再生医療 ダイレクト・リプログラミング特許で米国が先行

再生医療 ダイレクトリプログラミングで米国が先行

iPS細胞特許については米国、欧州、日本で山中伸弥京都大学iPS細胞研究所長の特許が成立し、日本が先行した。

しかしながら、米国のグラッドストーン研究所では、ディーパック・スリバスタバ・ディレクターらがダイレクト・リプログラミングにより、心筋梗塞で出現した繊維芽細胞を直接心筋細胞に戻す技術を開発したそうだ。現在約半分の繊維芽細胞が心筋細胞に変化しているようだ。

ディーパック・スリバスタバ・ディレクターはこの確率を8割まで高めることを目標にしている。現在動物実験準備中で、ブタとサルで臨床試験を開始するという。

この技術はダイレクト・リプログラミングと呼ばれ、山中教授のiPS細胞を経ずに、繊維芽細胞からいきなり心筋細胞に変換する技術である。iPS細胞の場合は初期化されているのでガン化するおそれがあるが、ダイレクト・リプログラミングでは完全に初期化まではせず、分化した細胞をいきなり別の分化細胞に変化させるので、未分化細胞を経ないのでガン化のおそれが少ないと考えられる。とはいえ、現状ではレトルウイルスを使用しているので、レトロウイルスの組み込まれる染色体上の位置によってはガン化のリスクもある。

そういう意味では、このダイレクト・リプログラミングの技術が確立すればiPS細胞技術に変わって再生医療の主流になる可能性はある。

また、このダイレクト・リプログラミングに使用する遺伝子は山中4因子とは異なる遺伝子のようで、山中教授のiPS細胞特許は使用しないで実施できると考えられる。

そして、さらに、ディーパック・スリバスタバ・ディレクターらは遺伝子ではなく、低分子化合物によりダイレクト・リプログラミングを引き起こす方法も開発中と言う。それが開発されれば遺伝子をレトロウイルスで導入するよりも安全な技術になる可能性が高い。

別の再生医療技術も欧米では進みつつある。米国のステムセル社は、死亡した胎児から調製した神経幹細胞を脊髄損傷の患者に投与する臨床試験をチューリヒ大学付属病院で行った。3人の脊椎損傷患者に1人あたり2000万個の神経幹細胞を導入したところ、1年後には3人中2人に改善が見られたという。今後の研究の進展が楽しみである。

日本では、iPS細胞が脚光を浴びた反面、過去から地道に行われてきた幹細胞研究が下火になり、予算を減らされているようだ。そういう意味で幹細胞とiPS細胞の比較研究が米国程には行われていないという問題がある。

幹細胞の特許(出願)は米国が先行しており、iPS細胞から細胞を分化させる際には、米国のウィスコンシン大学等の特許を使用しなければならなくなるおそれがある。

日本の特許出願戦略としても、幹細胞特許対策をしっかりと立てて再生医療全体として日本が世界のトップに立てることを期待したい。それができれば、日本人も自信を持って世界と戦えるようになると思う。