外国からの特許出願の翻訳文の品質と誤訳訂正書

海外から特許出願を受任する場合、現地で日本語に訳して送付してくる場合もあります。

そういう場合、日本に留学したことがあり、かなり日本語をマスターしている人が翻訳するならまあいいのですが、あまり日本語がよくわかってない人が翻訳した翻訳文や時には機械翻訳かと思われるひどい日本語の翻訳文を送付してくる場合があります。

そういう場合、こちらですぐにわかる誤記等は修正する場合がありますが、どうしてもわからない誤記があったりします。

そういう誤記は、国際特許出願(PCT出願)の移行であれば、翻訳文の誤訳訂正ができますから、あとで救うことも可能です。

ところが、パリ条約の場合は翻訳文の誤訳訂正はできないので、パリ条約の優先権主張をして日本に特許出願してきた場合は翻訳文がいい加減だと後で使えない権利しか取得できなかったりする場合があります。

そういう意味では、日本語チェックのみでよい、と相手側が言ったにせよ、できるだけ原文に当たってみるのがよいように思っています。

海外から日本に移行してきた外国語の出願を特許事務所で日本語に翻訳して日本出願することもあります。この場合は事務所が訳を間違える場合もゼロではありません。

翻訳会社に外注して翻訳してもらってもいいのですが、翻訳会社は理系よりも文系出身の社員の方が多い場合もあり、必ずしも技術を理解して翻訳してくれるとは限らず、やはり誤訳する場合もあります。

それらの誤訳が請求項に影響を与えない誤訳であれば、問題ないのですが、請求項中に誤訳がある場合もあり得ます。

すると、審査官から、請求の範囲が不明確、という拒絶理由が来ることがあります。

その場合には、該当箇所を誤訳訂正して明確な請求の範囲にすればよいです。単語によっては多数の意味を持つ場合があり、間違った意味を選択して訳してしまうと、請求項の意味が分からなくなることが実際に起こりえます。

その場合には、正しい訳語に誤訳訂正することで、拒絶理由は解消できます。

拒絶理由が、誤訳に関する不明確な記載要件違反のみであることは少なく、むしろ、他の拒絶理由も一緒に通知されることの方が多いと思います。その際に、誤訳訂正だけでなく、請求項の補正もする場合があります。

そのような場合は、誤訳訂正書の中で補正を行います。誤訳訂正書と補正書を別々に提出すると、どっちが基準なのかわからなくなるからのようです。

そして、誤訳訂正書には、誤訳訂正の説明を下記、最後には、誤訳訂正の根拠となる辞書のコピーなどを貼り付けます。これは普通に辞書をPDF等でスキャンし、jpgファイルなどに変換したものを貼ればよいです。辞書の表紙と奥付も添付する方がよいです。

誤訳訂正は補正と異なり、有料(19000円)ですので、できるだけ、最初から誤訳をしないように、翻訳文をしっかりチェックされることをお勧めします。特に請求項は誤訳をしないように細心の注意を払うべきでしょう。

大平国際特許事務所でも、日本から外国(内外)への出願や、外国から日本(外内)への出願を承っております。お問い合わせはお気軽に下記からどうぞ。

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国内優先権主張を伴う特許出願

特許出願をしてから、1年以内であれば、国内優先権を主張して特許出願をすることができます。

この場合、先の出願の明細書に記載してある事項については、先の出願日を基準に新規性、進歩性が審査されます。

ですから、先の特許出願をした後に先の特許出願の明細書に記載した事項を学会等で発表しても新規性を失うことはありません。

ところが、厄介なことに、学会発表を根拠に進歩性が否定される場合もありえます。

国内優先権主張出願ではなく、パリ条約による優先権主張出願ではそういう例が実際にあります。

山中伸弥京都大学iPS細胞研究所長の特許出願が優先権が有効でない、という異議申立を受けています。これは、最初の特許出願日が2005年12月13日、パリ条約による優先権を主張して国際特許出願した日が2006年12月6日、高橋講師のiPS細胞に関する論文が掲載されたのが、2006年8月で、欧州特許の請求項の内容は、最初の出願に記載がないので、高橋講師のCellの論文を根拠に新規性、進歩性が否定される、というものです。

企業であれば、特許出願を完了していても、出願公開後でないと論文発表できない規定のところもあります。それは上のようなトラブルを避ける意味もあります。

しかし、大学等の場合はどうしても論文を出したり、学会発表をして研究費を獲得する必要があるので、急いで発表してしまいます。研究のプライオリティを主張するためにも早く発表する必要があります。

そういう意味では大学の特許はなかなか強くて広い特許にはなりにくいという問題を抱えていますがやむを得ないと思います。

大学特許の場合は、それ以前に、実用化のための開発段階まで進めない、網羅的スクリーニングによる化合物の最適化ができない、などの問題もありますから、大学特許でお金を稼ぐのはかなり難しい面があります。

優先権主張できる出願は、以下の要件を満たす必要があります(特許法第41条第1項)。

一  その特許出願が先の出願の日から一年以内にされたものでない場合(その特許出願を先の出願の日から一年以内にすることができなかつたことについて正当な理由がある場合であつて、かつ、その特許出願が経済産業省令で定める期間内にされたものである場合を除く。)
二  先の出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願若しくは第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願又は実用新案法第十一条第一項 において準用するこの法律第四十四条第一項の規定による実用新案登録出願の分割に係る新たな実用新案登録出願若しくは実用新案法第十条第一項 若しくは第二項 の規定による出願の変更に係る実用新案登録出願である場合
三  先の出願が、その特許出願の際に、放棄され、取り下げられ、又は却下されている場合
四  先の出願について、その特許出願の際に、査定又は審決が確定している場合

このうち、4の、査定、審決が確定している場合とは、登録査定がされた場合で、その場合には、優先権主張の基礎とできません。

登録査定が出た場合は、それから30日以内に分割出願はできるのですが、上の3の規定により、分割出願に優先権主張はできませんから、結局査定が出たら、優先権主張はできないことになります。

ただし、パリ条約による優先権については、査定が確定していても優先権主張ができますから、日本以外の国については、優先権主張して出願可能です。ただ、日本については、パリ条約ではなく、国内優先権主張の要件で判断されますから、日本では、特許査定の出た出願への優先権は認められません。

ですから、登録査定が出たら、その特許公報が発行される前に、国際出願(PCT出願)するのがよいと思います。

大平国際特許事務所は所長が大学知財部の特任教授だったこともあり、大学知財の実情を熟知しております。海外のベンチャー企業へライセンスした経験もございます。企業、個人の方はもちろん、大学知財についてもお気軽にご相談下さい。

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PCT出願から各国移行、または直接外国出願した場合の費用

先日初めてお会いしたお客様が、前に依頼した事務所はひどい、と怒っていました。どうしたんですか?と聞くと、最初の話では、各国80万位で行けますよ、と言われていたが、4~5か国に移行手続きして拒絶理由に応答していたら、その倍位かかったので、放棄した、とのことでした。

計算上、最初は400万程度の予定が、800万円以上かかって、まだ特許になってない、ということのようです。

弁理士であれば、多数の外国出願を見てますから、拒絶理由対応に1回20~30万円、ときには50万円かかることもあることは常識です。

しかし、一般のお客様からすると、最初400万で行ける、と言っていたのに、800万もかかって、しかもまだ特許になっていない、となると、不信感を持たれるようです。

私の経験上、1回の拒絶対応で一番高額だったのは150万位、146万だったかと思います。その際は、専門家証言(expert wittness)の宣誓書を複数提出し、何度もインタビューしたうえで応答書を提出しましたが、その1回の意見書、補正書を出すのに150万円の見積が来ました。

これは、特許事務所の会計システムが、1つのアクションが終わるまで請求しない、というようになっているために起こることで、中間段階で料金をこまめに見積もってもらえば、いきなり150万円の見積が来て驚くことはないでしょう。

このケースでは交渉して50万円程度まで負けてもらいましたが、それでも1回の応答で50万円は高いです。しかし、重要な案件であればそこまでしても権利化したい、というクライアント様の意向があれば、いくらお金がかかってもしっかり応答せざるを得ません。

また、最初から最悪のケース、例えば、拒絶理由対応には最大1回150万円かかります、などと言うと、おそらく多くのお客様が引いてしまって、そんなにかかるのならやめておこう、となることも考えられます。

そういう意味で、弁理士としても標準的なケースで1カ国80万円と言ったのだと思います。あるいは、各国移行費用だけで1カ国80万円、と言ったのかも知れません。定価的には翻訳文を作成し、移行手続きまですれば、大体70~80万円が相場でしょう。

翻訳料、現地代理人費用、日本代理人費用は、それぞれ、30~50万、30万、10~20万、といったところでしょうから。

そして、その後は拒絶理由が来るたびに、20~30万円かかります。

英語圏はまだいいですが、中国やタイとかで、一度日本語に訳してもらう必要がある場合があります。するとその翻訳費用だけで10~20万円かかったりします。

そして、中国の場合は拒絶理由の回数が多く、5回位来ることも普通です。すると、1回20万としても100万円かかることになります。それでも拒絶されることがあり、そうなると覆審請求をする必要があります。するとさらに費用が膨らみます。

そういう意味では外国に出願する場合は、500万円~1000万円程度かかる可能性がある、と覚悟して出願されるのがよいと思われます。

とはいえ、外国出願支援制度というものがあり、半額を補助してくれます。上限は300万ですから、欧州、米国に出願するだけなら十分でしょう。この補助金が通れば半額は地方自治体が補助してくれます。

それにより、ある程度の負担が減ります。

しかし、それよりももっと重要なのは、やはり、商品化し、販売することでしょう。売上さえ上がれば、特許製品は利益率が高いですから、その儲けの中から特許費用を出せばよいと思います。

つまり、外国出願する場合は、十分な資金を準備すべき、と思われます。

医薬品の特許戦略

医薬品は、特許制度が最も機能しているジャンルである、と言われます。

それは、数件から20件程度の特許で年間数千億円の売上をあげるブロックバスター医薬を保護できるからでしょう。

電気分野では、1つの製品に数千の特許が貼りついており、1つの特許で数千億円の売上を保護することはできませんが、医薬特許の場合は1つの特許で数千億円、数兆円、ときには、10兆円以上の売上を保護することができます。

例えば、高脂血症治療剤のリピトールは全世界での売上は一時1兆円を超えていましたから、10年間独占できたとすれば、10兆円、実際にはもっと長い期間保護できていたと思います。それが1つの特許で独占できるのですからすごい世界です。

とはいえ、医薬特許戦略も複雑で、疾患の種類や、薬が効くメカニズム等によって、特許戦略が変わってきます。

例えば、同じ受容体(レセプター)を標的にする医薬の場合は、用途特許が出やすいので、1つの製品を上梓後に、第二用途、第三用途発明について特許申請することも多いです。

逆にあまり、用途発明の出ないジャンルもあります。

例えば、抗ガン剤の場合は、別のガンに効くとかいうケースもありますが、それほど多くありません。抗がん剤の場合はむしろ、配合剤(合剤)の特許や、併用療法で保護する、という手もあると思われます。あるいは、用法・用量特許で保護する、というやり方もあるでしょう。さらにバイオマーカーとセットで販売する、ということも欧米では普通に行われています。

これは、バイオマーカーの試験に保険の点数が付く等により、保護する意味がありますが、日本では、あまりそういう例は無いようです(1件だけあるという話ですが)。

実際、バイオマーカーを調べ、特定の条件を満たす患者だけに投与するとなると、当然、その薬の売上は下がります。そういう意味で、製薬企業もわざわざバイオマーカーとセットにして医薬品を販売するモチベーションが湧かないのでしょう。

とはいえ、イマニチブ(グリーベック)が効かない場合のみ投与するというダサニチブという抗がん剤もありますが。

また、製剤特許については、多くの国に出願するという実務が行われているようです。それは、製剤については、多くの国で特許が成立しやすいからです。また、製剤がある意味製薬企業にとって収益の源泉、という意味もあるのでしょう。

国によっては用途発明が認められない国もあるので、そういう国に対して用途発明の出願をするのは無駄なコストになる可能性が高いです。とはいえ、そうした国も10年もすれば法改正により医薬第二用途発明が認められるようになる可能性もゼロではありませんから、それを期待して特許出願する、という特許戦略もあるでしょう。

そういう意味では、医薬用途発明が今は認められないけど、将来認められる可能性があると思う国については特許出願する手もあると思われます。

そうした意味で、現在の状況のみで判断するのではなく、知財戦略は将来の見通しも含めて総合的に判断する必要があるでしょう

いわゆる知財の先読みというやり方ですが、知財部員には知財の将来を先読みする能力が求められると思います。それは弁理士にも言えると思われます。

PCT出願

PCT出願(国際特許出願)が先ほど完了しました。

通常は、日程に余裕を持って、期限日の前日に出願完了させるのが望ましいのですが、今回は期限日の当日のしかも夜に出願完了しました。

試験勉強と似ていて、文章も最後の最後になって、あれも治したい、これも考慮すべきでは?というちょっとした改良を思いついたりします。

それを全部盛り込んで出願すればいいのですが、やはり、後から考えると、あれはああ書いておくべきだった、ということもあります。

あるいは、他人のPCT出願の拒絶理由に対応しているときに、ここを書いておいてくれたら、という場合があります。

以前種子の出願の拒絶理由対応をしたことがあったのですが、常温の定義とか、普通の(天然の)種子と人工種子の定義とかがあれば、拒絶理由対応が楽だったのに、ということがありました。

常温とか室温とかは、実験マニュアルでもよく使われていて、大体25℃付近、20~30℃くらいを指すのでしょうが、季節や地方によっても違う気がします。

北海道で室温、と言ったら4~20℃くらいでしょうし、アリゾナ州フェニックスで室温と言えば25~40℃くらいではないかと思います。

そうしたあいまいな部分があれば、それは明細書中で定義しておくのが望ましいです。それによって拒絶理由を解消できる場合があるからです。

とはいえ、ある事務所は定義をコピーペーストしまくってページ数を増やし高額の出願手数料を取っている、という面があったりします。必要のなさそうな定義までどこかからコピーしてきて貼りつけてページチャージを増やす、というのもどうかな、という気もします。

明細書をとことん広く書くためには属に対して種をしっかり網羅的に記載するのが有効な場合もあります。

しかし、本当に本質を捉えた出願であれば、そこまで細かく定義する必要もない場合もあります。例えば、成分AをX%以上含む組成物、というのが新規性、進歩性があったら、非常に強い特許になります。

そういう意味では発明をどう切るか、という発明の切り口、コンセプトは非常に重要です。そのあたりは十分クライアントと弁理士が話し合ってきっちり作り込む必要があります。

 

外国に特許出願する際のクレーム補正

日本から外国に特許出願する場合、その国の制度に合せたクレーム(請求項)に補正する必要がある場合があります。

例えば、医薬の用途発明の場合、日本は剤クレームの形で、「Xを有効成分とする、抗がん剤」のように書きます。欧州でも似たような感じですが、A compound X for use in treatment of disease Yという形で書く必要があります。

日本の表現をそのまま訳すと欧州特許庁から拒絶理由が来ます。例えば、An anti-cancer agent comprising X as an active ingredient.では物として新規性が無いという拒絶理由が来ます。

以前は欧州特許庁では、物質Xの医薬Y製造のための使用、というスイスタイプクレームのみが医薬用途発明として認められていましたが、今ではこの形式は欧州では認められません。不思議なことに中国はこのスイスタイプクレームのみが認められるようです。カナダではスイスタイプと今の医薬用途クレームの両方が認められます。これらも将来的には統一の方向に向かうとは思いますが。

アメリカの場合は、医療方法も特許が認められるので、「Xを用いて病気Yを治す方法」というようなクレームになります。アメリカでは日本のような剤クレームは認められません。

このように、国毎に認められるクレームが違う場合があるので、外国出願をする場合は、各国のクレームに対応できるように明細書を作成する必要があります。

他に、マルチのマルチディペンデントクレームが認められない国の場合は、従属関係を補正する必要があります。例えば、以下のような場合です。

クレーム3  ・・・である、請求項1または2に記載の●●
クレーム5  ・・・である請求項1~4のいずれかに記載の●●

この場合、2つの請求項に従属する3が、さらにクレーム5で複数の請求項として従属しています。このように複数の請求項に従属する請求項をさらに複数従属させたクレームがマルチのマルチディペンデントクレームになります。

この場合は、どちらかを1項のみに従属させる形に補正します。

マルチのマルチが認められる国も多く、インドやインドネシア等もマルチのマルチが認められます。そういう国ではマルチのマルチ解消のための補正は必要ありません。

それ以外にも、日本語としては意味が通じるけど、それをそのまま翻訳したら外国では不明確になる表現などもあり得ます。そういう場合は、明細書の本文の記載を元に意味が通じるように補正するか、不明確の拒絶理由が来てから補正することができます。

不明確であるという拒絶理由が来る場合は、補正の示唆がある場合もあるのでその国の審査官の言う通りに補正すればよいです。

ただ、極く稀に、審査官の補正の示唆と裁判所の判例とが異なる場合があり、そのような場合は現地代理人(弁護士または弁理士)の意見に従うのがよいと思います。

これらのクレーム補正は、優先権主張してPCT出願する場合には、その段階で明細書中に入れることもできますし、最初の出願から入れておくやり方もあります。

パリ条約による優先権を主張して外国に直接出願する場合は、その段階でその国に合うように補正したクレームで出願すればよいですが、優先権の基礎となる最初の出願にもそのようなクレームに補正できるように記載しておく方が確実でしょう。多くの場合は日本の通常の明細書の書き方で書いておけば補正可能ですが。

特許申請から登録までにかかる総費用

特許申請にかかる費用は、出願時の20~30万円だけ、と考えていませんか?

実は、その後もいろいろ費用がかかります。ですから、それを予想していないとどうしてこんなに何度もお金がかかるんだ?と思ってしまいます。

そこで、特許出願から登録までにかかる費用を解説してみました。

出願時  20~40万円

審査請求時 118000+4000×(請求項数)

拒絶理由応答時(意見書、補正書提出) 10~15万円(×拒絶理由の回数。2~3回が多い)

登録時 成功報酬10万円+(請求項数ー1)×1万円

これらを全部合計すると、60~100万円程度になります。ですので、特許出願すると大体60~100万円かかると考えておくとよいと思います。

外国出願する場合は、最近は特許協力条約(patent corporation treaty, PCT)に基づくPCT出願が多いです。もちろん、PCTに加盟していない国には直接パリ条約の優先権を主張して出願します。台湾等が該当します。他にクウェートのような国もその地域のグループに出願するのがよいです。

外国出願の場合はPCTでは、印紙代で28万円程度、弁理士事務所の費用がそれに上乗せされます。PCT出願した場合は、優先日から30か月以内に各国へ移行する必要があります。この際翻訳費用がかなりかかります。

それ以降は日本に似ていますが、米国では特許弁護士が担当するため、最低でも時給3万円です。少し拒絶理由の応答に頑張ってもらうと1回で50万円程度の請求が来ることもあります。

それとバカにならないのが欧州の出願維持年金です。これは出願を維持するためだけに毎年払うのですが、5年目とかだと毎月8万円の支払いになり、これもかなり負担になります。

外国で特許を取得する場合、大体100~200万円程度と考えられます。個人で外国に出願する場合は、上限1000万程度の予算が普通でしょうから、大体、5ヵ国以内程度、例えば、米国、欧州、中国、韓国あたりでしょうか。事業によってはオーストラリアやカナダ、東南アジアでは、タイ、マレーシア、インドネシア、など、インドやドバイあたりにも出願することもあり得ます。

大企業や医薬品ベンチャー、市場の大きいベンチャーなどですと、世界50カ国以上に出願することもあり、その場合は1億円程度のお金は準備しておいた方がよいでしょう。

いずれにして外国出願する場合は、その国に出願することがコスト的にペイするか?を総合的に判断して、コストよりもメリットが上回る、と判断できればその国で権利化すればよいと思われます。

多くの場合は、市場がある国、製造拠点とする国、特許が権利行使しやすい国、などが出願国決定の要因になります。要はコストパフォーマンスのよい特許申請にできるかどうか、と言ったところでしょう。

外国で特許を取得し、維持する場合の費用

海外に特許出願をして、登録料を存続期間満了まで維持するとすると、およそ、100~200万円程度かかると考えておくのがよいです。

最も安いと思われるのは韓国で、翻訳と出願で20万円位でできる事務所もあります。それから、拒絶理由に対応すると、5万円位、登録まで行って30万位で済む場合もありえます。

しかしながら、通常はそんなに安くはできず、例えば米国の場合は、英語への翻訳料が30~50万円(ページ数によっては100万を超える場合もありえます)で、米国移行手続きの米国特許庁費用が約$1500、海外代理人の費用、日本代理人費用で約100万円かかります。

その後、拒絶理由が来た場合は、1回15~20万円、ちょっと複雑なことをすると、1回で50万かかる場合もあります。米国は特許弁護士がやっているので、時給3万円以上が相場ですから。

そして、米国は、4年目、8年目、12年目で特許料を支払うのですが、これが結構高くて、登録時$2080、4年目$1600、8年目$3600、12年目$7400で、合計$14680、つまり、1ドル120円で換算すると、登録維持費用だけで176万1600円かかります。

これらを考え合わせると、米国ではフルに権利を維持すると、300万円位かかる計算になります。

また、中国等の場合は、安い事務所だと、翻訳と出願で40万強程度ででき、日本事務所の手数料も合わせても60万程度で出願できます。しかしながら、中国の場合、拒絶理由が何度も出るという特徴があります。

3回位は普通で、5回位出ることもあります。中国の場合は、中国語が分からない場合には日本語に翻訳してもらうので、その費用が発生します。すると、拒絶理由対応1回で中国代理人に20万円位支払うことがあります。

これに日本代理人手数料も追加されますし、5回拒絶理由が出ると、100万円を超えてしまいます。

欧州の場合は、移行費用も高額ですが、米国に出願している場合は英訳費用が不要ですので、数十万円で移行できます。しかしながら、欧州では維持年金というのがかかります。これが結構高くて、8万円とかになります。それが毎年かかるので、かなりな負担になります。

欧州統一特許で欧州全域で権利化することもできます。この場合はおそらく500万円以下で欧州全域(といっても加盟国のみ)で権利化できるので、31か国全部で権利化するよりはかなり安くなっています。以前は各国毎に翻訳文を提出するのに費用が莫大な費用がかかっていましたから。

いずれにせよ、外国出願して、権利を維持する場合には、200~300万円がかかる場合があります。もちろん、権利を維持するかどうかは、ビジネスの状況を見ながら判断すればいいわけで、費用対効果から言って、登録を維持する費用よりも、独占の利益の方が大きければ維持すればいいし、特許を維持するよりも利益が少ないのであれば、最後の12年目の登録料7400ドルを支払わなければいいだけです。

通常は利益が100万円もない、ということは考えにくいので、維持すると思いますが。

いずれにしても、海外出願(外国へのPCT出願の国内移行)は、費用対効果の観点から考える必要があります。マーケットがあり、権利行使が可能な国であれば、原則は出願するのがよいです。

英文特許の日本語への翻訳

海外からの出願を日本で権利化するために、英和翻訳するケースもあれば、逆に海外に出願するために、和英翻訳するケースもあります。後者はほとんどが外注して、最後に英語をチェックすることが多いですが、自分で翻訳して移行させて米国等で権利化できたものもあります。

英語から日本語に訳する場合、特殊な訳であればしっくりくるのですが、一般的な訳語だとちょっと変、という場合があります。

例えば、オンライン辞書で、9割位が同じ訳語で、1文例だけが、しっくりくる訳語だったりした場合です。

そのような場合は、英文明細書全体を読み、図面もよく理解したうえで、どの訳が最適か判断しています。つまり、その分野の内容を完全に理解すれば、適切な訳語が選択できる、というわけです。

しかしながら、必ずしも全ての英文和訳の場合にそこまで徹底できるかと言えば、納期が短い場合は、そこまでできないケースもあり得ます。

しかし、そうとしても、他の人のチェックを入れることでかなり改善されます。

そういう意味では、英文和訳も、和文英訳もどちらも最終提出までに全て異なる人が2回以上のチェックを行っています。

それくらいやっても、ときどき変な訳で提出してしまった出願も私以外の方がやったものではときどきあります。

英文和訳は、英語ができるだけではダメで、技術的な知識が必要です。また、英語の知識もワンパターンにあてはめるだけでは足りず、英語のニュアンスも深く理解している必要があります。

本当に英語を理解している人が、深い科学技術の知識に裏付けを持って英文和訳すれば、より優れた翻訳文が得られます。大平国際特許事務所はそのような訳を目指して常に改善をしています。

カナダでの第二医薬用途クレームの特許出願

カナダに特許出願(国内移行手続き)して、医薬用途クレームの特許を取得したい場合、いわゆるスイス型の医薬の製造のための使用、というクレームと、病気を治療するために使用する医薬、という現在の欧州の医薬クレームが可能です。が、もう1つのクレーム形式が許されます。

それは、Use of X to treat disease Y というクレームです。つまり、疾患Yを治療するための医薬Xの使用、というクレームです。

これは見方によっては治療方法のようにも見えますが、カナダでは許可される形式です。

もちろん、カナダでも医療方法の特許はnon-statutory subject matter(法律上の特許の主題ではない)として拒絶されます。しかしながら、上記のように実質的に治療方法ではないか?というようなクレーム形式が許されます。

各国毎にクレーム形式の考え方は様々のようです。

例えば、欧州では、医薬用途クレームが可能になり、スイスタイプのクレームが禁止されましたが、中国ではいまだにスイスタイプでないと医薬用途クレームは認められません。まぁ、これは過渡期、ということだろうと思います。

とはいえ、各国で微妙にクレームの形式が違うので、各国の実務に合せてクレームを微修正する必要があり、そのために、予め明細書にカナダ用や中国用のクレームも含ませておくとよいでしょう。

大平国際特許事務所でもそのような各国実務に対応できるよう、国際特許出願(PCT出願)の可能性がある場合には、米国用クレーム、欧州用クレーム、中国用クレーム、韓国用クレーム(食品)等を明細書の中に記載するようにしています。そうすることでスムーズに各国で最適な権利が取得できます。