発明の単一性とシフト補正の審査基準変更

7月頃に特許出願の発明の単一性とシフト補正(発明の特別な技術的特徴を変更する補正)の審査基準が改訂されています。その弁理士会主催の研修会が今日ありました。

審査基準が改訂されたのは、厳しすぎる運用に不満の声が多かったから、産業構造審議会でも改訂を検討したから、等の理由からだそうです。

簡単に言うと、特許出願明細書の最初の請求項の構成要件を全部含んでいて、かつ、発明の特別な技術的特徴の構成要件を含む請求項については単一性があるとして審査するように改訂されました。なので、全部の請求項を第一請求項に従属させておけば、特別な技術的特徴を持つ構成要件を含む第一請求項の従属項は発明の単一性を満たすことになります。

それ以前は、特許請求の範囲の請求項間に特別な技術的な特徴がなければ単一性がない、とされていました。第一請求項にそれぞれ独立の発明を従属させた場合に、第一請求項に新規性、進歩性が無いと、従属項はそれぞれバラバラですから単一性違反となっていました。

また、第一請求項に従属する請求項のうち、特別な技術的特徴がある下位の請求項とその従属項しか単一性が認められませんでした。

しかし、今回の改正では第一請求項に従属させておけば、特別な技術的特徴を含む請求項については審査はしてくれる、ということだと解釈しています。

正確な表現では、

1 特許請求の範囲に最初に記載された発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明

2 特別な技術的特徴に基づいて審査対象とした発明について審査を行った結果、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能な発明

については、審査対象に加える、ということです。

シフト補正の方は、簡単に言えば調査のやり直しを伴わなければ審査してくれる場合もある、ということのようです。審査の省力化、無駄防止が主な目的のような気がしました。

これまではシフト補正をしても審査官によっては拒絶しないで審査してくれる審査官もいたので、審査官毎にばらばらの対応だったのですが、今回の審査基準の改訂により、基準がより明確になったと思います。

シフト補正については、後日また詳しく書こうと思います。

特許出願依頼時からの内容変更

特許出願を依頼され、明細書を作成した後で、微妙な修正をされるのは特に問題ありません。大筋に変更がなく、請求項にも影響を与えない程度の追加・修正はむしろサポート要件や後の補正にとって有益ですから。

しかしながら、中には、どんどん発明内容を追加して来られる方もおられます。大学の先生に多いように思います。実験を次々にして、新しい発明を追加して来ます。

そうすると、請求項をまた考えて追加する必要が生じます。その場合、発明の単一性があるかどうかも考えなければなりません。もちろん、詰め込めるだけ詰め込んでおいて、後で複数の出願に分割することは可能ではありますが、最初から複数に分けておいた方がいい場合もあります。

もっと苦労するのは、発明内容の根本的な変更をされる場合です。前の発明がもう一つだったので、新しい発明にしたい、という場合です。この場合は、明細書をもう1つ作るに等しくなる場合があり、できればそういうのは特許出願を依頼する際に最初から言って欲しいと思いますが、後から出てきた発明ですので、追加するか、別出願にするかになります。

もちろん、発明者も日々進歩しているわけで、アイデアも次々に出る人もいますし、発明の内容が変わる場合があるのは止むを得ないとは言えます。

そういう場合はそれまでの発明に追加する形で実施形態を追加すればそれほど大きな負担にはならない場合もあります。そして、追加の請求項案を作ってもクレームアップせずに、追加の請求項の内容は特許請求の範囲ではなく、明細書中に請求項の表現を入れておいて、後に分割出願するというやり方です。こうすれば発明の単一性を検討しなくてすみます。

それでも請求項を追加で作成するのと、それに応じて解決手段、実施形態を書き直すのはそれなりに注意深く作業する必要があり、決して簡単な作業ではありません。下手すると、もう1つ明細書を作るよりも大変になる場合もあり得ます。そういう意味では、異なる発明を追加される場合は、別出願を勧めるのがよいのかも知れません。

いずれにしても、五月雨式にアイデアを継続して送付された場合は、完成した発明を送られてきた場合の数倍手間と時間がかかります。できれば、完成した発明を送っていただければ特許事務所としては助かります。

明細書を書く過程で継続的に発明者とブレインストーミングするとなると、発明コンサルティングをしているのと同じことになり、本来コンサル料金をもらわないといけない作業が発生します。それをきっちり請求するのであればそれでもいいかと思います。あるいは、そういうやり方でどんどん発明を追加される先生には、何度か追加された段階で、手間が増えるので料金が余分にかかる旨説明すべきでしょう。

無料ではできないサービスを無料で提供する場合どうしてもモチベーションが下がります。こちらのお客様はコンサルティング料金を払って下さるけど、あちらのお客様は全部込でこの値段でやってくれ、と言われた場合、どうしても料金を支払って下さる方を優先してしまいます。

企業様によっては、必ず値引きを要求し、ある一定値以上の料金は払わない、しかし、通常以上に高品質な仕事を要求される、というポリシーの企業様もおられます。企業様側から見れば、特許事務所にはできるだけ高いレベルの仕事をしてもらい、料金は非常に安く済ませられればコストダウンにはなるでしょう。

しかしながら、安い値段で仕事をするところは品質の低いところもあり得ます。ある程度の給料を支払わなければ優秀な弁理士を確保することも難しいです。ですから、高品質な仕事を要求されるのであれば、それに見合った料金をお支払いただければ、と思います。

弁護士でも、優秀な弁護士にはタイムチャージで6万とか7万支払うのではないでしょうか?弁理士でも、ピンからキリまであります。ある弁理士なら特許にできるものを、腕の悪い弁理士が担当したために特許にならなかった、ということはいくらでもあります。

そういう意味では、安物買いの銭失いにならないように、ある程度以上の料金を支払い、それに見合うか、それ以上の高品質で価値の高い対応をする事務所に依頼すべき、と思います。