発明ヒアリングとTRIZ、USITで特許出願数を増やす方法

研究補助金の研究評価では、研究費の割に特許出願件数が少ない、という問題を指摘される場合があります。また、会社でも1人あたりの出願件数のノルマが決まっていて、発明数を増やす必要がある場合もあります。

発明を増やしたい場合には、まずは、発明者のやる気(モチベーション)を上げるとともに、発明、発想法(発明のやり方)を教えるのがよいと思います。もちろん、定石に則って発明ができる場合だけでなく、全くの試行錯誤の繰り返しから思いもよらない発明が出る場合もありますが、やはり、最低限の発明、アイデア発想法の定石は知っておくべきと思います。発明者はオズボーンやTRIZ、USITの基本程度は知っておくべきでしょう。

それに加えて、エジソンやテスラ、グーグルなどのアイデアの出し方や発明の仕方を研究するのもよいと思います。イノベーションのジレンマで有名なクリステンセンの「イノベーションのDNA」という本によると、イノベーションの能力は生まれつきではなく、後天的に育成できる、と結論づけています。さらにその能力の特徴と開発手法を具体的に掘り下げて記載しています。

ですから、企業の研究開発部員であまり発明が出ない人はこのイノベーションのDNAの手法を試してみるのがよいと思います。他には、中松義郎博士の、「ケチョウスピゾケピケアイキ」というやり方もありますし、エジソンやテスラの発明手法もありますので、ご興味のある方は研究されるとよいと思います。

私の発明コーチング&コンサルティングを受けられれば、これらに基づいたコーチング&コンサルティングを行いますので、より、発明が出やすくなると思われます。

このようにして、研究開発担当者の発明へのモチベーションを高めたら、次は、知財(特許)部員による発明ヒアリングの回数を増やすといいと思います。話を聞いているうちにここをこうすれば特許になる、というのが明確になる場合もあります。

そして、研究員が銅の発明をしそうなら、どうすれば、それを金や銀、プラチナの発明にできるか、とアドバイスするのも知財部員や発明コーチの役割です。それにより発明により高い価値を付けることができます。

とはいえ、知財部員も戦略立案や契約書チェック、ライセンス交渉、知財訴訟など、他の業務にも忙しいでしょうから、時間がない人も多いと思います。そういう場合には、外部の弁理士にヒアリングを依頼するのもよいと思います。

弁理士には守秘義務がありますし、発明を特許にする専門家ですから、普通に考えたら特許にならないだろうと思われる発明でも、特許にできる方法、ノウハウを知っている場合があります。

さらに、研究者も知財部員もこの発明は実用化できないだろう、と思う発明でも、弁理士は様々な分野を扱っているので、この分野に使えば、非常に画期的な発明になる、この発明と組み合わせれば大きな市場が産まれる、などとアドバイスできる場合もあり得ます。

そういう意味で、知財部員が忙しくて発明ヒアリングまで手が回らない場合は、研究所近くの弁理士に発明ヒアリングを依頼するのもいいと思います。大平国際特許事務所でも、関東、関西地域では、発明ヒアリングのサービスを行っておりますので、以下からお気軽にご相談下さい。

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それ以外のよくある発明発掘方法としては、企業であれば、毎月の月例報告会や、研究ミーティングのようなものがあれば、そこで発明発掘をすればよいでしょう。その会議の後に懇親会でもあれば、さらに生の情報が得られます。もうすぐ面白いデータが出そうだ、という情報があれば、それをウォッチしておけば特許出願に繋がる可能性も出てきます。

大学なら、博士や修士の論文発表会や審査会に出るのも有効です。ただし、この場合は、秘密状態で発表するようにしないと、新規性喪失の例外規定を使うことになるので、欧州では権利化できなくなります。通常は、こうした発表会は守秘義務のない学生が聞くので、新規性を喪失してしまうという問題があります。ですので、可能であれば、発表会の前にプログラムなどでタイトルをチェックし、特許になりそうな発表には事前に事情を聞くのがよいのですが、量が多いとそれも難しいです。

大学でもっと早く情報をつかむには、研究室毎の報告会や成果発表セミナーのようなものに参加するのがよいです。大体3ヶ月~半年おきにそういう報告会をする研究室が多いです。一度聞いておけば、そんなに劇的に早く進むことは少ないので、1~数年はそのテーマをフォローできたりします。

さらに、大学の場合は、何もないときでもときどき先生の研究室にお邪魔して、何か面白い話はないですか?と聞くと最新の成果を教えてくれることもあります。そしてそれがいい特許になる場合もあり得ます。

また、大学の場合は、先生と話しているうちに、研究室が最も力を入れているメイン・テーマではないところに面白い(売れる)発明がある場合もよくあります。大学の教授、准教授らは、基礎研究が好きな方も多いですから、メインは基礎研究ですが、どうでもいいというか、軽く続けているテーマが応用に結びつくこともありますから。

メインのお話を聞いたあと雑談をしていて最後の5分で聞いた話がビジネスに結びついた、というケースもあります。

研究者の先生は、そんなの特許になるはずない、と信じていて、知財部との話で出さない場合があり、それを聞き出して特許にできれば強い特許になる場合もあり得ます。

また、1件で出願できる発明を戦略的に分けて出願すればその分特許出願数は増えます。微妙に異なる発明を2つ以上に分けて特許出願するのは企業ではよくやります。その場合は、海外に出願する場合、自己衝突(self collision)を避けるように同日出願するのが一般的です。

もちろん、ただ単に出願数を増やすだけではコストが増えるだけですから、利益を生む、実のある発明を発掘するようにすべきでしょう。

また、発掘した発明をTRIZで展開していくと、40のフレームワークがあるので、それを使って、置換したり、入れ子にしたり、いろいろなパターンを使って発明のバリエーションを考えることができます。

それをやっていると、しばしば、この発明は2つ以上の特許出願に分けた方がいい、となる場合があります。つまり、1つの発明を展開していくことで2つ以上の発明にすることはTRIZを使えば比較的容易にできます。というよりも、必然的に増えてしまうので、予算のない場合は逆に出願費用がかさむという問題が生じ得ます。

そういう意味では、発明を増やすのにはTRIZが有効です。

大平国際特許事務所では、発明者の中に眠っている発明を引き出して特許化する発明コーチングやTRIZ、USITも得意としております。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。

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知財(特許)部員、研究総務等の間接部門の発明特許報奨金

発明者については、職務発明規定により、所定の発明報奨金が支払われます。

しかしながら、研究総務部、研究企画部や知財部門は発明を職務としていないため、通常は、発明者として研究開発を行い特許出願して発明報奨金を得ることができません。

とはいえ、これらの間接部門も間接的には発明の創出に寄与していますし、知財部員が実質的に発明もしている場合があります。研究者の実験データから発明概念を創っているわけです。特許請求の範囲の概念をいろんな切り口から検討して請求項(クレーム)を決めるのは、ある意味創造的な活動です。

発明者に入れるのは、アイデアを提供した人と、それを具体的に具現化した人ですから、研究者に対して、こういうデータを取れば、もっと広い請求項が書ける、と特許部員(知財部員)がアドバイスし、発明者がデータを取って発明を完成させた場合、その特許部員(知財部員)も理屈のうえでは発明者という解釈も成り立ちます。

実際、知財部員を発明者として名前を入れる会社もあり、そうであれば、知財部員は特に不満はないでしょう。が、多くの会社では知財部員が発明者に入ることは少ないと思われます。弁理士も日常的に請求項を作成していますが、発明者に入ることは、クライアント様から要請があったような特殊な場合を除いてありません。

知財部員が研究者の実験データを見て、別の角度から、こういう実験をしてみたら(全く違う)画期的な発明になる、とか、さらにこのような実験をしてこのデータを追加くれたら、発明概念をもう1段上位概念化できる、とアドバイスすることもあると思います。

これを、研究者が銅の発明を持ってきたら、知財部員はそれにアドバイスして金の発明にするのが知財部員の役割だ、という人もいました。

つまり、研究者は発明概念の種を持ってくるわけですが、それは、知財部員の能力によって、銅の発明になることも、金の発明になることもあるわけです。

それをブラッシュアップして広くて強い発明概念にするのは知財部員(特許部員)の重要な役割だと思います。もちろん弁理士もそれをするのが当然です。

そういう意味で、特許部員(知財部員)も発明報償金をもらえる仕組みにすれば知財部ももっと活性化するかも知れません。

とはいえ、巨額の報償金を知財部員がもらうのはおかしい、と思うのであれば、研究者の発明報償金の一部(10~20%)をプールしておいて、そこから、知財部員や研究所の総務・企画担当などに貢献度合いに応じて配分する、というのもいいと思います。

研究者は研究を職務としていて、発明するために実験すること自体に対して給料をもらい、さらに、発明が特許になった場合に、発明報償金をもらえます。

これに対して、研究を担当していない社員はある意味機会損失している、とも言えます。そういう意味で、発明報償金の一部を発明を職務としていない社員にも還元する仕組みがあってもいい、という議論は実際にある会社内でもありました。

そうすれば、間接部門も発明創出に積極的に協力するようになる可能性があると思われます。

 

特許(知財)部員が発明した場合、特許出願人や発明者に入るべきか?

企業の知財部員が発明をすることはありうると思います。

例えば、私が以前勤務していた会社では、特許部員(元研究者)が研究所に行ってLC-MSMSやNMRを使って、発明の有効成分の分子構造を特定して出願したこともありました。知財部員が研究所に半年位出張して特許出願に必要なデータを出して特許発明を完成させたわけです。このような場合はこの知財部員が発明者に入るべき、と思うのですが、なぜか入りませんでした。このケースは訴訟すれば発明者に入れるような気がします。

また、知財部が専用の研究室を持っている会社もあると聞いたことがあります。理論的には、発明をブラッシュアップしたり、完成させるのに知財部員の研究が有効な場合もあると思われます。知財部員の多くは元研究者や開発部員であることも多いので、実験をやりたい知財部員も多いような気もします。

それに発明者は一度発明が完成すれば(1点でも成功データが出れば)、それについてさらなる補強データを細かく取るよりも、別の面白いテーマに移りたがる人が多いです。研究テーマも複数平行して走らせていることも多いですから、特許用に再度データを取り直すのはやりたくない、という研究員もいます。そういう意味でも知財部員が周辺データを固める役割を果たせば、発明が好きな研究者にとっては助かると思われます。

このような知財部員の場合は実際に実験に関わっているので、発明者に入ることは抵抗がないと思われます。

では、研究者の発明を特許部員(知財部員)がブラッシュアップして、このような実験を追加したら、このような全く異なる画期的な発明ができる、とアイデアをアドバイスし、研究者がそのアドバイスに従って実験し、データを出して画期的な特許を出願できたとします。

この場合の知財部員は果たして発明者になるのでしょうか?

吉藤先生の特許法概説では、発明者でない者の例として、単なるテクニシャンや単なる一般的な助言をした管理者などをあげており、発明者とは、アイデアを出した人か、実際にデータを出した人(発明を具現化した人)、という定義になっていたと記憶しています。若干表現は違うかも知れませんが、本質はそうだと思われます。

とすれば、アイデアを出し、それが発明につながったのであれば、吉藤説によれば発明者に該当します。ですから、特許部員がアイデアを出し、それが新規な発明につながったのであれば、理論的には、特許部員も発明者に入ってもおかしくありませんし、法律上、むしろその方が正しい扱いのような気がします。

それを裏付けるように、特許部員が過半数の特許出願の発明者に入る、という会社も現実にあるようです。

しかし、一般的には、知財部員が発明者に入る会社は少数だと思います。

一般に研究者の方が優秀で、特許部員はそれより下、と考えている研究者もいますから、そういう人にとっては、知財部員が発明者に入るのはおかしい、と感じることもあり得ます。

また、知財部員が研究開発まで出しゃばるべきではない、という元知財部長もおられました。

しかし、もし、知財部員が研究者出身で、若い研究者よりもずっと優秀な研究者であれば、本来、その知財部員のアイデアが新たな発明につながることは十分ありうることです。とすれば、そのような場合は知財部員を発明者に加えるのも法律上はもちろん、条理上もおかしくないと思われます。

そうすると、研究者(発明者)として優秀な知財部員は発明者に入れるが、大したアドバイスができない知財部員は発明者には入れないことになりますが、そこは個別具体的に知財部員が発明に貢献した事実を検討して判断すればよいと思います。

そうすれば、以前は研究所で使い物にならなかった研究者のおじ捨て山的な扱いで、特許部に行くのが嫌でたまらなかったような人でもやる気になるかも知れません。アイデアを出してそれが特許になれば給料以外に発明報償金を得られる可能性があるわけですから。知財部員のモチベーションアップという意味でも知財部員を発明者に入れるのは有効かも知れません。

では、特許事務所の弁理士が、発明者のデータ解釈の切り口を変えて、全く新しい分野を拓く発明コンセプトに変えた場合は、どうなるでしょうか?上記の理論から言えば、その特許事務所の弁理士も発明者に入ってもおかしくない、ということになります。実際、弁理士がクライアント様から発明者または出願人に入って下さい、とお願いされる場合もあるようです。

ですから、実験者とそれをブラッシュアップする知財部員や特許事務所の弁理士との関係を考えると、法律論から言えば、知財部員や弁理士が発明者に入ることもありえなくはありません。

ただ、弁理士の場合はお金をもらって明細書を書くのが仕事ですから、その過程で発明をブラッシュアップすることも料金のうちに入っていて、弁理士がした発明は明細書作成料を対価として会社に譲渡する、という論理もありえます。

大平国際特許事務所ではほぼそれに近い考えで、発明者様からの提案をさらにブラッシュアップして、全く違う切り口の特許請求の範囲を提案することもあります。しかし、それについては、現状、発明者(もちろん出願人にも)に入ることはしておりません。

が、もし、クライアント様が、発明者や出願人に入って欲しい、という場合は検討させていただきます。

その場合のメリットとしては、出願人に入れば、共同出願になるので、持ち分に応じた負担となるので、特許出願費用が安くなる、というメリットがあります。

また、弁理士が出願人や発明者に入った場合はその後の展開によっては、出願以外の事業収入や、ライセンス収入が見込めるので、通常の特許よりも当事者意識が強くなり、その特許のマーケティングや事業化により高いレベルの知恵を出せるかも知れません。

そういう意味で、特許部員や弁理士を発明者に加えることは、その特許を強化する方向に働く可能性があると思われますので、発明者も一考の余地があると考えます。

もちろん、発明者が増えれば、特許報償金の分け前が減る面はありますから、近視眼的に見れば発明者を増やさない方がいいかも知れません。しかし、弁理士や特許部員が戦略面やビジネス面に優れた人であれば、共同発明者に入れておいた方がその後の事業化がスムーズに行き最終的に売上げが何倍にもなるケースもないとは言い切れません。

そのあたりは、弁理士や知財部員のセンスを見て決定すればよいと思われます。

例えば、どうしても海外出願して権利化したい場合は、担当の知財部員を発明者に入れておくと、外国出願や各国移行の際に知財部で通りやすい、などの事情があれば、知財部員を発明者に入れるのも一つのやり方でしょう。とはいえ、全員がそれをやり始めると優位性がなくなりますが。

大平国際特許事務所では弁理士が出願人や発明者に入ることも可能ですので、もしご希望の方がおられればお気軽にご相談下さい。もしかしたら弁理士の知恵により、大発明が出るかも知れません。

それ以外のメリットとしては、モチベーションが上がるので、非常にいい明細書が書け、強くて広い権利が取れる、という可能性もあり得ます。

上記のような出願形態にご興味のある方はお気軽にご相談下さい。発明者と弁理士で発明をブラッシュアップすることで、より売れる発明にすることも可能な場合もあり得ます。

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会社員、大学教員、公務員等が個人で特許出願する場合

会社員で会社の製品に関係するアイデアが出て、特許出願する場合や、大学の教員、公務員等が出願する場合、職務発明、業務発明、自由発明のどれに該当するかで出願する方法が変わります。

職務発明は、会社員や公務員が、会社や国、地方公共団体などから発明することを期待されている研究員や開発部員の場合は、職務として発明しているわけですから、職務上出てきた発明は会社や大学などが特許出願する権利を承継するような職務発明規定を置いていることが多いです。

2016年4月1日以降は職務発明制度が大きく変わり、使用者が特許を受ける権利を取得することができるようになりました。ですから会社の職務発明規定によっては、職務発明の完成により、使用者が特許を受ける権利を得ることが可能です。

そして、発明の対価についても職務発明ガイドラインが公表され、発明の対価として、留学、ストックオプション、昇進・昇格、有給休暇を余分に付与、実施権許諾なども認められるようになりました。ですから、青色発光ダイオードなどのように職務発明訴訟をして数億円規模の発明の対価を得ることは今後は難しくなると思われます。

以前は、発明して会社に評価され、研究所長になって相当の給料をもらっていた人が、退職後職務発明訴訟を起こして億単位の対価を得る、というようなことが実際にありましたが、今後は、発明により昇進した場合は、それが職務発明の対価とみなされ、職務発明の対価訴訟をしても負けるケースも出てくるでしょう。

あとは、会社が発明者にどの程度の報償金を出すか?の問題でしょう。それは会社にとってどれだけ特許が重要かによって変わってくると思われます。製薬企業のように1つの特許で数千億円、数兆円の売上げを守るような場合は、特許が会社の存亡を握っているとさえ言えます。

しかしながら、電機業界では、ほとんどの場合に代替技術があり、少し性能は落ちても、別の方法で特許を回避できる場合も多いです。また、一山いくら、で特許がまとめて取引される場合もあります。そういう意味では1つの特許の価値が製薬業界ほど高くはないことが多いです。

食品業界では、製品の寿命が3年程度のものが多いですから、特許の審査請求をする頃には商品が製造販売終了している場合もよくありますから、特許の価値はそれほど大きくないとも言えます。むしろ、広告宣伝により売れるかどうかが決まるので、特許発明はそれほど重要視されない可能性があります。健康食品、機能性食品は別で、サントリーのセサミンの特許は相当の収益(おそらく毎年数百億円レベル)を生み出しましたが。

多くの会社では、職務発明の対価(報償金)は、その特許製品の売上げの%で計算する規定があると思われます。個人的には会社の場合は、0.01~0.1%程度が妥当かな、と思います。0.01%の場合は、1億円の売上げで1万円、100億円の売上げで100万円ですから、社員としては少ないと感じるかも知れませんが、それ以外に昇進や海外留学などで報いられることになるのでしょう。

まずは就業規則をしっかり読んで、職務発明の取り扱いを調べるとよいです。あるいは、直近の上司に聞いてみて、それでわからなければ知財部に問い合わせれば教えてくれると思います。知財の取扱は法律で定められていますから、メチャクチャなことにはならず、常識的な解決になると思われます。

ただ、例えば、電気会社の研究員が研究テーマとして液晶パネルの発明を命ぜられ、それに関する発明をした場合は職務発明として明確ですが、会社の職務と関係ない発明もありえます。例えば、冷蔵庫の発明で液晶パネルとは関係ない発明とかです。ただし、会社が冷蔵庫の製造販売もしている場合は業務発明に該当するので、会社に届け出る義務がある場合もあり得ます。あるいは、毛生え薬とかの発明なら会社の業務とは全く関係ない自由発明なので自分で勝手に出願しても大丈夫です。

その場合、会社の業務に関連する発明の場合は業務発明と呼ばれます。これは会社からその分野の発明をすることは期待されていないけれども、たまたま発明してしまったような場合です。研究員ではない、営業部員が新製品のアイデアを思いつき、発明したような場合です。

例えば、冷蔵庫を会社が販売していた場合、社員が職務でなく冷蔵庫に関する発明をした場合は、通常は、会社に有益な発明ですから、まず会社に届け出るよう職務発明規定や就業規則に書かれていると思います。そして、会社が必要となれば職務発明に準じて取り扱われる場合が多いと思われます。つまり会社が特許を受ける権利を承継して出願し、報奨金も職務発明と同じか、それ以上が支払われるのが一般的です。

会社がその発明は不要、ということになれば、会社員個人に特許を受ける権利(出願する権利)が戻りますから、自分で特許出願をしてもいいですし、他社に売り込んでもよいです。ただ、あからさまなライバル会社に売り込むと会社に不利益を与えたということで別の意味で会社の処遇が悪くなるおそれはあり得ます。

最後は自由発明です。これは、製薬企業の研究員が自動車部品や冷蔵庫などの発明をしたような場合です。会社の設備も使わず、勤務時間外に、自分の趣味で車の整備をしているときに思いつき、試作したらとてもよかった、というような発明です。

このような発明については、会社の業務にも無関係ですし、発明に対して会社の寄与はほぼゼロですから会社に届け出ずに個人で出願しても通常は問題ないと思われます(特殊な規定があれば別です)。

ただ、裁判では何とでも争えますから、会社としては、給料を払って生かしているから発明ができた、会社が発明に貢献しているから会社に発明を届けないのは会社に不利益を与えている、等という主張をしてくるかも知れません。しかし、それは単なる嫌がらせで終わる可能性が高いとは思いますが。

いずれにしても、問題が起きないようにするためには、知財部(特許部)に発明について相談して個人出願してよい、というお墨付きを得ておくのが確実と思います。

上のような問題に限らず、大平国際特許事務所では読者の皆様からのお問い合わせを受け付けております。以下からお気軽にご相談下さい。

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出願人が外国人の場合の願書の氏名、住所の原語表記

出願人が外国人の場合は、通常の【氏名又は名称】、【住所又は居所】にカタカナで表記します。氏名については外国語そのままの順序でいいのですが、住所又は居所については、アメリカなら、米国、ハワイ州、キアハ、・・・などと現地表記とは逆になります。

そして、その下に、【氏名又は名称原語表記】と【住所又は居所原語表記】を書きます。この場合、両方とも現地の表記で書きます。ですから、米国であれば、・・・Haiku, Hawaii 96708 USAのように現地表記通りに記載します。これは、特許、商標とも同じです。

ところが、国によっては、個人の家が無い国があったりします。そして、そのような国では電話番号が住所を特定するために使われていたりすると、現地表記では電話番号が入ります。

しかし、日本の特許出願願書の住所欄に電話番号の単語を入れると補正指令がかかります。その場合は、電話番号というのを書かずに単に数字を書いてあとは普通に・・・ビレッジ、・・・ディストリクト、・・・(国名)のように書けばいいようです。

共産圏の場合、住所表記が無い場合もあるのですね。●●タワー4階とかいう表記はあるのですが、村の次にいきなりビル名が来ます。つまり、番地がないのです。これじゃあどうやって郵便物を届けているんだろう?と不思議になります。いろんな国がありますね。

最近、中国出願のために北京の大手事務所にも見積を取ってみたのですが、最大手が一番安い、という不思議な見積となりました。日本なら大きい事務所ほど高い、という印象があるのですが、中国は逆なんでしょうかね。

子供の発明を特許出願する親

数日前に、神谷明日香さんという小学6年生が空き缶の分別可能なゴミ箱で特許を取得したという話を書きました。

ただ、小学生の子供の発明を弁理士に依頼して出願できる親はあまりいないと思います。親が特許性があるかどうか判断できるケースが少ないし、特許出願するコストを負担できるか、また、出願コストに見合う売上があがるかどうかも不明ですから。

弁理士に依頼して出願すると、標準的な料金だと、明細書作成→出願だけで20~40万、審査請求で15万程度(特許庁印紙代含む)、中間処理(拒絶理由対応)で1回約10万円、成功報酬10万~20万かかるので、最低でも50万円程度かかります。

拒絶理由対応が難しい場合は登録までに100万円近くかかる場合もあり得ます。審判請求したりすると、150万円以上かかることもあります。今回は早期審査も請求しているのでその費用も余分に必要です。

それだけのコストをかけてまで出願するのは普通の会社員の家庭ではよほど売れるという確信がないと難しいと思われます。神谷明日香さんの場合は、シニアソムリエで有限会社カルチベイトジャパン代表取締役の父親が特許を取得していて、発明家のようですから、ある程度特許について詳しいのだと思われます。

ただし、父親が発明者での特許は以下です。
【特許番号】特許第5022528号(P5022528)
【登録日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【発行日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【発明の名称】味覚値処理装置、及び、プログラム
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【氏名又は名称】株式会社カルチベイトジャパン
【発明者】
【氏名】神谷 豊明

【請求項1】
味覚の一種として色を含む複数種類の味覚の各味覚値をワイン別に保持しているワイン味覚値保持手段、を有する記憶装置と、
判定対象の料理が持つ色の味覚値に対応付けられている各ワインを前記ワイン味覚値保持手段からそれぞれ抽出して、該各ワインが持つ複数種類の味覚の各味覚値をそれぞれ取得する味覚値取得手段と、
前記判定対象の料理が持つ複数種類の味覚の各味覚値と、前記味覚値取得手段が取得した各ワインの対応する味覚の各味覚値とに基づいて、前記判定対象の料理と前記取得した各ワインとの適合性をそれぞれ判定する適合性判定手段と、
を有することを特徴とする味覚値処理装置。

これはつまり、料理に合うワインを自動的に見つけるプログラムだと思われます。これは2005年に出願され、2012年に登録されています。この経験でかなり特許審査に対する知識が深まったのでしょう。

それに加えて父親も経営者ですし、祖父がスーパーを経営しているので、孫が特許で新聞に載れば製品が全く売れなくても宣伝効果で元が取れるでしょうけど。

こういう親子が増えて欲しいですね。さらに、この発明を事業家して小学生社長で年収数千万円という事例になればいいのですが。

アメリカでは、発明家で豪邸に住む人が大勢いますから、日本でもそうなって欲しいです。アメリカの発明家の中には、町1個分くらいの豪邸に住んでいる人もいるそうです。

特許法の職務発明制度の改正にノーベル賞中村修二教授が猛反対

特許法の職務発明規定が改正される方向で動いています。これは、従来は発明は発明者帰属なのを会社が譲り受ける形だったものを、改正して、最初から会社のものにする、という法改正です。

従来のように発明者に帰属させると、後から高額の職務発明訴訟を起こされるおそれがあるので、会社にとってリスク要因になる、というのが会社側の言い分で、それをそのまま法改正に反映させる、ということのようです。

これに対して、発明者側の従業員は特許庁や政治家に圧力をかけることもできませんから、せいぜい組合を通じて会社に文句を言う位でしょう。それも御用組合ではほとんど意味がありませんが。

しかしながら、今年のノーベル賞を受賞した中村修二教授が、この法改正に猛反対しているそうです。なぜなら、これ以上発明者をしいたげるような制度にしたら、日本からいい発明がでなくなるでしょうし、アメリカのように優秀な発明者がベンチャーを作れる風土がない日本では優秀な発明者が冷遇されることになる、ということなのかも知れません。

優秀な発明者は正しいことを正しい、と言う人も多く、例え上司であっても、間違っていることは間違っている、という人も多いです。すると上司はそうした発明者を煙たがり、自分のいうことは間違っていても何でも言うことを聞く茶坊主のような部下をかわいがるようになることも多いです。

そうした場合、優秀な研究者がすばらしい発明をしそうになれば、可愛がっている部下をそのチームに入れ、手柄をたてさせたり、成果を横取りさせたりする場合もありえます。

日本企業では優れた発明者であっても冷遇される場合があります。中村修二教授の場合が好例でしょう。世紀の大発明をしたのに、所長に祭り上げられ、ほとんど部下のいない閑職においやられたそうです。それは社長との関係が悪かったからだそうです。

こんな状況の場合、米国であればすぐに他社に引き抜かれ、また活躍の場が与えられます。しかし、終身雇用の日本では簡単には転職しにくい面もあります。最近は徐々に改善されては来ていますが。

そういう状況では、発明者を正当に評価させるには、職務発明訴訟しかないのかも知れません。それがなくなればどうなるか?

最近の若い研究者は、あまり自己主張せず、どうしてもこのテーマをやりたい、という気骨のある人は少ないそうです。そんな中で職務発明でも争えなくなるとすれば、必死になって大発明をしてやろう、という研究者はさらに減ってしまうのではないでしょうか?

ただ、ベンチャーが増えて、転職が容易になれば、こうした問題は少なくなるので、ベンチャーで成功者が出てきて、そういう人がエンジェルになってまた新規ベンチャーが成功する、というサイクルができてくればこうした問題は解決できるのかも知れません。

大学等の技術移転に専門知識は不要か?

先日の大学技術移転協議会(UNITT)で、京都大学iPS細胞研究所の知財室長の高須直子さんが、iPS細胞の論文をしっかり読んで、できるだけ深く理解することに勤めてきた、という話をしたら、モデレーターが、そこまでの知識がなくてもいいのではないか?というような質問を会場に投げかけていた。

技術移転関係者には、文系出身者も多く、完全な科学技術の理解がなくてもある程度は売れるという面はある。

しかし、iPS細胞のような最先端分野については、その分野の十分な理解なしでは、いい特許も取れないし、技術移転も最高レベルではうまく行かないのではなかろうか?私がアメリカのベンチャー企業にライセンスできたのも、サイエンスの知識が完全にあったからだと思っている。そのレベルの知識があれば、相手の研究者とも仲間意識が芽生える。

なので、技術移転に専門知識は必要ない、という議論はかなり暴論のような気がする。技術を理解する努力はやるべきだし、それを放棄する理由づけを求めるのは私は間違っていると思う。

特許出願する場合でもできる限り深く理解すべきだし、仕事の質にできる限り完璧なものを求めるのが仕事のやり方としては当たり前だろう。それを手を抜いてもいい、という考え方をしていてはそれほど大したことはできないと思われる。

その点がノーベル賞受賞者に最高レベルに評価され、iPS細胞ストックのプロジェクト・リーダーに推薦されるレベルの人間と、普通のレベルで終わる人間の違いではなかろうか?仕事は常に最高レベルを求めたいものだ。

大学教員の職務発明と学生の任意譲渡で出願する場合の潜在的なリスク

大学で教員と学生の両者が知恵を出して発明して、共同で特許出願する場合や、学生の持ち分を大学が承継して大学が単独で特許出願する場合があります。

例えば、教授がアイデアを出して、それを大学院生が実際に実験をして、予想外の大発明が出ることもあります。

その場合、研究テーマを与えたのは教授でも、研究生が先生が指示したことに疑問を持って、自分が考えて実験をやったところ、うまく行って発明が生じることもありえます。

例えば、白川先生の導電性プラスチックの発明も留学生が量を1ケタ間違えたことから発見したそうです。

このような場合は、大学院生は単純なテクニシャンとは言えず、発明に寄与しているので、特許を受ける権利を有していて、特許出願の出願人、発明者に入れるべき、とも考えられます。後者の単純ミスの場合は微妙ですが。

また、化学の実験はやってみなければわからないことが多く、ほとんどが予想通りに行かないと言っても過言ではありません。そのような場合に大学院生が自らテーマを考えて修士論文、博士論文を書くこともあります。こうなると、大学院生が主で教授はそれに助言する、という形になることもあります。この場合に発明が生じた場合は、院生の方が寄与度が大きくなるケースもありえます。

このように、大学発明の場合は大学院生や、博士研究員が実質的な発明者となることもありますが、研究室によっては、院生の持ち分が非常に低く抑えられてしまう場合もあります。

特許出願をする際に教授の下で研究している立場としては、修士や博士の学位をもらったり、あるいはアカデミックポストを紹介してもらう必要がありますから、特許出願の持ち分については文句は言いづらいです。しかし、学位等をえて卒業してからその発明で巨額の利益が得られた場合、恨みがあったりすると、争いになるおそれはありえます。

また大学院生に限らず、大学教員で助手の持ち分が不当に低かったような場合にも職務発明訴訟になるおそれがあります。これも他の大学に転出した後であれば、訴訟をすることも考えられます。

そういう意味では大学の特許出願の場合に、あまりに不当な持ち分割合で特許出願するのは訴訟リスクがゼロではない、という点に留意しておいた方がよいでしょう。

とはいえ、大学教授が持ち分を決めたら、それを知財部員が覆せることは稀で、通常は先生の決めた持ち分を信じるしかありません。それでも、学生の持ち分が1%とか博士課程の学生の持ち分が0という場合は貢献度を確認した方がよいかも知れません。

特許出願依頼書の書き方

特許出願を知財部に依頼する場合は、通常は会社にフォーマットがあり、必要事項を記載します。

私が見たことがある会社の特許出願依頼書は以下のような項目があったと記憶しています。

発明者氏名、住所、発明を会社に承継する旨の記載、発明者押印欄、発明の名称、発明の内容、先行技術調査実施の有無、先行調査で見つかった文献リスト記載欄、出願期限、学会発表予定、費用負担部署、関連契約の有無、共同研究先、委託研究先、添付書類、特記事項など

そして、一番上に、承認者の欄があり、発明部署の所属長、特許部長、事業部長等の承認者の押印欄がありました。

添付書類としては、特許出願明細書案、論文原稿、学会発表予定の資料または学会発表した資料、共同研究契約書の写しなどが挙げられます。

多くの会社では上記のような項目を含めると思われます。他に、発明のポイント(苦労した点、従来技術との違い、予想外の効果など)も記載するようにしておけば発明のポイントを理解しやすく、弁理士にも依頼しやすいでしょう。

特許出願明細書案を添付する場合は発明の内容は簡単に記載してもよいでしょう。明細書案を読めば発明の内容はわかりますから。

発明者が作成した明細書案を知財部員が修正し、ほとんど完全な明細書を作成してから特許(弁理士)事務所に依頼してする会社もあります。この場合は、特許事務所はチェックする役割となります。これにより、会社知財部と特許事務所の弁理士のダブル・チェックが可能になり、より完成度の高い明細書になり、わずかな漏れ、抜けにより、大損害を被るリスクを回避できると考えられます。

私がいた知財部では、機械系のようにペラ1枚で特許出願明細書を特許事務所に依頼したことは機械系の特許出願でも無く、知財部で明細書を修正してから弁理士に依頼していました。

しかし、ある特許事務所で仕事をしたときは、機械系の発明の場合は、ペラ1枚で特許出願明細書を作成する場合もありました。その場合は、ペラ1枚から20ページくらいの明細書を作成するので、弁理士の腕の見せ所とも言えます。

弁理士に依頼する場合に、どの程度完成した特許明細書案を添付するかどうかは発明内容や会社の方針にもよると思われます。1件の価値が非常に高く、1つの特許で数百億円、数千億円の売上げを守る必要がある場合は、知財部員が明細書案を徹底的に練り上げてから自社出願あるいは特許事務所に依頼します。

これは、弁理士の場合はヒアリングに1~数時間しかかけませんが、知財部員は何度も発明者とコミュニケーションし、明細書の修正も何度もやり取りをして、深く理解できるので、知財部員の方がはるかに深く技術を理解しているためです。

それでも、弁理士がその分野の専門家であれば、知財部員と同程度、場合によってはそれ以上に本質を理解できる場合もありますが。

いずれにしても書誌事項は最初にもれなく記載してもらうのは後々のことを考えるととてもいいと思う。