米国のソフトウエア発明の特許適格性

バイオ関係の特許適格性(米国特許法101条)については、以前動画で解説しました。

米国特許適格性暫定ガイドライン

上記記事では、Alice判決などのコンピュータソフトウエアの抽象的アイデアについては、解説していませんでした。

しかし、その後、特許適格性についての判決なども出て、実務もかなり変化してきています。特に、特許適格性については、CAFCや最高裁が抽象的アイデアとして判示した少なくとも1つのコンセプトに類似しない場合、審査官は請求項が抽象的であるとして拒絶できなくなりました(2016年5月4日の抽象的アイデアに関するガイドライン)。

つまり、判決にないものは特許適格性を否定されない実務になったということで、特許適格性の予測が容易になったとも言えます。

特許適格性に関する判決については、USPTOでリストが公表されていて、判決が出る度にアップデートされていくようです。

subject matter eligibility court decisions
http://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/ieg-may-2016-sme_crt_dec_1.pdf

特許適格性の審査では、請求項にかかる発明が、抽象的アイデアであるかどうか、が最初に判断されます。この場合に、上記リストの抽象的アイデアの判示に類似するかどうかを判断します。

抽象的アイデアに該当した場合は、次に、significantly moreをもたらすか否かが判断されます。

significanly moreについては、Alice vs CLS Bank事件の審理において、最高裁判例のDiamond vs Dier事件が検討され、請求項に、従来の手法における技術的課題を解決するように設計されたプロセスを記載しているため、significantly moreの要件を満たす、とされました。

つまり、非常に大雑把に言えば、従来の技術的課題を解決る発明であれば、significantly moreを満たすということです。実際には、個別具体的に判断されるので、発明毎に検討が必要ですが。

また、コンピュータの機能の改善に向けられた発明もsignificantly moreの要件を満たす場合があります(In re TLI communications, LLC)。

ただ、米国の特許適格性の判断は日本とはかなり違うので、日本の審査基準で特許になる発明として例示されている請求項であっても、米国では特許適格性を有しない、と判断される場合もあるようです。

 

 

 

韓国の単一性違反

韓国出願をすると、日本なら1出願でできるものでも、単一性違反の拒絶理由が来ることがあります。サブコンビネーションのような関係のものでも単一性違反とされたことがあります。

そこで、1つのグループを選択し、残りを分割するとあっさり特許になることもあります。

先日は、分割出願してから数か月で登録査定が来て驚きました。

韓国の場合は、登録査定から3カ月以内に登録料を納付すればいいので、日本よりも時間に余裕があります。

韓国の特許法は日本の特許法に近いですが、制度としては、米国の制度にもかなり近いです。

医薬等はオレンジブックのようなものが韓国にもあります。

グレースピリオドも米国と同じく1年です。

かなり米国の影響下にあることが分かります。米国と同じ制度にするための法改正がよくありますから。

また、韓国では食品の機能性クレームが認められます。また、機能性食品のデータ保護期間もあるそうです。

日本でも食品の用途特許が4月から認められる予定ですが、機能性表示のためのデータの保護期間はまだ定められていないようです。ですから、日本では、特許でうまく保護したうえで機能性食品のデータを取らないと、せっかく高いお金をかけて機能性食品のデータを取っても、他社にも自由に使われるのであまり意味のないことになってしまいます。

各国の制度の応じた最適な戦略によって製品を保護すべきでしょう。

拒絶理由通知の応答期間の延長

出願後、審査請求して拒絶理由が来た場合、通常は60日以内に応答する必要があります。特に補正は、応答期間を過ぎると受け付けてもらえません。

意見書については、指定期間を過ぎても受け付けてもらえることがありますが。意見書は審査官の指定期間、補正書は法定期間だからのようです。

また、現状では、新規性、進歩性に関する拒絶理由に対して実験する場合にのみ1カ月の延長が認められています。

外国人には翻訳等の理由で延長が認められています。

これが4月1日からは、日本人でも合理的な理由(実験が必要)という要件がなくなるため、2カ月の延長が申請さえすれば理由は関係なく認められるようになりました。

このあたり、アメリカや欧州では延長が認められるのに、日本では実験をする場合以外認められず非常に不便でしたが、漸く欧米のように認められるようになったというわけです。これは特許法条約への加入のためのようです。

とはいえ、アメリカではもともと3カ月が応答期限で、その後3カ月まで延長できるので、最大6カ月以内に応答すればいいのに対し、日本では4カ月とまだアメリカよりは短いです。

最近では、拒絶理由の文献も長いものも増えてきて、外国の特許文献の場合数百ページにも及ぶものもあります。

さらに、最近では、例えばチェコ語の引用文献が引かれたこともあり、字が小さくてグーグル翻訳もきちんとできず、読むのに苦労します。

そういうこともあり、無条件に2カ月延長できるのはありがたいです。

外国人の場合は2カ月+1カ月の3カ月の期間延長が認められます。

4月1日の施行ですから、2月3日頃以降に到着した拒絶理由から2カ月の延長が認められることになるのでしょう。特許事務所としても少し気が楽になります。従来の2倍の検討期間が得られますから。とはいえ、2倍の検討時間をかけて従来と同じ料金でやっていては経営が成り立たないので、うまく時間を使う必要があるのは従来と同じですが。

他にも4月1日施行の改正法では職務発明規定の改正、特許料の値引き等があるのですが、それらについてはまた別の機会に書きます。

米国、欧州、中国、など全世界の先行特許文献調査

米国、欧州、中国、など全世界の特許文献を調査する方法について動画で説明しました。

普通の検索感覚で検索でき、pdfファイルでダウンロードできる、という意味ではgoogle patentが適していると思います。

もし、全世界の出願状況も見たいのであれば欧州特許庁のesp@cenetというのが便利です。全世界の出願が掲載されています。

米国のみの特許公報や公開特許公報を見たい場合は、米国特許商標庁(US patent & trademark office:USPTO)で検索すればよいと思います。

これら以外に世界知的所有権機関(world intellectual property organization: WIPO)のpatent scopeを使うと国際出願(PCT出願)の公開公報や国際調査報告などが見れます。

上記は全て無料で利用できますので、お気軽に覗いてみて下さい。

職務発明規定と発明者

数日前の新聞に、職務発明をいきなり会社に帰属させるような記事が出ていました。

発明は自然人しかできないので、現在の法律では、発明をした場合、特許を受ける権利は原始的に発明者に帰属することになります。そして職務発明規定で、職務発明については会社が承継する、という規定があれば、発明完成と同時に特許を受ける権利が会社に移るので、発明者は特許を受ける権利を持たないことになり、日本国内で特許出願をしても冒認出願になります。

ただ、この場合、特許を受ける権利、とだけ職務発明規定に書いておくと、外国出願の特許を受ける権利は含まれない、という論理で外国には発明者が自分でパリ条約による優先権主張をして外国に特許出願するという猛者も昔はいたようです。

最近の職務発明規定はよくできているのでそういう穴は無いところが多いと思いますが、中小企業ではまだ特許を受ける権利は国内だけとか、職務発明規定すらない会社もありそうな気がします。

いずれにしても、発明して特許を受ける権利が発明者ではなく、会社に発生する、というのは、職務著作のような考え方ではないかと思われます。以下に著作権法の該当箇所を掲載します。

(職務上作成する著作物の著作者)
第十五条  法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
2  法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
このような形で発明についても職務発明の発明者を原則、会社や大学等にする法改正がされるかも知れません。
そうなると、天才的な発明者で、人間関係が苦手な人はすごい発明をしても後で職務発明訴訟で争うことができなくなるおそれがあります。とはいえ、海外では職務発明ですごい発明をしても、相当の対価について争えるような規定はなく、人事制度全体の中で評価されるようです。もっとも海外では研究者の移動も普通ですから、会社の処遇が気に食わなければすぐに別の会社に移ったり、自分で会社を作ったりできるのでしょうが。
ただでさえ、自分でアイデアを出して、会社の方針に逆らっても自分のやりたい研究をやる、というやる気のある若手研究者が減っているのに、このような制度で発明者の評価を会社の思う通りにした場合、中村修二さんのような独創的な発明者が少なくなるかも知れません。が、山中伸弥先生のような人格者で優れた発明者もいるので何とかなるという気もします。いずれにしても発明者の努力が正当に報われ、やる気が出て、どんどん優れた発明が出るような制度にしてもらいたいものです。

 

 

特許収支が大幅黒字

特許使用料として海外に支払った額と、受け取った額の差を示す特許収支が大幅な黒字となっている。2012年は9528億円と過去最高額となった。

ただ、この内訳は、純粋な意味での外国企業へのライセンス料ではなく、海外子会社からの使用料が大半だという。技術輸出の71.6%が親子会社間の取引だったようだ。

医薬に関する特許技術に関しては海外の特許やノウハウ使用料に高額のライセンス料を支払っており、1兆円か2兆円位の赤字だったと記憶している。

それを海外子会社の使用料で相殺してプラスが1兆円程度出た、という話と思われる。

これは、米国のバイオベンチャーは極めて広い基本特許を押さえてその特許を使わないとその分野の研究ができない位に広い権利を取得している。なので、日本企業としてもその分野の研究開発するためだけに巨額のライセンス料、例えば、100億円位のライセンス料を支払うこともある。

米国の特許出願が非常に広い範囲を書けるのは、米国が非常に広い基本特許を認める場合があるからで、だからこそ、弁理士の発明を拡張する腕も重要になってくる。日本では、米国ほど広い権利範囲が認められないので、特許出願の際にもものすごく広い範囲を押さえる明細書を何十ページ、何百ページも書くことは少ない。

しかし、米国のように、1つの特許で100億円規模のライセンス収入を得ようと思ったら、とことん広い特許出願明細書を書き、欧米にも特許出願して広い権利範囲を確保すべきだろう。

そういう意味では、今後の特許出願戦略も世界戦略を考えたうえで行う立案する必要がある。

欧州の特許出願維持年金

欧州特許庁への特許出願では出願を維持するためだけに毎年維持年金がかかります。英語では、renewal fee といいます。

最初の頃は8万円、5年目になると10万円位かかります(欧州の代理人費用も含めて)。

出願維持年金制度は中国も以前は設けていましたが廃止しました。

拒絶理由も何も来ないのに、特許出願を係属させておくだけに維持年金がかかるというのはちょっと理解に苦しみます。しかもかなり高額です。クライアントにも説明しづらいです。

不要な特許出願を放棄させる、という効果はあると思いますが・・・

さらに、5年経っても審査が始まらないこともあります。

出願維持年金を取るのであれば、その分、早期に審査をすべきではないかと思います。でなければ何もしないでお金だけ取る状態が続くのでおかしいです。

米国拒絶理由通知(office action)への対応

米国に特許出願した場合、日本とは異なり、審査請求は必要なく、全ての出願が自動的に審査される。

そして、日本でいう拒絶理由通知をoffice actionというが、これが拒絶理由があれば送られてくる。

office actionは最初のoffice actionと最後のoffice actionに分類され、最初のoffice actionでは明細書の記載の範囲内で自由に補正できるが、最後のoffice actionでは補正の範囲が限られる等日本と同じような制度になっている。

日本では顕著な効果があればそれを主張することで進歩性が認められることがあるが、米国では効果を主張するのではなく、構成の違いを主張する必要がある。

もっとも効果に顕著な違いがあって構成が同じであるはずもないので、効果の違いを構成の違いで主張すればいいだけのことで特に困難性が高いわけではない。また、米国や欧州ではデータの後出しというか、明細書に記載してないデータを出して効果を主張することもできるので、日本よりも反論しやすい面もある。

以前、大学に勤務していたときは、米国で特許になっているのに、なぜ日本ではなかなか特許にならないだ?とある准教授に言われたことがあったが、米国の方が特許になりやすい場合はかなりある。

欧州の方がもっと進歩性が緩いと一般的には言われている。

そういう意味では、欧州、米国の拒絶理由も日本よりも難しいとは限らない。

パイオニア発明の特許出願

パイオニア発明については、欧州には、従来技術に対する寄与度が大きい場合に、従来発明の改良発明よりも、より一般化した権利を与える、という規定があります。

この規定により、新しい世界を拓くようなパイオニア発明については、サポート要件の範囲を超えて、より広い権利が付与される場合もあり得ます。

そういう意味では欧州特許庁の審査基準は独創的なパイオニア発明を尊重するものと言えます。

米国の記載要件は、MPEPによると、特許出願人(発明者)がその発明を所有していることがわかるように記載すればよく、日本のように厳しいサポート要件は課されていません。

そのため、米国では非常に広い特許権が成立することがあります。

これに対し、日本では、特許出願明細書のサポート要件として課題を解決できるように書く必要があります。

しかしながら、新しい世界を拓くパイオニア発明については、特許出願時に課題を全て網羅して書くことはおそらく不可能でしょう。どれだけ広く適用できるかも予想できないでしょうから。

そういう意味では日本のサポート要件により、パイオニア発明であってもかなり狭い権利しか取れないおそれがあります。

日本発のパイオニア発明の特許出願については、欧米と同じ位に広い権利範囲を付与してもいいのではないかと思います。

米国出願と米国発明法の改正

米国改正特許法(The America Invents Law)の施行が来月9/16に迫ってきました。新規性に関する規定は来年2013年の3/16ですが、それ以外の大部分の法律は来月16日から施行されます。

注意すべきなのは、新規性に関する規定が来年3/16日から適用されるので、それより前の出願の請求項についてはinterferenceの規定が適用されるということです。

そして、3/16以降の特許出願については、先願主義が適用されますので、3/16よりも前にした出願に基づいて優先権主張出願をした場合は優先権が有効な請求項についてはinterference(先発明)の規定が適用され、3/16以降の出願の特許請求の範囲(請求項)については先願主義の規定が適用されます。

また、従来は発明者しか出願になれませんでしたが、今回の改正により、譲受人や譲り受ける予定の名前でも出願できることとなりました。つまり、最初から会社や大学名で出願できるようになったということです。宣誓書等は従来通り必要ですが。

上記以外にもいろいろ注意点があるのでそれについてはこのブログでも徐々に書いて行く予定です。