論文のねつ造問題と、アイデアだけの特許申請

論文のねつ造問題は、昔からありました。真理を探究する科学の世界ではあってはならないことですが、ねつ造をする人達がいつの世にもいるようです。

最近では小保方晴子氏のSTAP細胞事件が有名ですが、私が研究者をやっていた30年位前にもねつ造で有名な研究者がいました。これは、正直な羊の群れの中に詐欺師のオオカミが紛れ込むようなもので、善意が大前提の世界では、悪意を見破るのは難しいと思われます。

2000年代には、東大でも少なくとも2人ねつ造で大問題になっていました。2000年代前半で問題になった東大教授は20件以上の論文がねつ造だったようで、以後、アカデミックポストには就けなかったような話を聞いています。

さらに、最近では、東大医学部、分子細胞生物研究所の6研究室の26の論文がねつ造である疑いで学内で調査中です。研究費を取るためには、ギリギリのデータで論文を出したり、写真を修正したりする必要がある場合もあるのでしょうが、本質の部分でねつ造してないことを祈っています。

ねつ造した場合、研究室内部ではばれているもので、いずれ内部告発されると思われます。そして、内部告発によりねつ造であることが分かれば科学研究者としての道は断たれます。大学教授であれば、アカデミック・ポストに就くことは非常に難しくなり、人生が全く狂ってしまいます。

これに対して、特許出願の場合は、論文のように審査員の査読があるわけでもなく、形式さえ特許庁の形式に則っていれば、内容がどうであれ(ねつ造であっても)特許出願としては受理されます。

それどころか、企業が他社を欺くためにウソのデータで出願することもありえます。そういう意味では、特許出願ではねつ造は法的にはもちろん、倫理的にも営利企業の場合はあまり問題にならないと思われます(ただし、ねつ造データで権利化した場合には問題になり得ます)。

また、実際に試作もしてない、頭の中で考えたアイデアだけで特許申請をする一般人もかなり多いです。試作をしてなければ本当に動くかどうかわからないのですし、発明が完成しているとは言えない場合もあります。

例えば、死者復活製法という特許申請がありましたが、具体的な実施例は一切記載されていませんでした。これは、データをねつ造しているわけではないですが、現実に不可能な発明を出願しているわけで、法上の発明に該当しない(特許法第29条第1項柱書違反)か、または、実施可能要件違反で拒絶されることになるでしょう。

データがない場合は、ねつ造しているわけではないので、故意にウソのデータを書いて詐欺をしているよりはまだマシかも知れません。

ねつ造データで出願する場合、本当にできるかどうかはわからないけれど、理論的にはありうるから適当なねつ造データで特許出願や論文投稿をしておいて、誰かが本当にできたら、実は自分が先にできていた、と名乗り出る、ということも可能です。

ただし、全てがペーパーイグザンプルで、ほとんどが間違い(実施不可能)、というような場合は、1つか2つ正しい発明が含まれていても全部拒絶されるようですが。

未来を予測するには、未来を創るのが一番確実、とは言われます。また、思考は現実化する、とも言われます。そういう意味で、まずはデータを作り、それが実現する世界を創造すれば、ウソのデータも本当になるのかも知れません。最初の予想が正しければこのやり方も可能でしょう。

しかし、ウソの法則(間違った発明)を予言し、自らそのウソの法則を証明することは不可能ではないかと思います。科学の法則は、思考によりウソが本当に変わることはないでしょうから。

ですから、科学的発見、発明については、真摯にデータと向き合い、真実を探求する、という姿勢が求められます。有名になりたい、とか、お金を儲けたい、地位が欲しい、という動機で研究者になる人がねつ造に走るのではないかと思います。