特許出願を依頼すべき発明の完成度

発明が完成してから特許出願を特許事務所に依頼するのが、大企業の依頼の通常のパターンです。

これは、大企業では知財部員が研究者とやり取りをして、かなり明細書をチェックしたうえで事務所に投げることが多いからです。

また、大企業では、発明者から届け出のあった発明について特許性をチェックして、発明概念を理解し、それを特許部員が特許事務所に伝えます。

ですからその段階で既に知財部員のフィルターがかかっています。どうみても特許にならないような発明は知財部としても出願できない、と判断します。時には、調査をして、先行文献があることを確認したうえで、出願できない、と研究者に連絡することもあります。

しかしながら、個人や数人程度の零細企業の場合は、そういう知財の専門部署もなく、専門家もおらず、調査もせずに、直接特許事務所に相談する会社も多いです。総務部門や法務部門が特許出願を担当している会社も多いです。

すると、完成前の発明を分散的に話すだけで、どこが発明のポイントかよくわからない場合もあります。

そういう場合は、弁理士がうまく発明を引き出せればいいのですが、話が分散しすぎるとわからなくなる場合もあります。私も初対面で5時間位長々と話をされましたが、話が冗長でわかりにくい発明者の方に会ったことがありました。

そういう(話が分散する)発明者だということが最初からわかっていればそれなりの対応もできるのですが、全く初対面でそういう話方をされると弁理士も発明を理解できない場合がありえます。

そういう場合でも弁理士としては、聞いたことに基づいて何とかまとめて明細書を作成して送付しますが、必ずしも完全に意図した発明になるとは限りません。

ですので、弁理士が作成した明細書をよく読んで、自分の意図した発明がきちんと入っているか、確認する必要があります。

そうならないためには、ある程度発明が完成し、権利化したい部分を明確にしてから依頼すればいいのですが、早めに弁理士に相談する方がデータの取り方のアドバイスももらえるのでよい面もあります。

発明が未完成の場合は出願相談というよりも、出願戦略のコンサルティングと考えて、発明のコンサルティング&コーチングを受ければ有用だと思います。それにより、より発明をブラッシュアップでき、発明概念もより強い権利化が可能なものになると思われます。

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藻類等の特許生物寄託

特許出願(申請)の依頼の場合、微生物や植物、動物で、一般には入手できない株を特許出願する場合、その生物について寄託する必要があります。この寄託ですが、生物によっては寄託できないものもあり、寄託機関の保存能力にもよります。

動物細胞などは凍結保存可能ですので、寄託は容易なのですが、植物細胞は凍結保存が難しく、凍結保存できない細胞の寄託は以前はできませんでした。

栄養増殖でのみ増える植物細胞(カルス)なども以前は寄託できなかったのですが、最近では、栄養増殖する藻類なども寄託可能になっています。

当所でも微細藻類の菌株等の特許化を依頼される場合があり、寄託手続を検討したことがあります。

その菌株について特許を取得しておけば、その菌株を外部に出して培養依頼してもその外部機関が勝手に他社に譲渡したり、自分で増殖して販売することができなくなるためです。

特許微生物や生物のついては寄託機関があり、つくばとかずさにそれぞれあった。それが今年の4月から合体したような形になり、微生物はかずさのNITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター )に統合され、その他の動物細胞、植物細胞等はつくばの施設IPODが担当することになりました。

そして、従来は、寄託したら生存試験をして、生存が確認されてから寄託番号が発行されていましたが、今は寄託したら直ちに受領番号が発行され、それによって特許出願をすることが可能です。ですから、以前のように生存試験が終わるまで待つ必要がなくなり、寄託後すぐに特許出願が可能になりました。

ただし、その後の生存試験で生存していないことがわかると、受託番号が無効になるので最初から手続きをやり直す必要があります。

 

先端医療・バイオテクノロジーの特許出願が得意な弁理士

私(弁理士・大平和幸)は農学博士を持っていますが、名刺を出して挨拶すると、農学博士と弁理士の組み合わせに不思議さを感じる人も多いです。

農学博士と言うと、トラクターを運転したり、クワをふるって田畑を耕しているように思うのかも知れません。確かに作物学科とか、育種学研究室等では田畑を耕す場合もあります。なぜ、そんな人が弁理士をやっているのか不思議に思うようです。

しかし、私が卒業したのは東京大学の農芸化学科というところで、農学部の化学科のようなところです。ですから、有機化学や無機化学、分析化学、生物化学、食品化学、微生物学等を学んでいます。

非常に大ざっぱに分けると、発酵系と有機化学系がメジャーです。マイナーな分野としては、土壌学、肥料学など東大には15講座位がありました。今はもっと増えているかも知れません。

農芸化学科の卒業生の進路もビール会社や食品会社、製薬企業など企業や公務員がほとんどで、農業をやる人は同級生にはいませんでした。

そして、農芸化学科では、微生物に限らず、植物、動物、人間も研究対象です。中には、ガンの最先端の研究をしている研究室もあります。

そういう意味では、農芸化学科と呼ばずに、バイオテクノロジー学科という名称にしてもいいのですが、そうすると農林水産省が補助金を出さない、と言われたので農の名前の残さざるを得なかったようです。

東大の農芸化学で一番有名で人気が高いのは、発酵学の研究室で、そこではノーベル賞の研究も多く発表されるNatureという研究誌に載るくらい世界でも最高レベルの研究をしている人もいました。1週間徹夜で研究することも普通です。

ですから、農学部農芸化学科という名前ではありますが、研究室によっては、ヒトのガンの研究をしていたり、老化や免疫の研究をしていたりして、医学分野の研究も普通に行っています。

そのように幅広い分野を扱うので、微生物に限らず、植物、動物、ヒトについても一通りの知識があります。

そして、会社で研究したのは、植物バイオテクノロジーがメインでしたが、派遣先の筑波ではHeLa細胞(ヒトのガン細胞株)も用いて動物のプロモーター(SV40やRSVなど)の研究もやっていましたし、その後に教授をやった奈良先端大でも動物の特許出願も扱っていました。

奈良先端科学技術大学院の特任教授になる前に、弁理士資格を取得し、奈良先端大では、バイオに加えて、情報(ロボットやソフトウエア等)、物質(ナノテク、半導体など)の発明の特許性、マーケット性等を判断していました。

弁理士会のバイオ・ライフサイエンス研究会にも入り、10年位委員をしていました。副委員長として弁理士会会長と記者会見をしたこともあります。また、iPS細胞特許の研究もして、iPS細胞特許のコンサルティングもやっていました。

そのうちの一時期は先端医療特許の検討会にも参加していました。ここでの議論が首相官邸での知財戦略本部での議論として発表され、結論に影響を与えていました。

ですから、私は農学博士ではありますが、医薬品の特許出願もやっていますし、動物細胞のウイルス・ベクター・システムの特許出願もやったことがあります。もちろん、健康食品や化粧品の特許出願の依頼も受けています。

ただ、それだけではなく、化学系の石油化学やプラスチック、ソフトウエアの特許出願も行っています。

そういう意味では、農学分野に限らず、医薬品や再生医療等の最先端医療も得意分野です。

昨日もiPS細胞特許に関する記者発表(記者会見)も行い、新聞記者も多数来て、活発な議論をしました。

また、この記者発表の内容をさらに詳しくして知財学会での発表も行いました。かなりの人数が来ていて、盛会でした。

つまり、私、弁理士大平和幸は、農学博士ではありますが、ウイルス、微生物、植物に限らず、ヒトの医学分野の最先端科学の特許出願も得意分野だということです。

なお、最近では、内閣府の戦略イノベーション創造プログラム(SIP)の知財委員も務めていて、日本の最先端バイオテクノロジーにも関わっています。これは、安倍晋三内閣の日本経済復興(再生)のためのプログラムです。

日本最先端の研究者達が巨額の研究費を得て、最先端の研究をやり、非常に厳しい評価を受けて実用化を目指しています。実際にかなりすごい研究成果も出てきています。

さらに、農林水産省の1社当たり最大7年7億円の補助金の審査委員も務めていました。そこでは、特許にするのが非常に難しい発明も出ていたりしましたし、成果物を販売するためのマーケティングに関するアドバイスもやっていました。

つまり、バイオテクノロジーの発明(製品)のマーケティングについても詳しいです。ですから、医薬品、化粧品、食品の発明のライセンス等の特許マーケティングについても得意です。

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パイオニア発明の特許保護

iPS細胞特許に関する記者発表を午前中に行った。

日米欧で権利範囲が異なるのは少なくとも3つの原因があると考えている。

欧州特許庁EPO (european patent office)審査基準によれば、発明の一般化の程度は、新しい分野を拓く発明については、通常の改良発明よりも、広く認める、というようなことが書かれている。

つまり、パイオニア発明については、記載要件が緩くなり、厳密に言えば書かれていない事項についても特許を認めてもいい、というような意味だと思われる。

この規定があるために、サポート要件が日本とあまり変わらないとしてもパイオニア発明については広い権利範囲が認められることになる。

日本は後進国時代のなごりか、特許の権利範囲が狭い。昔はもし、広い特許を認めると、海外から基本特許が入ってきて、日本企業の企業活動が妨害されるおそれがあったためではないかと思う。

しかし、今や、年間5兆円の科学技術予算を国民の税金から支出しており、世界でも最先端の研究ができる環境は整っている。

だから、今後はどんどんパイオニア発明が出るはずである。そうとすれば、日本の特許でも、せめてパイオニア発明については広い権利を認めるべきではないかと思われる。

発表の後、新聞記者からいくつか質問があった。

サポート要件についてはよくわからない、という質問があったが、要するに、明細書に記載してなければ権利は取れませんよ、ということである。

とはいえ、この部分が日本では非常に厳しく、米国は非常に甘い。

法律的には同じように書いてあっても、実際の審査基準は大きく異なる。全く異なる、と言ってもいいくらいだ。

日本も、もう少しサポート要件を甘くしてもいいのではないか?と思う。

 

 

 

 

特許審査の日米欧比較とパイオニア発明の特許出願依頼

iPS細胞等のパイオニア発明については、欧州には、より広く特許の権利を与えるという明文の審査基準がある。

つまり、通常の改良発明よりも、新しい分野(field)を開く発明にはより一般化された特許の権利を付与する、ということだ。

これは、ときとして、明細書に開示された範囲よりも広い権利を与えることにもなる可能性がある。

しかし、パイオニア発明は最初から全ての実施形態を書くことは難しいし、画期な発明であるほど網羅的な実験をすることも難しい。

そういう意味でパイオニア発明については、通常のサポート要件よりも緩くして広い権利を与えてもいいのではないかと思う。

バイオ・テクノロジー等でパイオニア発明に関する特許出願(特許申請)の依頼を受けた場合は、欧州にはこの規定があることを意識して拒絶理由に対応する必要がある。

バイオ・テクノロジー関連特許が得意な弁理士

今日は、弁理士会のバイオ・ライフサイエンス委員会の初回でした。私も長いもので、2004年からですから、もう8年目に入りました。

バイオ・ライフサイエンス委員会もかなり若返ったような気がします。登録番号の古い人から順次抜けて行っていて、今年は登録番号が若い人が随分増えました。

ですから、全員がバイオが得意な弁理士というわけではなく、弁理士になって2年目とか、委員会活動が初めて、という人もいました。

今年1年また、バイオ・ライフサイエンス委員会の1員として、バイオ特許の研究をしっかりやって行きたいと考えています。

そこで気づいたことなどがあれば書ける範囲でこちらにも書いて行く予定です。

特許出願、商標登録出願の中途代理人受任

特許出願について、出願当初から依頼される場合が多いが、ときどき、本人出願とか、他の代理人が辞任したため新たに代理人として受任することもあります。

そういう時は代理人受任届を電子出願端末から提出し、委任状を手続き補足書で郵送します。

このとき、住所が最初から正しければ問題ないのですが、途中で本社を移転したりしているのに、その説明がなかったりすると、委任状の住所が異なるため、補正が必要になることがあります。

以前は、旧書体の字が含まれていたことがあり、何度も委任状と住所変更届の手続きが必要でかなり苦労したことがあります。

本人出願の場合も委任状をもらって、代理人受任届を提出するわけですが、その場合に住所が以前と変わっていると同じような手続きになります。つまり、代理人受任届につける委任状は新住所(登記簿上の住所)で提出し、別途住所変更届を郵送します。

この場合、元の出願記載の住所で代理人を受任し、その後新住所に変更するのが一見理にかなっているようにも思えます。しかしながら、法律文書なので、現在の登記簿に記載されている住所で受任しないと法律的に存在しない法人からの受任になるので、やはり、登記簿にそのとき登録されている住所で受任する必要があります。

ところが、その後、代理人として、住所変更を提出する場合は、これは代理人である弁理士の印鑑か識別番号シールがあれば出願人の印をもらわなくても可能です。

つまり、新しい住所で委任状をもらって代理人を受任し、その後、特許庁に登録されている住所を旧住所から新住所へと変更を行うことになります。最初にこの話を聞いたとき、代理人でないと住所変更できないけど、住所変更してないのに新住所で代理人受任するのはおかしい、と思ってましたが、それぞれの書類に○月○日付で住所変更届を提出、■月■日に代理人受任届提出等と書いておけばよいようです。ちょっとした手続きのように見えても、いろいろ面倒な手続きがあります。

 

幹細胞から毛包細胞を作って毛を生やす発明

毛をつくる器官のもとを幹細胞から作製して皮膚に埋め込む手法で、何度も生え替わる正常な毛を生やすことに、東京理科大の辻孝教授(再生医工学)や豊島公栄プロジェクト研究員らのチームがマウスの実験で成功し、成果を17日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表したそうだ。

http://sankei.jp.msn.com/science/news/120418/scn12041806580000-n1.htm

ひげの毛包から幹細胞を作って、それを移植することで、毛包器官を作らせたという。

こういう発明の場合、特許出願戦略が問題になる。

マウスでできたことを発表したことで、ヒトで成功しても、進歩性がない、という拒絶理由が来る場合があるからだ。

製薬企業であれば、こういう場合はマウスの成功は隠しておいて、ヒトでできてから特許出願するのが普通だろう。

今回の場合は大学の発明なのでそういうことはせず、すぐに発表したと思われる。大学の場合は、科学研究費(グラント)を獲得するために、早く発表せざるを得ない面はあるので、特許的には不利でも止むを得ないと思われる。

教授によっては、将来得られそうな結果まで学会発表に含める人もいるが、それをやると特許的には、当業者に予想可能、あるいは、動機付けがある、などの理由で進歩性が否定されるおそれがある。

そういう意味では、発明完成までは秘密にしておくのが特許戦略上は最も好ましいが、大学の研究者の場合は、研究費が取れないとどうにもならないので、せめて、出願してから発表するようにしてもらうしかない場合も多い。

とはいえ、特許出願したからと言っても、その後会社が話を聞きに来た場合に全部を話してしまう先生もいて、そうすると、将来の国内優先権主張出願に支障が出る場合もあり得る。その会社が何も言わなければ問題ないが、巨額の利益が関連するとすればどうなるかはわからない。

そういう意味では大学でも完全にヒトでの実験で証明されるまでマウスのデータを公開しないのが好ましい。

ただし、上記のケースでも、マウスとヒトで違うところもあり得、マウスのやり方のままではヒトでうまく行かなければ進歩性が認められることもありうるので、そういう事情があれば、マウスのデータを先に発表してもヒトの発明の進歩性が認められることもあり得る。

いずれにしても、今回の発明は毛の無い(毛髪の少ない)ヒトには朗報と言えよう。

筆者の大平はかつて研究者をしていた頃、hair growth factorが見つかれば、毛を生やすことができる、と考えていたが、再生医療で解決するならそれもいいと思われる。

 

iPS細胞特許出願の審査経過と権利範囲の日米欧比較

iPS細胞に関する特許出願について、日本では早期(2008年)に特許登録となりましたが、昨年、欧州、米国でも特許権が成立しました。

日本はまだ審判に係属している特許出願もありますが、ともかく、iPS細胞の基本特許が日米欧で成立したことから、最先端医療技術の特許の審査過程や各国での権利範囲の比較が可能になりました。

結論から言えば、iPS細胞特許については、日本の特許権が一番狭く、次が米国、欧州が一番広い、という結果になりました。

常識的に考えれば米国が一番広い特許権が成立しそうな気もしますが、実際には欧州の方が広い結果となりました。私の印象では、欧州の審査官よりも米国の審査官の方が、iPS細胞やES細胞について、より専門家だったような気がしています。

また、欧州では、パイオニア発明について、より広い権利を付与する審査基準があるため、サポート要件は日本と同じようにありますが、パイオニア発明であるiPS細胞特許については通常のサポート要件よりも広く権利が認められたように感じています。

このように同じ発明について特許出願しても、国によって成立する権利の広さは同じではありません。日本では狭い権利範囲しか認められなくても、海外出願すればより広い権利が取れる場合もあります。

そして、医薬品の場合、売り上げの世界シェアでは米国が40%程度、欧州が30%程度、日本は9%程度ですから、日本よりも米国特許出願の方が重要、等と言われています。

ですから、事業を海外展開する場合は、一番有効に特許権を活用できる国に特許出願することが重要です。

食品の用途特許と医療方法の特許

用途特許というものがある。これは物質は既に知られているが、その新しい用途を発見した場合に与えられるもので、現状は、医薬品と化粧品のみ用途特許が認められ、食品の用途を発見したとしても用途特許は認められない。

しかし、食品業界は特定保健用食品(特保)を開発するのに数年の期間と数億円以上の費用がかかるのに特許が取れないと独占できない。

もし用途特許が取れれば投資を回収することが容易になる。

だから食品業界が業界をあげて特許庁に要望すれば食品の用途特許が認められるようになる可能性はある。

以前、医療方法特許は産業上の利用性がないということで特許にならなかったが、製薬業界が要望した結果一部ではあるが医療方法の特許が認められ、さらに用法・容量、投与方法の特許も認められるようになり、製薬業界としては医薬品のライフ・サイクルマ・ネジメントの面でかなり有利になったと思われた。

だから、食品業界が医療方法特許で製薬協等がやったようなやり方をすれば食品の用途発明も特許を認められるようになる可能性はある。食品業界もバラバラにならず、全体がまとまって特許庁に要望すればいいのではないかと思う。