長い拒絶理由通知への応答

最近、長い拒絶理由通知を受けることが増えてきた気がします。日本では、引用文献も4~5件程度が多かったのが、最近では7~8件位のが増えた印象です。さらに技術水準を示す文献が5件位付いている場合もあります。

これは、研究者の数が増え、科学雑誌も細分化して種類が増え、論文が多くなったことも一因でしょう。一説には1年間に出る情報量が、その1年前より以前の有史以来の情報全てを合わせたものよりも多くなっているとも言われます。それほどの情報量が毎年新たに発生しているわけですから、拒絶理由の根拠が多くなるのも当然でしょう。

日本の拒絶理由通知で10ページ以上、米国の拒絶理由(オフィス・アクション、office action)では30ページ位のものもあります。引用文献の数も、通常は5~6程度ですが、8とか、10以上文献やホームページが引用されるケースもあります。項目数が20位あることもあります。

日本の拒絶理由通知は、日本の実務を熟知しているので、私にとっては長くても引用文献が多くても何も問題ありません。

問題は、海外の長い拒絶理由通知で、反復が多い拒絶理由通知です。例えば、5種類の中から任意の2種類を選んで使用するような発明の場合、組合せは5×4で20種類できます。審査官の中には、この20種類を網羅的に各組合せ毎に拒絶理由を打ってきたりします。もちろん、引用文献は構成に応じて組み合わせを微妙に変えています。

すると、項目数で20項目となり、引用文献もかなり重複しますが、項目ごとに微妙に変えてきて、何がポイントなのかよくわからず、なぜ、このような形で拒絶理由を打つのだろう?と考え込むときもあります。

それに、各組合せ毎に拒絶理由を打たれると、その組み合わせ毎に反論をする必要があり、各組合せ毎に、構成の容易性、効果の顕著性、商業的成功、long felt needsなどを検討する必要が生じ、非常に大変な作業になります。

もちろん、それらを一刀両断できるような要素がある発明であればいいのですが、非常に技術水準に近い発明の場合は、あらゆる組合せに先行技術があったりして、とても一発で特許になるような限定もできません。(追記:その後、このような非常に長いオフィス・アクションに応答したところ、一回の応答で特許になりそうです。拒絶理由が長いからと言って必ずしも特許にするのが難しいわけではない、と気づきました。)

そのような場合でも、発明者に聞くと、先行文献との違いがクリアになり、意外に簡単に特許になる場合もありました。

ただ、一番苦労するのが、特許査定率の低い審査官に当たって、しかも、審査官の言っていることが分かりにくい場合です。

アメリカの審査官は審査官毎に特許査定率が出ていて、平均より低い特許査定率の審査官に当たると拒絶される確率が通常よりも高くなります。

そういう審査官の拒絶理由はやはり、あまりクリアではなく、頭が十分整理されていないような印象を受ける場合もあります。クリアカットであれば、完全に論理で真っ向から論破できるのですが、あいまいな議論で拒絶査定を出されるのが一番困ります。

そういう場合は、RCE(再審査請求)ではなく、アピール(審判)に持って行けば、審査官が変わるので、特許査定率が飛躍的に上がったりします。

実際、拒絶査定率が9割の審査官の場合に、アピールに持ち込み、審査官が変わるだけで、特許査定率80%に跳ね上がったりします。

アピールする場合は、最終拒絶理由通知(final office action)の応答期間内に、特許公判審判部(PTAB : Patent Trial and Appeal Board)に、審判請求書(notice of appeal)を提出し、審判請求料を支払う必要があります。以前は審判請求料は630ドルでしたが、料金改定で800ドルになりました。

審判請求中にもRCE(再審査請求)ができるので、アピールの中で補正が必要になれば、RCEをかけて、補正して、再度審判請求する、ということも可能です。その場合に最初の審査官がまた審査するかはわかりません。同じ審査官だと、RCEしても拒絶され、再度アピールするしかなくなる可能性もあり得ます。

特に米国の場合は、審査基準を正確に適用せず、ディベート的に自分の説に固執する審査官もいるようです。そういう場合は、RCEを繰り返しても特許にならない可能性が高いですから補正や継続出願で普通の審査官なら特許になるレベルにした上でアピールに持ち込むのがよいと思います。

日本でも、審査官毎に特許査定率を出してくれればいいのですが、日本では、拒絶査定が来たら一律審判一択しかないので、米国のように再審査を請求して同じ審査官が延々と審査する制度はありません。その意味では日本の方がいい制度とも言えます。

ただ、個人的には、日本でも再審査制度があれば、無駄な分割出願をしなくていいので、制度的にはあった方がよいと思います。ただ、その際、再審査では最初の審査官以外の審査官を希望すれば、別の審査官に担当してもらえる制度にできれば非常に使いやすい制度になる気がします。

審査官の人によるバラツキは欧州でも大きいそうです。無審査国のフランスの審査官や、特許出願の非常に少ない国(たとえばリトアニアなど)から欧州特許庁European Patent Office: EPO)に審査官が来るので、出身国によって審査官のレベルに大きな差があります。

逆に言えば、甘い審査官に当たることもあるので、特許になりやすい面もあります。実際、日米欧の三極に同じ特許を出願した場合、欧州が一番広い権利が取れるケースも多いです。

審査官によってかなり違いがあることを理解して、どのように反論すれば特許になるか?は審査官により違うと思われますので、どうしても特許にしたい案件は審査官と面接して、審査官の拒絶理由の本当の意味を十分理解した上で、反論するのがお勧めです。

大平国際特許事務所でも、難しい拒絶理由の場合は、審査官と面接することをお勧めする場合が多いです。そうすることにより1回の意見書、補正書で特許化できる場合が多いです。

PCT出願から各国移行、または直接外国出願した場合の費用

先日初めてお会いしたお客様が、前に依頼した事務所はひどい、と怒っていました。どうしたんですか?と聞くと、最初の話では、各国80万位で行けますよ、と言われていたが、4~5か国に移行手続きして拒絶理由に応答していたら、その倍位かかったので、放棄した、とのことでした。

計算上、最初は400万程度の予定が、800万円以上かかって、まだ特許になってない、ということのようです。

弁理士であれば、多数の外国出願を見てますから、拒絶理由対応に1回20~30万円、ときには50万円かかることもあることは常識です。

しかし、一般のお客様からすると、最初400万で行ける、と言っていたのに、800万もかかって、しかもまだ特許になっていない、となると、不信感を持たれるようです。

私の経験上、1回の拒絶対応で一番高額だったのは150万位、146万だったかと思います。その際は、専門家証言(expert wittness)の宣誓書を複数提出し、何度もインタビューしたうえで応答書を提出しましたが、その1回の意見書、補正書を出すのに150万円の見積が来ました。

これは、特許事務所の会計システムが、1つのアクションが終わるまで請求しない、というようになっているために起こることで、中間段階で料金をこまめに見積もってもらえば、いきなり150万円の見積が来て驚くことはないでしょう。

このケースでは交渉して50万円程度まで負けてもらいましたが、それでも1回の応答で50万円は高いです。しかし、重要な案件であればそこまでしても権利化したい、というクライアント様の意向があれば、いくらお金がかかってもしっかり応答せざるを得ません。

また、最初から最悪のケース、例えば、拒絶理由対応には最大1回150万円かかります、などと言うと、おそらく多くのお客様が引いてしまって、そんなにかかるのならやめておこう、となることも考えられます。

そういう意味で、弁理士としても標準的なケースで1カ国80万円と言ったのだと思います。あるいは、各国移行費用だけで1カ国80万円、と言ったのかも知れません。定価的には翻訳文を作成し、移行手続きまですれば、大体70~80万円が相場でしょう。

翻訳料、現地代理人費用、日本代理人費用は、それぞれ、30~50万、30万、10~20万、といったところでしょうから。

そして、その後は拒絶理由が来るたびに、20~30万円かかります。

英語圏はまだいいですが、中国やタイとかで、一度日本語に訳してもらう必要がある場合があります。するとその翻訳費用だけで10~20万円かかったりします。

そして、中国の場合は拒絶理由の回数が多く、5回位来ることも普通です。すると、1回20万としても100万円かかることになります。それでも拒絶されることがあり、そうなると覆審請求をする必要があります。するとさらに費用が膨らみます。

そういう意味では外国に出願する場合は、500万円~1000万円程度かかる可能性がある、と覚悟して出願されるのがよいと思われます。

とはいえ、外国出願支援制度というものがあり、半額を補助してくれます。上限は300万ですから、欧州、米国に出願するだけなら十分でしょう。この補助金が通れば半額は地方自治体が補助してくれます。

それにより、ある程度の負担が減ります。

しかし、それよりももっと重要なのは、やはり、商品化し、販売することでしょう。売上さえ上がれば、特許製品は利益率が高いですから、その儲けの中から特許費用を出せばよいと思います。

つまり、外国出願する場合は、十分な資金を準備すべき、と思われます。

特許登録された発明を出願していない外国でも権利保護したい場合

特許登録された発明は通常は、特許公報が発行されて公開され、公知になっていますから、そのまま外国に出願しても新規性無として拒絶されてしまいます(早期審査で登録査定が出た段階なら未公開の場合もありますが)。

日本で特許は取れたけど、その特許の製品がヒットして、海外でも販売したいので、その国で何とか特許を取れないか?という相談はかなりあります。しかし、既に特許公報で公開されている発明そのものは公知ですから特許にはなりません。

その場合は、その特許発明の改良発明、利用発明、周辺発明等が取れそうならそれを特許化ことで、改良発明等として保護できます。と言っても、改良発明等ではなく、特許登録された発明そのものを実施された場合は差止や損害賠償を請求することはできませんが。

それでも、改良発明の方が効果がかなり高く、値段もそれほど変わらないのであれば、現実には改良発明の製品の方がよく売れるでしょうから、そういう意味では事業を保護できると言えます。

あるいは、最初の特許で開示していない部分やノウハウがあった場合は、それを記載して特許を取得することができる場合もあります。例えば、製造方法にノウハウがあって、それが特許性があるのであれば、それを販売予定の国に出願して特許化できる場合があります。

あるいは、ノウハウは秘密に保持して特許化はせず、契約でノウハウライセンスしてそれによりその国での製造を独占する、というやり方も考えられます。

ですから、既に日本国内で特許になっていたり、優先権主張の時期を過ぎていたとしても、海外に特許出願をして権利化できる場合はあり得ます。ですから、発明が公開されていても何とかなる場合もあるので、簡単に諦めずにぜひ弁理士に相談してみて下さい。

 

 

米国のソフトウエア発明の特許適格性

バイオ関係の特許適格性(米国特許法101条)については、以前動画で解説しました。

米国特許適格性暫定ガイドライン

上記記事では、Alice判決などのコンピュータソフトウエアの抽象的アイデアについては、解説していませんでした。

しかし、その後、特許適格性についての判決なども出て、実務もかなり変化してきています。特に、特許適格性については、CAFCや最高裁が抽象的アイデアとして判示した少なくとも1つのコンセプトに類似しない場合、審査官は請求項が抽象的であるとして拒絶できなくなりました(2016年5月4日の抽象的アイデアに関するガイドライン)。

つまり、判決にないものは特許適格性を否定されない実務になったということで、特許適格性の予測が容易になったとも言えます。

特許適格性に関する判決については、USPTOでリストが公表されていて、判決が出る度にアップデートされていくようです。

subject matter eligibility court decisions
http://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/ieg-may-2016-sme_crt_dec_1.pdf

特許適格性の審査では、請求項にかかる発明が、抽象的アイデアであるかどうか、が最初に判断されます。この場合に、上記リストの抽象的アイデアの判示に類似するかどうかを判断します。

抽象的アイデアに該当した場合は、次に、significantly moreをもたらすか否かが判断されます。

significanly moreについては、Alice vs CLS Bank事件の審理において、最高裁判例のDiamond vs Dier事件が検討され、請求項に、従来の手法における技術的課題を解決するように設計されたプロセスを記載しているため、significantly moreの要件を満たす、とされました。

つまり、非常に大雑把に言えば、従来の技術的課題を解決る発明であれば、significantly moreを満たすということです。実際には、個別具体的に判断されるので、発明毎に検討が必要ですが。

また、コンピュータの機能の改善に向けられた発明もsignificantly moreの要件を満たす場合があります(In re TLI communications, LLC)。

ただ、米国の特許適格性の判断は日本とはかなり違うので、日本の審査基準で特許になる発明として例示されている請求項であっても、米国では特許適格性を有しない、と判断される場合もあるようです。

 

 

 

米国とドイツの訴訟構造の違い 竹中俊子ワシントン大学教授

米国の特許訴訟と、ドイツの特許訴訟は大きく異なります。

米国の場合は、侵害警告状を送らずに、まずは訴訟を提起します。これは、警告状を出すことで、相手が差止請求権不存在訴訟等の訴訟を起こす利益を持つことになり、相手が有利な裁判所を選んで不存在確認訴訟を起こす可能性があるからです。

そこで、米国では、いきなり訴訟を提起するわけです。そして米国の場合は広範なディスカバリーが認められます。その分費用も高額で時間もかかります。ディスカバリーの平均費用は3億円位だそうです。期間も3年位かかります。その後訴訟になりますが、ディスカバリーでほとんど勝ち負けがわかるので、訴訟に至るのは3~4%です。

これに対し、ドイツの特許訴訟は、まず警告状を送ります。警告状を送っていなかった場合、相手がすぐに認めて訴訟が終結すると裁判費用を請求できなくなるようです。

そして警告状を送った後、訴訟をするわけですが、大体1年間程度で判決が出るようです。訴訟費用も1000万円程度でできます。これは、訴訟費用を敗訴者負担にするからで、もし負ければ3000万円位かかる可能性もあります。

昨年12月に米国では法改正があり、訴状にある程度侵害の事実を書く必要があるようになりました。それまでは、侵害品も侵害されたクレームも特定せずに訴状を提出できたのですが、それを悪用するパテントマフィア等がいたために厳しくなったようです。

このあたりはドイツや日本に近づいてきた、ということも言えると思います。

ドイツでは訴状で侵害を立証する必要があります。そのために日本のインカメラ手続きのような手続があります。しかしながら、これも認められにくい面があるようです。

アメリカのようなディスカバリーがなく、侵害の立証はドイツや日本の方が難しいと思われます。

もっとも、ディスカバリーも以前のように関連するものは全部、というのではなく、訴訟に必要なものだけに限られるようになったそうです。

このディスカバリーですが、米国内だけで使うという約束でやると保護規制がかかって、米国以外の国では使えないのですが、保護を無くさせる申請ができ、それが認められると他の国でも使えます。

ということは、証拠が集めにくいドイツや日本の訴訟をアメリカでも起こせばそこでディスカバリーを使って証拠を集め、それに基づいてドイツや日本でも侵害を立証できることになります。

韓国のボスコ等の訴訟はそのような形で立証されたようです。

そういう意味では、国際的なフォーラムショッピングとして、まずはアメリカで訴訟をして証拠を集めてから他の国で訴訟するのもよいかも知れません。

欧州の口頭審理召喚通知

欧州特許庁(EPO)に出願(PCT出願の移行手続き)すると、サーチレポート、拒絶理由が来てから、口頭審理召喚通知が来ることがあります。口頭審理は審査官が複雑と考えたような場合に出されます。

口頭審理では、当日1回で結論が出るので、できるだけそれ以前の補正書、意見書の段階で拒絶理由を解消して口頭審理を避けたいところです。通常口頭審理の日までには半年以上の期間があるので、その間に補正書、意見書を提出して、審査官に拒絶理由が解消するか、打診できます。

しかしながら、もともと複雑な案件なので、必ずしも事前に提出した意見書、補正書ですんなり拒絶理由が解消するとは限りません。

口頭審理の日(書面提出期限)までに拒絶理由が解消できない場合、可能であれば、日本の発明者が欧州特許庁に出張して口頭審理に参加すれば一番よいのですが、費用の面から難しいケースもあります。

その場合は、欧州代理人(弁理士)にメールや電話等でこちらの意図を説明して、欧州代理人のみに口頭審理に行ってもらうことになります。その場合、この補正をすれば確実に特許になる、という補正をAuxiliary claimとして入れられれば少し安心して任せられます。

しかしながら、拒絶理由(objection)がどうしても解消できる見込みがない場合は、口頭審理の場での対応になるので、何が出て来るかわからない口頭審理にそうした成り行き任せで参加した場合、拒絶されるリスクが高くなります。

最悪、口頭審理で拒絶査定が出る恐れがあり得ます。そうならないように何とか知恵を絞って、確実に拒絶理由を解消する対策を考え出す必要があります。

 

外国に特許出願する際のクレーム補正

日本から外国に特許出願する場合、その国の制度に合せたクレーム(請求項)に補正する必要がある場合があります。

例えば、医薬の用途発明の場合、日本は剤クレームの形で、「Xを有効成分とする、抗がん剤」のように書きます。欧州でも似たような感じですが、A compound X for use in treatment of disease Yという形で書く必要があります。

日本の表現をそのまま訳すと欧州特許庁から拒絶理由が来ます。例えば、An anti-cancer agent comprising X as an active ingredient.では物として新規性が無いという拒絶理由が来ます。

以前は欧州特許庁では、物質Xの医薬Y製造のための使用、というスイスタイプクレームのみが医薬用途発明として認められていましたが、今ではこの形式は欧州では認められません。不思議なことに中国はこのスイスタイプクレームのみが認められるようです。カナダではスイスタイプと今の医薬用途クレームの両方が認められます。これらも将来的には統一の方向に向かうとは思いますが。

アメリカの場合は、医療方法も特許が認められるので、「Xを用いて病気Yを治す方法」というようなクレームになります。アメリカでは日本のような剤クレームは認められません。

このように、国毎に認められるクレームが違う場合があるので、外国出願をする場合は、各国のクレームに対応できるように明細書を作成する必要があります。

他に、マルチのマルチディペンデントクレームが認められない国の場合は、従属関係を補正する必要があります。例えば、以下のような場合です。

クレーム3  ・・・である、請求項1または2に記載の●●
クレーム5  ・・・である請求項1~4のいずれかに記載の●●

この場合、2つの請求項に従属する3が、さらにクレーム5で複数の請求項として従属しています。このように複数の請求項に従属する請求項をさらに複数従属させたクレームがマルチのマルチディペンデントクレームになります。

この場合は、どちらかを1項のみに従属させる形に補正します。

マルチのマルチが認められる国も多く、インドやインドネシア等もマルチのマルチが認められます。そういう国ではマルチのマルチ解消のための補正は必要ありません。

それ以外にも、日本語としては意味が通じるけど、それをそのまま翻訳したら外国では不明確になる表現などもあり得ます。そういう場合は、明細書の本文の記載を元に意味が通じるように補正するか、不明確の拒絶理由が来てから補正することができます。

不明確であるという拒絶理由が来る場合は、補正の示唆がある場合もあるのでその国の審査官の言う通りに補正すればよいです。

ただ、極く稀に、審査官の補正の示唆と裁判所の判例とが異なる場合があり、そのような場合は現地代理人(弁護士または弁理士)の意見に従うのがよいと思います。

これらのクレーム補正は、優先権主張してPCT出願する場合には、その段階で明細書中に入れることもできますし、最初の出願から入れておくやり方もあります。

パリ条約による優先権を主張して外国に直接出願する場合は、その段階でその国に合うように補正したクレームで出願すればよいですが、優先権の基礎となる最初の出願にもそのようなクレームに補正できるように記載しておく方が確実でしょう。多くの場合は日本の通常の明細書の書き方で書いておけば補正可能ですが。

特許申請から登録までにかかる総費用

特許申請にかかる費用は、出願時の20~30万円だけ、と考えていませんか?

実は、その後もいろいろ費用がかかります。ですから、それを予想していないとどうしてこんなに何度もお金がかかるんだ?と思ってしまいます。

そこで、特許出願から登録までにかかる費用を解説してみました。

出願時  20~40万円

審査請求時 118000+4000×(請求項数)

拒絶理由応答時(意見書、補正書提出) 10~15万円(×拒絶理由の回数。2~3回が多い)

登録時 成功報酬10万円+(請求項数ー1)×1万円

これらを全部合計すると、60~100万円程度になります。ですので、特許出願すると大体60~100万円かかると考えておくとよいと思います。

外国出願する場合は、最近は特許協力条約(patent corporation treaty, PCT)に基づくPCT出願が多いです。もちろん、PCTに加盟していない国には直接パリ条約の優先権を主張して出願します。台湾等が該当します。他にクウェートのような国もその地域のグループに出願するのがよいです。

外国出願の場合はPCTでは、印紙代で28万円程度、弁理士事務所の費用がそれに上乗せされます。PCT出願した場合は、優先日から30か月以内に各国へ移行する必要があります。この際翻訳費用がかなりかかります。

それ以降は日本に似ていますが、米国では特許弁護士が担当するため、最低でも時給3万円です。少し拒絶理由の応答に頑張ってもらうと1回で50万円程度の請求が来ることもあります。

それとバカにならないのが欧州の出願維持年金です。これは出願を維持するためだけに毎年払うのですが、5年目とかだと毎月8万円の支払いになり、これもかなり負担になります。

外国で特許を取得する場合、大体100~200万円程度と考えられます。個人で外国に出願する場合は、上限1000万程度の予算が普通でしょうから、大体、5ヵ国以内程度、例えば、米国、欧州、中国、韓国あたりでしょうか。事業によってはオーストラリアやカナダ、東南アジアでは、タイ、マレーシア、インドネシア、など、インドやドバイあたりにも出願することもあり得ます。

大企業や医薬品ベンチャー、市場の大きいベンチャーなどですと、世界50カ国以上に出願することもあり、その場合は1億円程度のお金は準備しておいた方がよいでしょう。

いずれにして外国出願する場合は、その国に出願することがコスト的にペイするか?を総合的に判断して、コストよりもメリットが上回る、と判断できればその国で権利化すればよいと思われます。

多くの場合は、市場がある国、製造拠点とする国、特許が権利行使しやすい国、などが出願国決定の要因になります。要はコストパフォーマンスのよい特許申請にできるかどうか、と言ったところでしょう。

米国特許適格性暫定ガイドライン(バイオ関係)

米国では、特許適格性に関する暫定ガイドラインが公表されています。それによると概ね以下の通りです。今回は主にバイオの自然界に存在するものについて解説しましたので、抽象的アイデアには当てはまらない部分がある可能性がありますのでその点ご注意下さい。

米国のソフトウエア発明(抽象的アイデア)の特許適格性については以下の記事で解説しましたので、ご興味のある方は併せてご覧下さい。

米国のソフトウエア発明の特許適格性

外国で特許を取得し、維持する場合の費用

海外に特許出願をして、登録料を存続期間満了まで維持するとすると、およそ、100~200万円程度かかると考えておくのがよいです。

最も安いと思われるのは韓国で、翻訳と出願で20万円位でできる事務所もあります。それから、拒絶理由に対応すると、5万円位、登録まで行って30万位で済む場合もありえます。

しかしながら、通常はそんなに安くはできず、例えば米国の場合は、英語への翻訳料が30~50万円(ページ数によっては100万を超える場合もありえます)で、米国移行手続きの米国特許庁費用が約$1500、海外代理人の費用、日本代理人費用で約100万円かかります。

その後、拒絶理由が来た場合は、1回15~20万円、ちょっと複雑なことをすると、1回で50万かかる場合もあります。米国は特許弁護士がやっているので、時給3万円以上が相場ですから。

そして、米国は、4年目、8年目、12年目で特許料を支払うのですが、これが結構高くて、登録時$2080、4年目$1600、8年目$3600、12年目$7400で、合計$14680、つまり、1ドル120円で換算すると、登録維持費用だけで176万1600円かかります。

これらを考え合わせると、米国ではフルに権利を維持すると、300万円位かかる計算になります。

また、中国等の場合は、安い事務所だと、翻訳と出願で40万強程度ででき、日本事務所の手数料も合わせても60万程度で出願できます。しかしながら、中国の場合、拒絶理由が何度も出るという特徴があります。

3回位は普通で、5回位出ることもあります。中国の場合は、中国語が分からない場合には日本語に翻訳してもらうので、その費用が発生します。すると、拒絶理由対応1回で中国代理人に20万円位支払うことがあります。

これに日本代理人手数料も追加されますし、5回拒絶理由が出ると、100万円を超えてしまいます。

欧州の場合は、移行費用も高額ですが、米国に出願している場合は英訳費用が不要ですので、数十万円で移行できます。しかしながら、欧州では維持年金というのがかかります。これが結構高くて、8万円とかになります。それが毎年かかるので、かなりな負担になります。

欧州統一特許で欧州全域で権利化することもできます。この場合はおそらく500万円以下で欧州全域(といっても加盟国のみ)で権利化できるので、31か国全部で権利化するよりはかなり安くなっています。以前は各国毎に翻訳文を提出するのに費用が莫大な費用がかかっていましたから。

いずれにせよ、外国出願して、権利を維持する場合には、200~300万円がかかる場合があります。もちろん、権利を維持するかどうかは、ビジネスの状況を見ながら判断すればいいわけで、費用対効果から言って、登録を維持する費用よりも、独占の利益の方が大きければ維持すればいいし、特許を維持するよりも利益が少ないのであれば、最後の12年目の登録料7400ドルを支払わなければいいだけです。

通常は利益が100万円もない、ということは考えにくいので、維持すると思いますが。

いずれにしても、海外出願(外国へのPCT出願の国内移行)は、費用対効果の観点から考える必要があります。マーケットがあり、権利行使が可能な国であれば、原則は出願するのがよいです。