセイドンテクニカルシステムズから平成10年頃に7件の特許出願をしていますが、全て拒絶されています。

特開平11-272378 入力装置及び該入力操作検知方法 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-195353 通信端末装置 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194891 マウスポインティングデバイス 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194883 タッチ操作型コンピュータ 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194882 キーボードおよび入力装置 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194872 接触操作型入力装置およびその電子部品 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ
特開平11-194863 タッチ入力検知方法及びタッチ入力検知装置 株式会社ポセイドンテクニカルシステムズ

しかしながら、このうちの下の特許出願についての拒絶査定不服審判からの分割出願が特許になり、それが今回の侵害事件につながったようです。

出願番号 特許出願平10-012010
公開番号 特許公開平11-194872
審判番号 不服2005-020649
特願2005-133824
特許-3852854(早)(2006.9.1登録査定)
接触操作型入力装置およびその電子部品

斎藤さんの特許は検索した限りではこれのみがヒットしました。かなり広い権利範囲となっています。見方によってはパテント・トロールと言ってもおかしくないくらい広い請求項ですが、それでトロールの本場の米国を代表する企業アップルから損害賠償金を取るとは日本人としては痛快と言えなくもないですね。

国際出願して欧米でも権利化できていれば、米国では3倍賠償制度もあるので、1ケタ以上高額の賠償金が取れた可能性があります。というのも、日本ではアップル社がこの特許に対して2009年3月に無効審判を請求しているからです(後に審判請求取下げ。おそらく斎藤氏側が訂正したためと考えられます)。

特許-3852854(早)
接触操作型入力装置およびその電子部品

【原出願日】平成10年1月6日(1998.1.6)
【出願番号】特願2005-133824(P2005-133824)
【氏名又は名称】株式会社齋藤繁建築研究所
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状である軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーが配置されたタッチ位置検知手段と、
接点のオンまたはオフを行うプッシュスイッチ手段と
を有し、
前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡に沿って、前記プッシュスイッチ手段が配置され、かつ、
前記タッチ位置検知手段におけるタッチ位置検出センサーが連続して配置される前記軌跡上における押下により、前記プッシュスイッチ手段の接点のオンまたはオフが行われる
ことを特徴とする接触操作型入力装置。
【請求項2】
請求項1記載の接触操作型入力装置であって、前記プッシュスイッチが4つであることを特徴とする接触操作型入力装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の接触操作型入力装置を用いた小型携帯装置。

なお、拒絶された原出願の出願公開時点の請求項は以下のとおりで上記よりもさらに広い特許請求の範囲となっている。

特許請求の範囲】
【請求項1】 直線または平面曲線もしくは空間曲線状の所定の軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーを配したタッチ位置検知手段と、該タッチ位置検出センサーの用いら れる軌跡上で指が移動する方向以外の物理的な移動または押下により接点のオンまたはオフを行なうスイッチ手段とを有し、前記タッチ位置検知手段による軌跡 上のタッチ位置の状態と、前記スイッチ手段による接点の状態とを一体化させて検知することを特徴とする接触操作型入力装置。
【請求項2】 直線または平面曲線もしくは空間曲線状の所定の軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーを配したタッチ位置検知手段と、該タッチ位置検出センサーの用いら れる軌跡の接線に直交する方向への物理的な移動または押下により接点のオンまたはオフを行なうスイッチ手段とを有し、前記タッチ位置検知手段による軌跡上 の接触点からの位置情報と、前記スイッチ手段による接点のオンオフ情報とを一体化させて検知することを特徴とする接触操作型入力装置。
【請求項3】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーには、軌跡上の接触点において接触時と非接触時の静電容量変化を信号変化として検出する静電誘導式検知手段を用いることを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請 求項4】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーには、軌跡上に連続して配置した第1電極と間欠に置かれた第2電極を用いると共に、いずれか一方の 電極を可動電極とし、他方の電極を固定電極として指の押圧力を検知させる可動電極式検知手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入 力装置。
【請求項5】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーには、軌跡の両側もしくは下側に発光素子および受光素子を1組づつ連続して配置した光学式検知手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請 求項6】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーには、軌跡の両側に電極を付設し、該電極に駆動電圧と接地電圧をかけて電位分布を発生させて接触点 位置の電圧を検知することにより変位、移動量および押圧力を検知する抵抗膜式検知手段を有することを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装 置。
【請求項7】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーは、金属接点間を跨がって接触した指等の抵抗を検出し、出力レベルを高レベルと低レベルの2値に変 動させる直流抵抗検知方式によるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請求項8】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーは、磁気膜を使用した電磁誘導方式によるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請求項9】 前記タッチ位置検知手段に用いるタッチ位置検出センサーは、超音波発振源を使用した超音波方式によるものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の接触操作型入力装置。
【請求項10】 前記スイッチ手段は、前記タッチ位置検知手段のタッチ位置検知部に沿っての片側または両側に設けた突起の押下時に該突起と共に接点のオンまたはオフを行なうことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項11】 前記タッチ位置検知手段のタッチ位置検知部、あるいは該周囲部、もしくはタッチ位置検知部を光透過可能なものとした該下部において接触検知の状態に応じて明滅する発光体を配設したことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請 求項12】 前記スイッチ手段は、前記タッチ位置検知手段に接触せずに接点のみオンまたはオフを行ない、なおかつ該接点の押下に連動して同時にタッチ位置検知手段が押 下されるよう常時タッチ位置検知手段と連接していることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項13】 前記スイッチ手段は、前記タッチ位置検知手段に接触せずに接点のみオンまたはオフを行ない、なおかつ該接点の押下時に前記タッチ位置検知手段と連接して同時に押下されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項14】 前記スイッチ手段は、一端が揺動可能に支承された揺動カム機構の他端押圧時に接点のオンまたはオフを行なうことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項15】 前記タッチ位置検出センサーは、変移単位の同じかまたは変移単位の異なる複数の接触検知軌跡上に沿って配されているものとした請求項1乃至14のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項16】 前記タッチ位置検出センサーは、幅広な帯状にして一様に分布されているか、もしくは粗密性を有する不均一分布にして配されているものとした請求項1乃至15のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項17】 前記タッチ位置検出センサーは、少なくとも1つの接触位置を検知する隣接した2個または3個以上のセンサーによるものとした請求項1乃至16のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請求項18】 前記スイッチ手段は、複数のプッシュスイッチによるものとした請求項1乃至17のいずれか記載の接触操作型入力装置。
【請 求項19】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部を所定の範囲で水平に動き得るように保持し、該タッチ位置入力部の接点との間に電気信号または電圧を伝達する手段を有する接 点付取付基板と、通常状態で該タッチ位置入力部を水平一定方向へ押しつけるバネ体と、バネ体の付勢力に抗して前記タッチ位置入力部を押すことにより動作す るよう接点付取付基板の上に配されたプッシュスイッチ部とから成ることを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項20】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部のための固定接点および上方から操作するプッシュスイッチ部を上面に有する取付基板と、該取付基板に設けた支持部によって揺 動可能に保持されると共に固定接点に対応した接点を下面に有するタッチ位置入力部を保持した部材と、該部材の揺動によって先端でプッシュスイッチ部を駆動 するように該部材の周囲の一部に設けられた切片状の突起の作動体とを有し、タッチ位置検知部のある部材に十分な圧力が加えられたときにプッシュスイッチ部 を押下することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項21】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部のための固定接点および上方から操作するプッシュスイッチ部を上面に配した取付基板とを有し、該タッチ位置入力部の両端側ま たは中央下部側に垂設された支持部が取付基板上に設けたガイド用軸穴に嵌挿されて昇降可能となるように案内支持され且つタッチ位置入力部側を取付基板上方 の係止部側へ常時弾発付勢すべくタッチ位置入力部と取付基板との間に弾性体を介設させ、該弾性体の弾発付勢力に抗してタッチ位置検知部に十分な圧力が加え られたときにプッシュスイッチ部を押下することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項22】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部を保持する部材の接続方式として該タッチ位置入力部夫々に設けられた窪みまたは孔部もしくは貫通する孔部により連結部材に よって嵌合されており、該タッチ位置入力部を水平一定方向に押し付けるバネ体を付勢力に抗して押すことによりプッシュスイッチ部が押されるものとしたこと を特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項23】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部と、該タッチ位置入力部を一定方向に付勢または押し付けるための部材に弾性体を用い、該付勢力に抗してタッチ位置入力部を押すことによって該弾性体 の圧縮または伸展によってプッシュスイッチ部を押下する手段を有する請求項19乃至22のいずれか記載のプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請 求項24】 直線上または曲線上に連続して配置したタッチ位置検知部に指先を接触させることにより該タッチ位置検知部に応じた電気信号または電圧を発生するタッチ位置 入力部を有し、該タッチ位置入力部とは別に弾性体の圧縮または伸展によってプッシュスイッチ部を押下する手段を有する請求項19乃至23のいずれか記載の プッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項25】 前記プッシュスイッチ部を押下する手段は、単一機器において、タッチ位置入力部が配置されている位置と離隔した位置に配されるか、またはタッチ位置入力部 の近傍に隣接配置されているものとした請求項19乃至24のいずれか記載のプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項26】 前記タッチ位置検知手段の指先接触面には凹凸部が設けられている請求項19乃至25のいずれか記載のプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項27】 キートップに接触検出センサーを付設し、1つの接触を検知する手段を有することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項28】 キートップに複数の接触検出センサーを付設し、夫々の接触を検知する手段を有することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項29】 キートップにタッチパネルを付設したことを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項30】 キートップにタッチパネルを付設し、接触を検知する手段を有することを特徴とするプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項31】 前記スイッチ手段は、キートップに接触検知部を付設し、プッシュしたときにセンサーの接点が離れることを特徴とする請求項1乃至30のいずれか記載のプッシュスイッチ付の接触操作型電子部品。
【請求項32】 前記スイッチ手段は、モメンタリイ式、オルタネイト式もしくはロック式のいずれかによるものとした請求項1乃至31のいずれか記載の接触操作型入力装置。

特許管理の項目

特許管理というと、人によっては特許(出願)を取捨選択して、最適なポートフォリオを築くことのように考えていることもあります。

しかし、知財部で特許管理と言えば期限管理を指すのが一般的でしょう。どの特許出願、特許円を残し、どの特許出願等を捨てるか?は事業戦略も絡むので、特許部よりも事業部側の戦略判断になります。

期限管理はある程度の数、おそらく500件以上の生きている特許出願や特許権を持っている会社であればコンピュータの特許管理システムを使うのが一般的です。それ以下であればエクセルでも管理可能と思われます。

特許管理システムの管理項目数は200位あり、社員数が多いと1つの項目、例えば発明者でも数千名になったりします。すると、アクセスクラスのリレーショナルデータベースでは処理できないので、オラクルのデータベースを使わざるを得ず、そのため特許管理システムは通常数百万円以上します。

さらに、データの移行や会社に合せてカスタマイズするとなるとさらに数百万円の費用がかかります。

そういう意味では特許管理は非常に大変です。そして、完璧にできてもそれが当たり前で誰も褒めてくれませんが、ミスをしたらボロカスに言われるので、労多くしてあまり報われない仕事だと思います。

しかし、各国の特許制度を知るにはとてもいい仕事ですし、会社の特許を全て見れるので、一度はやってみてもよいでしょう。

私も一時期アクセスで特許管理システムを作ろうかと考えましたが、200項目もあるとアクセスではフリーズしてしまい無理でした。今のアクセスは当時よりは進化しているからできるかも知れませんが。

いずれにしても特許管理の項目は膨大な数があるので、片手間にプログラムできるようなものではないように思います。もちろん、特許出願の期限管理のみ、等に絞れば比較的簡単にできるような気はしますが、社員への発明報奨金の支払いや、訴訟、契約までを一元管理できるシステムは専門のシステム会社に作ってもらった方が結局は早くて安くできるように思います。

利用発明の特許で基本特許の範囲を埋め尽くす戦略

かつては、基本発明は欧米からの特許出願がほとんどでした。例えば、コピー機の基本特許はゼロックスが抑えていたのは有名な話です。昔は欧米の基本特許が強すぎてエスケープしようがない面がありました。

そういう場合、基本特許を日本企業にライセンスしてくれればコストアップにはなりますが、製品は製造販売できるので、まあ何とかなります。

しかし、基本特許保持者がライセンスをしてくれない場合もありえます。そのような場合にどうするか?といえば、基本特許の権利範囲に被せて応用特許(利用特許)の出願を大量にして、相手が改良製品を出そうとしたら抵触するようにします。

そうすると、基本特許を持っていても、利用特許と重複する範囲はライセンスを受けないと実施できないので、クロスライセンスしないと両社とも製品を製造販売できなくなります。すると、結局基本特許権者もクロスライセンスを交わさざるを得ず、結果的に両社が販売できるようにする、という戦略がありました。

特許は本来先願主義ですから、先に発明して、特許出願し、特許権を取得した人の方が有利なはずです。

しかし、このように、先に基本発明の特許を取られていても、その利用特許を取りまくれば、基本特許を持っている人や会社を身動きできなくすることが可能です。

ある弁理士はこの状況を説明する際に、これじゃあ、先願主義でも何でもないじゃん、と言っていました。後から利用発明を出願することで、先に基本特許を出願した人が実施を制限されるわけですから。

しかし、この制度のおかげで、日本の企業も欧米の基本特許に対抗できたわけですから、少数の基本特許に対して、大量の利用発明特許を被せる、というのは一定程度有効だったと思われます。発明者としては弱者の戦略とも言えますが。

今では日本からもノーベル賞クラスの基本発明も出るようになったので必ずしも上のような利用特許戦略は取らない場合もありますし、特許庁が大量出願を控えるように、との要請もあり、昔に比べて特許出願数自体は減っています。さらに、企業(個人)も重要な特許に絞って海外出願に力を入れるようになってきています。

利用発明で基本特許の範囲を埋め尽くす方法は、今でも後発組が先発メーカーと戦う場合にも使えます。後発メーカーが応用特許を大量に出願して先発メーカーが改良製品を出せなくすればいいわけです。

そういうことを考え合わせると、先願主義といいながら、後願で先願の実施を制限できるのはちょっと不思議な気もしますが、これも1つの知財戦略です。これができるので、うまくやれば後発メーカーでも先発メーカーと互角の勝負ができるというわけです。

国内優先権主張を伴う特許出願の弁理士費用(料金)

特許出願をした場合、最初の出願日(優先日)から1年以内であれば、国内優先権主張をして、データを追加して新たな特許出願(実用新案登録出願、意匠登録出願)することができます。国内優先権主張をすることにより先の出願の明細書、図面に記載されている発明の審査の基準日は優先日となります。

国内優先権主張出願する場合の弁理士費用は、以前は一律で30万円位でした。これは、一切追加・修正がない場合でも30万円請求していました。

しかしながら、全く修正、追加無で、そのまま出願する場合は、単に願書を修正するだけで、誤記の修正などを考慮しても半日もあれば準備できると思われます。

それから考えると、1から明細書を作る場合の30万円に比べて、作業負担がほとんどないのに、その場合にも、30万円は高い、と言われるようになり、最近は、この部分はかなり安くなっている事務所が多いと思われます。

例えば、全く追加、修正なしの場合は、8万円~10万円程度で国内優先権主張出願するケースもあります。ただし、これは事務所の方針にもより、20万円以上取るところもあるかも知れません。

明細書本文は変えずに、請求項だけ修正する分割出願では20万円以上取るところもありますが、まあ、これは請求項を考えるので妥当とも言えます。ただ、以前からある請求項を単に分割しただけでも20万円以上請求する事務所もあると思います。まぁ、分割の場合は分割上申書もあるのでその手間を考えればそれでもおかしくないとも言えます。

国内優先権主張出願で、データや内容、請求項の追加や修正が多く、新しい特許出願をするのと同じ位の手間や時間がかかった場合には、やはり、特許出願1回分の出願費用を請求しても別におかしくはありません。というか、普通でしょう。さらに、もっと大幅な修正であれば、30万よりも高額になってもおかしくないでしょう。

こういうことを考えると、弁理士費用はタイム・チャージが妥当な気がします。難しい案件は高く、簡単な案件は安くするのが合理的でしょう。

ただ、明細書作成は30万円と言っても、非常に時間がかかる場合もあり、30万円ではとてもやっていられないくらい大変な内容でも30万円~40万円で明細書を作成する場合もあります。

場合によっては、1年位いろいろ追加修正してやっと出願にこぎつける出願もあります。それでも請求額は30~40万円で、手間がかかる割には割安の料金でやることになります。

逆に非常に簡単な発明で、ページ数も5ページ程度ですぐに書ける場合もあります。それでも、25万円位を請求することも普通に行われています。

そう考えると、必ずしも明細書の作成労力と費用が一致しているとは言えません。

また、米国等では、特許弁護士が明細書を作成することも多いですが、弁護士の時間給は最低のjunior attorneyでも280ドル以上ですから、8時間かかれば、24万円、24時間(3日間)だと72万円、の料金になります。ニューヨークなどですと、1時間7万円以上の弁護士が大勢いるそうです。

1週間で明細書を作成し、特急料金も含めると、高いところだと1明細書あたり300万円位請求するところもあります。1時間7万円、1日8時間で56万円。1週間5日で明細書を書けば280万円になりますね。彼らはもっと夜中まで働くので、7万円よりも安い人でも1明細書あたり300万取るのでしょう。それを考えると日本の明細書作成料はかなり安いと言えます。

まぁ、米国の場合は、訴訟になれば簡単に億や10億円を超えますから、明細書に300万円払うのも当たり前なのでしょう。

そういう意味で、日本の明細書作成料が安い分、国内優先権主張出願や分割出願の方で利益率を上げてバランスを取っている、とも言えるのかも知れません。もし、実態がそうであれば、明細書作成料を値上げして、国内優先権主張出願や分割出願の料金を下げるのも一つのやり方でしょう。

大平国際特許事務所では、できるだけ、合理的な料金体系にするように努めています。明細書の修正作業が全く無い場合には、それに応じた費用を請求させていただいています。

とはいえ、国内優先権主張出願をする場合にも、請求項の見直しや、明細書全体の見直しもすることが多く、それをするのであれば、そのまま出願するにしても、かかった時間分の費用は請求させていただく場合もあり得ます。

何かご意見等あれば、お気軽にご相談下さい。

大平国際特許事務所お問い合わせフォーム

 

欧州統一特許と欧州統一特許裁判制度

欧州では、従来、欧州特許庁に特許出願したり、移行手続きをした場合でも、英語、フランス語、ドイツ語以外の言語の国には、その国の翻訳文を提出する必要があり、翻訳費用が各国ごとに100万円位かかっていた。なので、20か国なら2000万円位の翻訳料がかかっていたことになる。

それが、昨年、欧州統一特許制度がEU25か国で合意され、スペインとイタリアを除く国については、1つの特許で25か国で保護されることとなった。

ただ、施行日については、来年1月1日からになるかは微妙な情勢のようだ。統一特許裁判所に関する合意書が施行される日が1月1日に間に合わないおそれがあるためだ。

統一特許裁判所に関する合意書が施行されるのは、少なくともイギリス、フランス、ドイツを含む13か国が合意書を批准してから3か月後をされているため、今月中に13か国の合意書が批准されなければ、施行が送れるおそれがある。

欧州統一特許の出願、審査は現行の欧州特許と同じ手続きで行われる。審査の後、特許査定を受けた場合は、1カ月以内に、統一特許、従来の内国特許、統一特許+内国特許のいずれかを選択できる。

欧州統一特許では、英語で出願した場合は、ドイツ語かフランス語に、ドイツ語、フランス語で特許出願した場合は、英語への翻訳をすればよく、他の国の原語に翻訳する必要はない。そういう意味でとても安価に取得できるようになる。

欧州統一特許の場合、それが無効になれば欧州全域(スペインとイタリア除く)で無効になるが、各国ごとの特許にしておけば、1つの国で無効になったとしても、他の国では有効に存続しうる。従って、1つの国でも生き残らせたい場合は、従来どおり各国に翻訳文を提出し、各国の国内特許として維持する方法も可能である。

特許クリアランス(侵害調査)

ある会社の製品が特許で保護されていて、かなり高額なのを使わざるを得ない場合があります。

そして、それを使用しているうちに、もっといいシステムを考え付いて、発明を完成させたとします。

その場合、ある会社の特許や特許出願を全部調べて、改良したシステムがその会社の特許に抵触しないことを確認する必要があります。

それに加えて、その会社以外からも抵触するおそれのある特許や特許出願がないかも調査する必要があります。

もし、抵触する特許があった場合、侵害を組成したものも廃棄させられることがあるからです。するとせっかく製造した製品が壊されるので、場合によっては非常な危機となり、倒産するおそれすらあります。

そういう意味では、大企業であれば製品を出す度にその製品を実施しても大丈夫か、実施可否調査(侵害調査)を行います。微妙なケースではかなり大変で、場合によっては製品の仕様を変更してもらう場合もありえます。また、過去に特許出願されて、権利化されていないことが確認された形式であれば安心して使用することができるのでそれを使用する場合もあります。

侵害調査は1つでも抵触する特許があれば、上述のように、販売差止めだけでなく、その製品や中間体も廃棄させられるおそれがあるので、徹底的にやる必要があり、コストも労力もかかりますが、製品を製造、販売している企業に取っては必須の調査です。

新製品開発と特許出願

新製品を発表(広報)する際に、知財部では通常、特許出願や意匠登録出願、商標出願をしていないと、必要性を検討し、必要な場合は、緊急的に出願します。

広報から発表日が1週間以内に迫ってから連絡がある場合もあります。

そういう場合は、終電ぎりぎりか、朝の2時、3時までかけて出願案を作って発表日に間に合わせることもあります。

そういう場合の特許出願や意匠登録出願は、その製品のみを守る応用特許で、長期間にわたって製品に使用できる基本特許ではありません。

すると、その製品の終売に伴ってその特許出願も不要になり、審査請求せずに、見做し取下げされる場合もあります。とはいえ、広告費は特許出願費用の数百倍以上の費用をかけているので、特許出願費用が無駄になったとしても大企業にとっては微々たるものでしょう。

最近では製品のライフサイクルが短かくなり、審査請求する前に製品が販売終了になりケースも多くなっています。それでも、生産終了までは一応他社をけん制する効果はあるので、出願費用で他社が類似製品を開発や発売しないとすれば、十分特許出願する価値はあると思われます。